wakabyの物見遊山

身近な観光、読書、進化学と硬軟とりまぜたブログ

馬場花木園5月の花

2021-05-29 12:18:35 | バイオフィリア(身近な生き物たち)

去年のこの時期にも行っている鶴見区の馬場花木園ですが、今回はとくに花を見て周りました(2021年5月22日)。

 

馬場花木園の近くにある馬場の赤門。

江戸時代後期にこのあたりの4ヶ村の総代名主(そうだいなぬし、村長みたいな人)だった人の屋敷の門だそうです。

 

では、馬場花木園に入ります。

 

管理棟の休憩室から、このように園内が眺められます。ツツジの季節です。

 

そして、アジサイも満開です。

 

これはキイチゴ。

 

下野草(シモツケソウ)。

 

キンシバイ。

 

ハスは6、7月の開花です。

 

池の周りでは、5月から6月にかけて、菖蒲(アヤメ)→杜若(カキツバタ)→花菖蒲(ハナショウブ)が順番に咲いていくそうです。その3種の区別は難しいのですが、写真の花は中央に黄色い部分があるので、ハナショウブ?かもしれません。

 

キノコが群生しているところがありました。

 

ウツボグサ。

 

カルミア。

 

みごとなツツジの木です。

 

こちらも鮮やかな赤のツツジ(これも区別が難しいのですが、きっとサツキではないと思っています)。

 

旧藤本家住宅。江戸時代末期の建築で、大正時代にここに移築され、2011年まで藤本家が住んでいたそうです。

 

屋敷の中には、このあたりの歴史や地図の展示がされています。これは江戸時代当時の地図。

 

江戸時代の地図に現代の地図を重ね合わせるとおもしろいです。入江川緑道の北側の支流は、もとは建功寺川という名前だったこともわかりました。このあたりも16号線地域に典型的な、小山と谷と川からできた、小流域地形になっているのがわかります。

 

旧藤本家住宅の前には、馬場花木園の池に流れ込むとっても小さな川が作られていて、自然を感じさせてくれます。そんな、地元の知られざる観光地でした。


哺乳類進化研究アップデート No.8ーコウモリの免疫

2021-05-22 21:54:41 | 哺乳類進化研究アップデート

前回まで3回にわたって哺乳類進化研究法についての日本の総説を紹介してきましたが、今回からまたトップジャーナルからの最新研究の紹介に戻ります。今回取り上げたのは2021年1月にNature誌に掲載された総説「Irving, A.T., Ahn, M., Goh, G. et al. Lessons from the host defences of bats, a unique viral reservoir(ユニークなウイルス貯蔵庫であるコウモリの生体防御から学ぶ). Nature 589, 363–370 (2021).」です。

もう1年以上にわたって全世界を混乱におとしいれている新型コロナウイルスの大流行の出所は、中国武漢の市場で売られていた哺乳類センザンコウではないかと言われていますが、センザンコウは中間宿主であって、もともとの起源はコウモリではないかと考えられています。しかし、コウモリが新型コロナウイルスに感染してバッタバッタと死んでいるという話は聞いたことがありません。コウモリは哺乳類の中で唯一空を飛び、超音波で空間を把握する能力を持ち、血を吸う種もいたりと、かなり特殊な進化をはたした生き物であることはよく知られているところです。そして近年、ウイルスに対してコウモリの身体はどう反応しているのか、免疫システムはどうなっているのかが注目を集めています。そのあたりの知見をまとめているのが、今回紹介する総説です。

 

概要

ヘンドラウイルス、ニパウイルス、マールブルグ熱、エボラウイルス病、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)といった感染症の流行は、コウモリ起源の人獣共通感染症であると考えられています。コウモリはこれらのウイルスを症状を示すことなく保有していること、体重に比べて寿命が長いこと、腫瘍形成率が低いことなど、独特な性質を6400万年の進化で身につけてきました。ウイルスに対して防御しながら、免疫寛容でもあるコウモリの免疫システムを解明することは、人間の健康の改善にとっても役立つだろうと考えられます。

 

