wakabyの物見遊山

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2024お盆の帰省①ー実家のネコ問題その後

2024-08-17 08:16:14 | 猫・犬

この夏もお盆に茨城の実家に帰省しました(2024年8月11日~8月13日)。その時のことを振り返ります。まずは懸案のネコ問題ですね、ネコ屋敷化問題はその後どうなっているか、についてです。

前回、2024年GWに帰省した時は、家に住みついているネコが3匹(もう1匹は失踪)、外に住んでいるけれどエサだけ食べに家に入ってくるネコが1匹という状況でした。

 

それぞれの個体に番号を付けて、今回撮った写真と現在の状況を整理してみます。

No.1(シロ、凶暴ネコ)⇒現状維持。危険なので、私が来たときはケージに入れてもらっている。

 

No.2(クロ(黒くないけれど)、写真なし)⇒5月に失踪後、3週間後に一時的に戻ったのだが、その後2ヵ月にわたって行方不明の状態。

 

No.3(アビシニアン似、茶トラネコ、写真なし)⇒現状維持だが、私に対する警戒心は極めて高く、すぐ隠れてしまう(5月に爪を切ろうとしたのがトラウマになっているかもしれない)。

 

No.4(シャム似ネコ)⇒人懐っこさは変わらず。よくしゃべり、しつこいぐらいで、私に乗っかってきて顎を嚙もうとするので、時々うっとうしくなる。瞳が水色できれいで、とても好奇心の強い子。

 

No.5(白黒ネコ、No.4の母ネコ、5月には子育て中でエサをもらいに家に入ってきていた)⇒今でも家に出入りしてエサをもらっているが、私を見ると怖がってすぐ出ていく。

 

No.6(茶トラネコ、No.3の母ネコ)⇒今回、初めて見たネコ。以前から家に出入りするようになり、8/9に家で出産、2匹ほど新生仔が死んだらしいが、生き残った5匹の子育て中

新生仔たち。写真では3匹が見えるが、実際は5匹いる。父によれば、子どもが乳離れしたら、外に出すと言うので(人にあげたりはしないらしい)、とりあえずナンバリングはしていない。No.4が近づいてきて、子ネコを嚙もうとするので即座に引き離した。オスが自分の子でない子どもを子殺しする性質(「ダーウィンが来た」などで放映されたりするライオンなどネコ科動物の習性。進化していないヒトでも見られ事件となる)がここでも観察された可能性がある。

ということで、家に居るネコは大人が4~5匹、赤ちゃんが5匹となっています。

 

さらに、家の庭には、No.5が以前産んだ子達4匹ほど(みな白黒ネコ)や、

No.6が以前に産んだ子達2匹ほど(No.3の兄弟?、みな茶トラネコ)が、エサをもらうために待機している、というかなかば家の庭を住みかにしています。(ネコのサファリパーク状態)

この先実家がどうなるか心配は無くなりませんが、動物行動学者の故日高敏隆先生のネコ屋敷生活を引用して、少し気休めにしたいと思います。

「主人は猫でも、「気だてのよい猫」「美猫」が好きで・・・・猫は多い時で20匹以上いた時もあって、主人になついた猫は主人のふとんの上で4匹も5匹も子供を産んだりしていましたが、おいやらず、そのまま親子ともそっとしてやってました。自分はその横で細くなって寝てました」(日高喜久子(奥様)、「作家の猫2」より)


2024GWの帰省①ー実家のネコ問題つづき

2024-05-11 08:01:28 | 猫・犬

2024年GWに茨城の実家に帰省(2024年4月28日~5月1日)した時のことを振り返ります。2023年GWくらいから表面化してきたネコ問題、つまりネコ屋敷化問題の今の状況についてです。

前回、2024年正月に帰省した時は、家に住みついているネコが4匹、家の中に入ろうとねらっているネコが約5匹となっていて、ネコ屋敷化が着実に進んでいました。そして現在、状況は少し変化していて、家に住みついているネコが3匹(もう1匹は失踪)、外に住んでいるけれどエサだけ食べに家に入ってくるネコ1匹、家の中に入ろうとねらっているネコが約2匹となっていました。

 

No.1のシロこと、凶暴ネコ。そういえば、白いネコは臆病で、黒いネコは人懐っこいという話を聞きます。白い体色は敵に目立つ一方、黒い体色は敵に見つかりにくいからそういう性格になったとも言われていますが、どうなのでしょうか。真っ黒なネコってまだ飼ったことがないので、とても興味があります。

 

No.2のクロ(黒くないですが)は、失踪中。この子は外に出ると、2、3日たって帰ってくるということが日常的だったのですが、今回5、6日たっても帰ってきていません。どこかの家に上がり込んでいるのかもしれませんし、交通事故で亡くなったかもしれません。オスネコは家出することが多いのです。そもそも、家飼いのネコを外に出すと感染症にかかってくるなどリスクがあるので、止めたほうがいいよと家族に言っていたのですが、さすがに今回のことで懲りたようで、他のネコも外に出さないようになりました。

 

No.3のアビシニアン似ネコは元気だけれど臆病な性格。若年のオス、未去勢。

 

No.4のシャム似ネコは、人懐っこいです。同じく、若年のオス、未去勢。

テレビに鳥などが映るとそばまで見にいきます。

天真爛漫な子。

 

そして、外に住んでいるけれどエサだけ食べに家に入ってくるネコがこの子。No.5ネコとしておきましょう。乳が張っているので子育て中のメスだとわかりました。授乳しているためお腹がすくらしく、1日4回くらいエサをもらいに家にやってきます。家ネコでもない、野良ネコでもない、いわゆる地域ネコといえばいいのでしょうか。

エサを食べ終わると、すかさず外に出ていきます。この子はいつもカメラ目線なのです。

この窓が出入口。外に出て、子育てしている巣に帰っていくのでしょう。子ネコたちが外歩きできるようになったら、母ネコが子ネコを家に連れてきてしまうのではないかと気になります。

 

で、ややこしいのが、この子育て中のNo.5ネコが以前産んだ子ネコの一匹が、No.4のシャム似ネコであるということ。No.4はもう若者なのですが、この母ネコが来ると、おっぱいをもらっています。母ネコもとくにいやがりません。まだ母子関係が続いているのです。

 

こちらは、家の中に入ろうとねらっているネコのうちの1匹。今年の正月はこのようなネコが5匹くらいいましたが、少し状況が変わっていました。

そんな感じで、ネコ問題は流動的であり、一見、ヒトとネコの楽園のように見えるところもありますが、ちょっと先行き心配な状態でもあります。


看取り犬「文福」はもう看取らなくなったのか?

2024-04-20 07:14:24 | 猫・犬

以前このブログで、ある老人ホームで飼われている「文福」というイヌが看取りをするというネット記事と、それについて詳しく書かれた本を紹介しました。イヌという動物の持つ強い共感力、死を理解している可能性、看取り行動という特殊な能力、そして単純にその存在の愛らしさから、文福の行動に注目してきました。その文福の最近の様子がネットで紹介されていたので、紹介します。それによると最近の文福は看取りをしなくなったようだというのです。

引用元:「殺処分寸前から幸せをつかんだ奇跡の看取り犬「文福」・・・もう看取り活動をすることはないのか?(ヨミドクター/2024年4月1日)

 


 

【引用初め~】

 ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で暮らす 看取みとり犬の「 文福ぶんぷく 」は、2012年4月、ホームの開設と同時にやってきました。まだ人間の入居者は誰もおらず、文福が“入居者第1号”でした。

 それから12年が過ぎました。文福は、自分と同じユニット(区画)で暮らす入居者の逝去が近づくと、その方に寄り添って最期を“看取る”という行動を取るので、看取り犬と呼ぶようになりました。“看取った”入居者は20人以上になります。「さくらの里山科」で、文福は、とってもすばらしい、そして、とっても尊い活動をしてきたのです。それはその生い立ちを考えると、奇跡のように思えます。

 2011年秋、文福は、捨てられるなどの様々な理由で引き取られた保護犬として、保健所(動物愛護センター)にいました。その時は、朝になると、犬たちは、収容されている部屋の壁が自動的に動き、隣の部屋へと追い込まれます。そうやって、1日ごとに、隣の部屋へ、隣の部屋へと移動させられ、最後の部屋が殺処分する部屋なのです。文福はその「処分部屋」の手前の部屋にいました。壁1枚隔てた隣から、死にゆく犬たちの悲鳴を聞いていたのです。