コウモリの生物学的特性

コウモリ目の種類は1,423種と多いです。いくつかの種は冬眠、または毎日の一時的な休眠を行ってエネルギーを節約し、恒温性または変温性を示します。果汁、果物、花粉、昆虫、魚、血を含む幅広い食料を摂取します。超音波と磁気を検出します。飛行はエネルギー的にコストがかかり、飛行中のコウモリの代謝率は、同じサイズの運動する陸生哺乳類の代謝率の最大2.5〜3倍に達する可能性があります。この膨大なエネルギー需要により、1日で貯蔵エネルギーの最大50%が枯渇し、1日あたり約1,200カロリーのエネルギーを消費します。飛行中には心拍数が4〜5倍に増加し、1分あたり最大1,066拍になります。こうした高レベルの心臓ストレスを補うために、安静時に1時間に数回5〜7分間の周期性徐脈(不整脈)が誘発されるのだといいます。その高い代謝率と小さな身長にもかかわらず、コウモリは同様の体重の非飛行性哺乳類よりも実質的に長生きします。体の大きさを調整すると、哺乳類の19種だけが人間よりも長生きします。これらのうち、18種はコウモリで、1種はハダカデバネズミです。記録されているコウモリの最大寿命は、同様のサイズの非飛行性胎盤哺乳類の平均の3.5倍です。哺乳類の老化防止モデルとしても、コウモリは重要な手がかりを与えてくれる可能性があります。

 

生体防御免疫寛容のバランス

病原体や病気と戦うには適切なレベルの防御が必要ですが、過剰または調節不能な反応は細胞の損傷や組織の病理につながります。新型コロナウイルスやエボラウイルスを含む多くの新たなコウモリ由来ウイルスは、ヒトに対しては非常に病原性が高く、異常な自然免疫の活性化と長期またはより強い免疫反応につながります。対照的に、感染したコウモリはウイルス性疾患に対して寛容であることが示唆されており、高いウイルス量が組織または血清中に検出された場合でも、全くないかあっても最小限の徴候しか示しません。最近の研究で、コウモリが防御反応と病理学的反応のバランスを調整するために用いているメカニズムについての知見が得られてきました。これは、コウモリの非常に長い寿命と癌の発生率の低さにも寄与している可能性があります。

図2

上図.コウモリの強化された生体防御と免疫寛容のバランス。生体防御系として、IFN(インターフェロン)、ISG(インターフェロン刺激因子)、HSP(熱ショックタンパク質)、ABCB1(排出ポンプ)、Autophagy(オートファジー)の発現などが強化されています。一方、炎症に関わるインフラマソーム経路の、NLRP3、PYHIN、IL-1β、STINGといった因子は抑制されていて、免疫寛容に寄与しています。

 

強化された生体防御応答

細胞内でウイルス増殖を抑制することが知られるインターフェロンの発現のパターンは、ヒトとコウモリで違うようです。ヒトはⅠ型インターフェロン(IFN)を普段は最低レベルで発現していて、刺激を受けると高度に誘導されます。一方、ブラックフライングフォックス(Pteropus alecto)は普段から一定レベルのIFN-αを発現しています。Ⅰ型IFNの誘導は制限されているので、炎症性サイトカインの産生は最小限に抑えられます。また、強化されたオートファジーは、コウモリ細胞からのリッサウイルスの排除に重要な役割を果たし、免疫を調節していることが知られています。コウモリは同じサイズの飛ばない哺乳類と比べて、活性酸素の産生量が減っているとともに、重要な抗酸化物質であるSODは変わりない活性を保っています。最近の研究は、マウスで見られるような加齢に伴う活性酸素に対する防御の低下が、コウモリにはないことを示しています。

 

免疫寛容のメカニズム

パターン認識レセプターは、病原体分子の共通構造や障害を受けた細胞内分子を認識して、生体防護や炎症反応を引き起こします。STINGは細胞内のDNAを認識するパターン認識レセプターで、感染、炎症、がんにおいて重要な分子ですが、コウモリでは遺伝子変異が起きていて、これの活性が低下しています。これは、コウモリが飛ぶことによるDNA損傷に対してSTINGが過剰に反応しないように進化した結果ではないかと想像されています。他にも、病原体の侵入のセンサーである、NLRP3の発現の抑制、PYHIN遺伝子ファミリー全体の欠失も報告されています。