 幸運なことに、文福は殺処分される寸前で、動物愛護団体「ちばわん」に引き取られました。しかし、そんな幸運に出会うことのない犬は現在でも多数います。環境省のデータによると、2022年度の1年間で、犬の殺処分数は2434匹でした。なお、猫の殺処分数は9472匹です。1990年代には数十万匹が殺処分されていたことを考えると大きく減りましたが、人間から不要と見なされ、まだまだ多くの命が失われています。

 文福も13年前、まさに人間から必要のない犬と見なされ、命を奪われる寸前にいたのです。それを考えると、文福のこの12年間の日々はとても感慨深く感じます。そして、文福に心から感謝したいという気持ちが湧き出ます。

 文福は保護犬ですので正確な年齢はわかりませんが、ホームに来た当時の推定年齢は2~3歳でした。それから12年がたちましたから、現在は、推定14~15歳となります。中型犬の平均寿命を超えており、高齢犬になります。犬の年齢を人間の年齢に換算する方法はいろいろあるのですが、文福は人間だとおおよそ83歳になります。オスですので、日本人男性の平均寿命81.05歳と比べると、上になりますから、83歳はおおむね妥当かもしれません。

 そんな高齢犬になった文福ですが、まだまだ元気です。散歩の準備を始めると、大喜びで1メートルぐらいの大ジャンプを繰り返します。散歩に行けば、たったか軽快に歩きます。ホームのドッグランで放せば、すばらしいスピードで疾走します。盛大に土をまき散らしながら大穴を掘ったりもします。ご飯は、ものすごい勢いで一瞬で平らげてしまいます。

 それでも、やはり寄る年波には勝てません。つややかだった茶色の毛は、だいぶ白っぽくなり、色あせてきました。寝ている時間も大幅に増えました。つい1年ほど前までは、私にタックルするようにじゃれついてきて、プロレスごっこのようになったものですが、最近はすっかり鳴りを潜めてしまいました。胸をなでると身を委ねてきて、目を細めて気持ちよさそうにしています。その穏やかさがうれしくもあり、寂しくもあります。

 文福の看取り活動も、もしかしたら、だんだんとできなくなってきているのかもしれません。実は、3か月前、文福と同じ部屋で暮らしているパートナーさんである入居者の方が逝去された時、いつもの看取り活動をしなかったのです。

 文福の看取り活動は、通常、三つの段階を踏みます。まず入居者が逝去される1~3日前に、その方の居室の扉の前に座ってうなだれます。次の段階では、部屋に入り、ベッドの脇に座って控え、入居者のことを見つめます。最後に、ベッドに上がって寄り添って看取るのです。

 ところが、今回していたのは、ベッドに上がって寄り添うことだけでした。看取り活動以外の普通の時、文福はいろいろな入居者のベッドに上がりこんで、一緒に寝たりしていますが、それと別段区別がつかないような状態だったのです。

 同じ部屋で寝起きしているパートナーさんなので、他の入居者の看取りの時とは行動が違っていたのかもしれません。しかし、もしかすると、パートナーさんが逝去するのを文福が予測できなかったのかもしれません。

 私たちは、文福が入居者の逝去を予測するのは、においによるものだと推測しています。この推測が正しければ、文福は高齢のため、あまり鼻が利かなくなり、予測できなかったのかもしれません。あるいは、これからはもう、文福が看取り活動をすることはないかもしれません。

 もちろん、それは全然構いません。私たちは看取り活動に感動させられてきましたが、文福の価値は看取り活動にあるわけではありません。文福はこの12年間に20人以上の入居者を“看取って”きましたが、その何倍もの入居者を癒やしてきました。入居者も職員も文福の存在によって、どれほど慰められ、力づけられてきたか。

 いいえ、この言い方も正しくはありませんね。私たちは、文福が何かの役に立つことを期待しているのではありません。文福はそこにいてくれるだけでいいのです。犬や猫を飼っている人は皆同じでしょう。願わくは、文福の最期の時がまだ先でありますように。その時まで、穏やかに幸せに暮らせるよう、しっかりと守っていきたいと思います。と言いながらも、守られているのは私たちかもしれませんが……。

(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)

【~引用終わり】


 

高齢になった文福は、看取り行動をしなくなったかもしれないという報告でした。その理由として、高齢で嗅覚が衰えたため、入居者が亡くなる前の匂いが分からなくなったのでは、と推測されていました。もしそうだとすると、文福の看取り行動は、やはり人間の死というものを先取りして、わかって自覚的に慰めるということを行っていた可能性が高くなりますね。

人間には知的障害を持ちながら非常に人懐っこい性格になるウィリアムズ症候群という遺伝病があります。イヌはオオカミからの進化の過程で、そのウィリアムズ症候群と同じ遺伝子変異を獲得したと言われています。イヌは知的障害にはまったく見えませんが。文福の遺伝子はどうなっているのでしょうか。ウィリアムズ症候群に関わる遺伝子の変異はさらに大きくなっているのか。


2024正月の帰省②ー実家のネコ問題その後

2024-02-10 07:31:49 | 猫・犬

2024年正月に茨城の実家に帰省(2024年1月3~5日)した時のことを振り返っています。2023年GWに表面化してきたネコ問題、つまりネコ屋敷化問題を取り上げます。

前回帰省した2023年GW時点では、外からやってきて家に住みついたネコが2匹となり、第3のネコが家の中に入ろうとねらっている状況となっていました。そして結論から言いますと、今回2024年正月に帰省した時の状況は、家に住みついているネコが4匹、家の中に入ろうとねらっているネコが約5匹となっており、ネコ屋敷化は着実に進んでいました。エサ代、去勢や病気になったときに動物病院でかかる医療費など、それなりの出費がかかっているはずです。では、ネコたちを紹介していきます。

 

ひっくり返って挑発してくる凶暴ネコのシロ。1番の古株。

 

そして2番目にやって来たクロ。

ちょっと臆病で平和主義なネコで、私のところにも甘えに来てくれました。

 

この子は、2023年5月時点で家の中に入りたがっていたけれど入れてもらえなかった、とても人懐こいネコ。しかし、この後体調を崩したため、父が見かねて動物病院に連れて行ったらウイルス性白血病と判明、しばらくして死んでしまったそうです。可哀そうなので役所に頼んで葬儀をあげたとのこと。

 

で、今回新たに加わっていたネコがこの2匹。2匹とも生後半年に達していないくらいの若齢ネコです。捨てられていたのを保護したらしいです。

 

この茶色い子は、アビシニアンに少し似ています。

水道の蛇口から水を飲むのが得意です。

 

もう1匹は少しシャムに似た毛色をしています。テレビを見てますね。

好奇心旺盛で、私が寝ようとしていたらあいさつに来てくれました。しかし、しょっちゅうくしゃみをして鼻水をまき散らしていたので困りました。単なる風邪ならいいのですが。

というわけで、可愛い3匹+1匹でした。身近なイヌやネコの存在は高齢者や病者にとって単なる癒しを超えて、生きる喜びや力さえ与えてくれることが知られています。実家のネコがそういう存在でいてくれればいいなと思います。しかし、あまりに匹数が増えると、3人家族を1人でお世話する父の負担が増すので、ここで踏みとどまって、これ以上ネコを家に入れないでもらいたいものです。

 

外には、家に入れてもらえるチャンスを狙っているネコたちが約5匹いるわけです。家にいるネコの兄弟か親子なのか、見た目がかなり似たネコもいます。

 

さて、昔私が飼っていて、最後に実家に引き取ってもらったネコのシルバーのお墓参りもしました。お骨は分骨して半分は私が自宅で保管しているのですが。ここには約60匹のイヌ・ネコちゃんたちが合祀されていますが、ちょっと手入れが届いていないかんじです。

おそらく逆光のせいだとは思いますが、「虹の橋」が写り込んでいる?

このペットの葬儀屋さんはしばらく営業をやめてしまっているような雰囲気です。こちらにも「虹の橋」みたいな光線が...


イヌは死期の近づいた人に慰めを与えるのか?