 

まとめ

このように、コウモリはウイルスの増殖を抑制する一定の生体防御機構を維持しながら、ウイルス感染によるインフラマソームの活性化を介した過剰な炎症誘導は抑えられているので、あまり症状が出ないということです。こうした炎症の過剰な活性化は、ヒトにおいては自己免疫疾患、自己炎症性疾患、感染症、およびいくつかの加齢性疾患(代謝性疾患や神経変性疾患など)につながっているので、これらを治療するための重要なヒントになるだろうとしています。

最後に私の感想として、この総説ではコウモリの興味深い自然免疫のユニークさがまとめられていますが、コウモリの獲得免疫(抗体やキラーT細胞による抗原特異的な免疫)のほうはどうなっているのか、あまり研究は進んでいないのかもしれませんが、知りたいところです。余談ですが、新型コロナウイルスを保有しているにもかかわらず症状が出ない人は、知らず知らずウイルスを広げているスーパースプレッダーとして恐れられていますが、そうした人たちはコウモリ型免疫の持ち主で、ウイルスに感染して症状が出る人(風邪によくかかる人はこちらかもしれません)は、いわゆるヒト型免疫の持ち主と呼んでみようかなと、個人的には思っています。


僕の読書ノート「Europeans ヨーロッパ人(Henri Carthier-Bresson アンリ・カルティエ‐ブレッソン)」

2021-05-15 11:13:07 | 書評(アート・音楽)

最近、ソール・ライターという写真家を知って、写真集も購入してその世界をたんのうした。写真のおもしろさが少しわかってくると、こんどは世界には他にどんなすてきな写真家がいるのだろうかと興味がわいてきて調べてみた。そうしたら、20世紀を代表する写真家にアンリ・カルチエ-ブレッソンという人がいることがわかり、いろいろと物色した結果、Europeans(ヨーロッパ人)という写真集を丸善の洋書コーナーで見つけて購入したのである。ハードカバーがBulfinch社から、ペーパーバックがThames & Hudson Ltd社から出ているが、どちらも232ページで、縦約27cmなので、表紙のデザインは違うが内容はほぼ同じだと思われる。私が購入したのはペーパーバックのほうであるが、紙は上質で写真は鮮明であった。

第二次世界大戦前後(1932~1975年)のヨーロッパ人を被写体としたモノクロの写真集であるが、明らかな戦争の風景は入っていない。シュルレアリズムに影響を受けているということで、写真の構図には、ある種意図的で遠近感のある空間が構成されている。そこに登場する人物はなんらかの世界のあるいは人生の生き生きとしたドラマを表現している。別のところで読んだことだが、ブレッソンは登場人物にわざとポーズを取らせたのではなく、ずっと辛抱強く待ち続けてシャッターチャンスを狙って撮っていたのだという。

撮影された国を掲載順に並べ、それぞれの国の写真から受けた印象を記してみた。フランス(ゴダール映画のようにおしゃれな風景と、自然と人生を楽しむ人々)、ポルトガル(豊かな田舎)、スペイン(シュール)、イタリア(カトリック)、スイス(自然)、ユーゴスラビア(田舎)、ギリシャ(前近代)、トルコ(異国)、ルーマニア(美人、牧歌的)、ハンガリー(北国)、オーストリア(高地)、ドイツ(戦争の痕跡、東西分裂)、ベルギー(とぼけた男)、オランダ(水の土地)、ポーランド(カトリック)、ソビエト連邦(逞しく生きる男女たち)、スウェーデン(海)、イギリス(群衆、紳士淑女)、アイルランド(カトリック、荒野)。

フランスの人たちは、戦前のけっして平和ではなかったであろう時代でも、川べりにタープを張って、ワインやパンを持ち込んでピクニックをしていて、その表情のはつらつさに生きることの豊かさを感じさせる。その時代、その場所の、匂いや人々の息吹を感じるような写真たちであった。