2024-01-13 08:00:57 | 猫・犬

以前このブログで、ネコが自らの死期飼主の死期を悟って、飼主に感謝の気持ちを伝えるような行動を取るようだということを紹介しました。最近、イヌも死期の近い人に対して慰めを与えるような行動を取るということをネットで見たので紹介したいと思います。

 

それは、ある老人ホームで飼われている「文福」くんというイヌ(下写真)の話です。Yahoo!ニュース「“看取り犬” として話題の文福くん、なぜ人の死期を悟り20人以上を看取ってこれたのか? 養護施設長に聞く(配信)」から引用させて頂きます

 

 

【引用初め~】

 犬好きであれば、神奈川県横須賀市の特別養護老人ホーム「さくらの里山科」の文福くんについて聞いたことがある人もいるだろう。入居者の死期を悟り、最期まで寄り添う“看取り犬”として多くのメディアに紹介されてきた文福くん。しかも共に暮らした20名以上の入居者すべてを看取ってきたというから偶然とは考えられない。今年9月に刊行された『犬が看取り、猫がおくるしあわせのホーム』(光文社)で話題となっている文福くんのエピソードから、高齢者とペットの関係を考えたい。

■“看取り”に気付いたのは施設に入って2年後のこと、最期まで寄り添う明確な意思がそこに
 入居者10名と犬4匹が暮らすユニットに足を踏み入れると、伏せをしていた文福くんがキッとこちらを見据えてきた。「入居者さんは僕が守るんだ」とでも言っているのだろうか。「大丈夫だよ」と目線を合わせて挨拶をすると満面の笑みで尻尾を振ってくれた。陽気で天真爛漫な文福くんを、「私の恩人です」と施設長の若山三千彦さんは愛おしげに見つめる。

 雑種犬の文福くんは推定14~5歳。犬としては高齢だが、いつも元気いっぱいだ。そんな文福くんが、ときに悲しげな表情をすることに気づいたのは「さくらの里山科」にやってきてから2年近く経った頃のことだった。

「ある入居者さんの部屋の前でうなだれていました。職員が『文福、入る?』と声をかけるとついてきて、ベッドの脇に座り込んだんです。それからトイレやご飯以外は片時も動かなくなり、入居者さんの顔が苦しそうに歪んだときにはベッドに上がって優しく顔や手を舐めることもありました」

 それから3日後、その入居者は天に召された。単に死期を悟るだけでなく、最期まで寄り添う明確な意思がそこにはあったという。

「実はこの文福の行動は初めてではなく、半年前にも同じことがあったのをスタッフが思い出したんです。その後も、またその後も。これまで文福が看取った入居者さんは20名を超えています」

■文福くんが持つ“共感性の高さ”が入居者やスタッフの“救い”に
 「さくらの里山科」の定員は100名で、年間30名が亡くなる。これは特別養護老人ホームでは平均的な数字だ。犬と猫が暮らすユニットは各2つあり、各10名が入居する。1つのユニットで亡くなるのは年間3名前後。高齢者福祉の現場で働くスタッフたちにとって死は常にそばにあるものだ。

 「福祉の世界には『最低限の生活を保障する』という価値観が今なおあります。しかし私はそれは違うと思うんです」

 その人らしい最期を迎えさせてあげたい。そうした「さくらの里山科」のターミナルケア指針にも、文福くんは大いに活躍している。

「若い頃に過ごした漁港に行きたいと、うわ言のように言い続けていた元漁師の入居者さんがいたんです。すでに余命1週間の宣告を受けており、医学的には外出なんてとんでもない状態でした。しかし文福の看取り行動はまだ始まっていなかった。私たちは文福を信じようと思いました」

 体調が安定していた日、介護スタッフと家族に付き添われて漁港に着いたその入居者は涙を流して喜んだ。文福くんが看取り行動を始めたのは、帰ってきてから4日後のことだったという。

 人間の死期を悟り、寄り添う犬や猫のエピソードは決して少なくない。ちなみに「さくらの里山科」でかつて暮らしていた猫のトラくんも、文福くんと同様に看取り行動をしていたという。

「『匂いでわかるのでは』と言う獣医さんは多いですね。特養で亡くなる方は基本的には老衰。食べ物や水分を受け付けなくなり、時間をかけて息を引き取っていく方がほとんどです。犬や猫は嗅覚が鋭敏ですから、おそらくみんなそうした枯れていく匂いを感じ取っているのではないでしょうか」

 とは言え、「なぜ寄り添うのか?」は不思議なところ。

「文福については共感性が高いと思います。弱っている人を放っておけないんでしょう。仕事で失敗して落ち込んでいたら、文福が寄り添ってきたという体験をしているスタッフは何人もいます」

 また、ナースコールがわからない認知症の高齢者が助けを求めているのを見て、職員を呼びに来ることもよくある風景なのだという。

「文福は本当に人をよく見ています。こんなこともありました。別の認知症の高齢者のご家族が面会でいらした時のこと。それまでニコニコとお話されてたのに、ご家族が帰ろうとしたら、『私を捨てるのか!』と泣き出したんです。ご家族がオロオロしていると、文福がそこに駆け寄っていって、入居者の方に抱きついた。そうしたら、ご機嫌になって、ご家族も安心してそのまま帰ることができたなんてこともありました」

■「私たちの介護ではなく、犬の存在が生きる力となったことは間違いない」
 2012年4月、「さくらの里山科」のオープン間もなくやってきた文福くんは元保護犬だ。保健所で殺処分になる寸前に動物保護団体「ちばわん」に保護され、開設準備をしていた若山さんに引き取られた。

 教員だった若山さんが高齢者介護の世界に入ったのは、それ以前の1999年のこと。在宅介護施設を運営していたときのある出会いをきっかけに、「犬や猫と同伴入居できる日本初の特別養護老人ホーム」の開設を決意する。

「デイサービスで10年近く関わった高齢の方がいました。身寄りはなく、唯一の家族は愛犬のレオくん。その方もやがて自立できなくなりましたが、犬と一緒に入れる施設はない。しかし高齢犬を引き取ってくれる人も見つからず、知人に保健所に連れていってもらうよう頼んだ。それ以外に選択肢がなかったんです。その方はずっと『俺は家族を殺したんだ』と自分を責め続けていました。生きる気力を失い、半年後に亡くなってしまったんです」

 動物愛護法では「終生飼育の努力義務」がうたわれている。しかしいくら努力をしても、人間は病気にもなれば事故に遭うこともある。それは若い人にも言えることだが、高齢者がペットを飼うことへの批判の声は多い。

「『ペットは贅沢品』『犬や猫がいなくても死にはしない』という人もいます。しかしそれは違うと、私は自分の経験からはっきり言えます。末期がんのため余命3ヵ月を宣告された方が、愛犬とともにさくらの里山科に入居し、10ヵ月もの間、元気だった例もあります。私たちの介護ではなく、愛犬の存在が生きる力となったことは間違いありません」

 人間と同様にペットも高齢化している。犬と猫と人間が共に老いてゆき、どちらかが先立っても最期まで安らかに過ごせる場と仲間があってほしい。そんな理想を追い求めて若山さんが開設したのが「さくらの里山科」だ。

「文福がいなかったら、犬や猫と一緒に暮らすっていう私たちの試みが、 12年間続けてこれたかどうかって思いますね。 

 看取りという活動よりも、やっぱり文福がみんなに寄り添い、みんなが文福と一緒にいることを喜んでくれる。そういう存在がいたからこそ、私たち、自分たちのやってることには意義があるんだと、実感することができました。 

 もちろん、他にもいろんなワンちゃん、猫ちゃんたちが、そのことを私たちに感じさせてくれますが、その代表が文福ですね」

 「さくらの里山科」の犬猫ユニットには、長い人生を犬や猫と過ごしてきた高齢者ばかり。認知症を患い、文福くんを「ポチや」とかつての愛犬の名前で呼ぶ入居者もいる。それでも文福くんは誰にでも等しく、優しく明るく笑顔を振りまいている。
(取材・文/児玉澄子)

【~引用終わり】


 

イヌはネコと比べて社会性が高く、主人に対して従順であることはよく知られていますが、ここまでのことをするとは驚きです。ある人に死期が近づいていることがわかるということも、死期が近づいている人に対して慰めるような行動をとるということも驚異的です。

全てのイヌがこのような行動を取るわけではないかもしれません。文福くんという一匹のイヌの行動としてニュースになっていますが、ある程度普遍的にイヌに備わった能力のような気もします。ネコだってやるんですから。どちらも食肉類の仲間ですね。感情的共感性、あるいはシンパシーといった仲間をいたわり助ける能力は、ヒトや類人猿だけでなく、一般的にはもっと下等と見られているイヌ・ネコにもきっとあるのだと思います。それは、言葉も必要ないのです。