幻視するレンズ・MOMATコレクション(東京国立近代美術館)

2021-05-08 08:17:18 | 美術館・展覧会

あやしい絵展を見た後、東京国立近代美術館のコレクションによる小企画「幻視するレンズ」と、所蔵作品による「MOMATコレクション」も見てきました(2021年4月24日)。

 

2Fの幻視するレンズ展に入ります。パンフレットによると、人の眼とは異なる「機械の眼」であるカメラは、写真家の想像力と結びつくとき、むしろ眼の前の現実に、幻想的な世界への扉を開くことがある。この特集では、写真のそうした側面に注目したということです。

 

中山岩太。

 

深瀬昌久。二羽のカラスと流れ星、シャッターチャンス的によく撮れたものだと思います。

この写真展ではA4版くらいの写真が多く、もっと大きなプリントにしたほうがインパクトが出るのになと思いました。

 

次に入ったのが、所蔵作品による「MOMATコレクション」

アントニー・ゴームリー。

 

畠山直哉。

 

ソル・ルウィット。

 

奥田元宋。

 

船田玉樹。

 

東郷青児。

 

三岸好太郎。

 

アンリ・ルソー。

 

ポール・セザンヌ。

 

4Fには「眺めのよい部屋」というところがあり、たしかに景色がいいです。丸の内ビル群の2000年代の風景と、皇居の1600年代の風景のコントラストがすばらしいです。

おやっ、美術館前の道路では玉突き事故があったのでしょうか。このあたりは道路の流れも複雑だし、景色もいいしで、慣れてない人は不自然な運転をしてしまいそうです。


あやしい絵展(東京国立近代美術館)

2021-05-01 10:10:18 | 美術館・展覧会

あやしい絵展を見に東京国立近代美術館に行ってきました(2021年4月24日)。

24日でチケットを予約していたので、ギリギリセーフでした。東京都の緊急事態宣言のため、25日からは臨時休館になってしまいました。順調に行けば、5月12日から休館は解除される予定ですが、あやしい絵展の会期は5月16日までなので、会期延長にでもならないとほとんど見る余裕がなくなってしまいます。

 

天気もよかったので、大手町から美術館のある竹橋まで皇居内堀沿いを歩きました。

 

和気清麻呂像。8世紀の古代日本で、皇統断絶の危機を救った国士と言われています。

 

平川門。

 

国立近代美術館に着きました。

 

これから見る「あやしい絵展」の看板。

 

他にも、「幻視するレンズ」という小企画の写真展や所蔵作品展もやっていたので、次回ご紹介します。

 

次回は、隈研吾展が予定されていてこれも見てみたいです。

 

東京国立近代美術館工芸館は、国立工芸館として独立して3月19日に金沢で開館しました。金沢に遊びに行ったときの楽しみが一つ増えました。

 

では、予約した13時前になりましたので、中に入ります。

 

あやしい絵とは、ほぼ幽霊の絵ですね。エロ・グロ・ナンセンスの世界です。怪獣でも化け物でもなく、幽霊というか女の人の霊です。男の幽霊は絵にならないんでしょうね。

 

橘小夢《水魔》

こうした絵が日本においてたくさん制作されたのは、幕末から昭和初期にかけてであって、その時代はヨーロッパにおいてはシュルレアリズムによるあやしい絵が脚光をあびていた時であり、その時期の一致には不思議なつながりを感じます。私が昔好きだったトワイヤンというシュルレアリズムの画家の描く絵はほとんど幽霊でしたからね。

 

甲斐庄楠音《横櫛》

看板やチケットにもなっている絵。

 

こういう絵を見てるからネガティブ思考になるのよと妻に言われましたが、こうしたモノに惹かれてしまう私の中のダークな部分はけっして消えることはなく、これも人間の一面です。それも含めて受け入れながら、前向きに機能していくメタ認知を培っていきたいというのが今の私の考え方です。

さて、「あやしい絵展」公式図録も購入したので、いずれ書評としても紹介したいと思います。