今日発表された「キネマ旬報」2005年日本映画ベスト・テンで、第9位に入った映画「空中庭園」。
よかった。
監督が豊田利晃。松田龍平が主演の、松本大洋(あの『ピンポン』書いた人ね)の漫画「青い春」を映画化した監督だ。
「青い春」も、高校生の青春模様を描いた作品だったけれど、まるで、鋭利な刃物を背中につき付けられたような、ひんやりとしていて、しかも乾いた質感の漂う映画だった。
そして今作が、角田光代の小説を映画化した「空中庭園」である。
主演が小泉今日子、キョンキョン。共演が、お笑いの板尾創路、そして歌手のソニン、それから鈴木杏。
東京の郊外の高層分譲住宅に暮らす、4人家族を描いている。
板尾がサラリーマン、その妻がキョンキョン、そして長男。長女は鈴木杏という設定だ。
映画の中で、カメラを右や左、それからぐるっと回転させるシーンが何度か挿入される。家族が出勤・登校するバスの中や、4人が暮らす高層分譲住宅を俯瞰する際にもだ。
まるで、この家族を、不安定で絶えず漂泊していると捉えているかのように。
この家族は、絶対に秘密を持たないということを互いに宣言している。
例えば長女は、こんな事を一家団欒の食事の席で言ったりする。
「私が仕込まれた(つまり、父と母がそういう行為をして、わたしが生まれるキッカケとなった日)時っていつなの?」と。
それに対して、母親である小泉今日子は、照れ笑いしながら真摯に子どもに答えるのである。
つまり何でも話す。どんな事でも。恥ずかしい事でさえも。
しかし、それらは全て表向きのことだ。
夫は浮気をし(ソニンと)、妻はだらしのない母親との確執を抱え、長男はパソコンの中に没頭し、長女はボーイ・フレンドや街で声を掛けられた男と軽いタッチでモテルに通っている。
張りぼての家族。全員が「楽しい家庭」を演じているに過ぎない、虚構の家。
印象的なシーンがある。
コンビニで雑誌を読んでいる小泉今日子を見掛けた長女の鈴木杏が、背後からこっそり忍び寄り、微笑みながら母親の肩をトントン叩くシーンである。
小泉今日子は、最初「誰だよ!うるせえなあ!」という感じで物凄い形相をする。ところが。振り向きざま、それが自分の子どもだと解ると、いきなり笑顔で「あらあ。気づかなかったわあ」というような優しい仕草に急変するのである。
上手い!
やがて、この家族は、それぞれの秘密が露呈される過程で、バラバラになり、そして静かに崩れてゆく。
とても怖い。そして恐ろしい映画である。
ラスト近く、ちょっとしたカタルシスを映画は用意してある。
その奇妙なカタルシスに向かって、この映画は怒涛の如く流れるのである。
観るべし!!
よかった。
監督が豊田利晃。松田龍平が主演の、松本大洋(あの『ピンポン』書いた人ね)の漫画「青い春」を映画化した監督だ。
「青い春」も、高校生の青春模様を描いた作品だったけれど、まるで、鋭利な刃物を背中につき付けられたような、ひんやりとしていて、しかも乾いた質感の漂う映画だった。
そして今作が、角田光代の小説を映画化した「空中庭園」である。
主演が小泉今日子、キョンキョン。共演が、お笑いの板尾創路、そして歌手のソニン、それから鈴木杏。
東京の郊外の高層分譲住宅に暮らす、4人家族を描いている。
板尾がサラリーマン、その妻がキョンキョン、そして長男。長女は鈴木杏という設定だ。
映画の中で、カメラを右や左、それからぐるっと回転させるシーンが何度か挿入される。家族が出勤・登校するバスの中や、4人が暮らす高層分譲住宅を俯瞰する際にもだ。
まるで、この家族を、不安定で絶えず漂泊していると捉えているかのように。
この家族は、絶対に秘密を持たないということを互いに宣言している。
例えば長女は、こんな事を一家団欒の食事の席で言ったりする。
「私が仕込まれた(つまり、父と母がそういう行為をして、わたしが生まれるキッカケとなった日)時っていつなの?」と。
それに対して、母親である小泉今日子は、照れ笑いしながら真摯に子どもに答えるのである。
つまり何でも話す。どんな事でも。恥ずかしい事でさえも。
しかし、それらは全て表向きのことだ。
夫は浮気をし(ソニンと)、妻はだらしのない母親との確執を抱え、長男はパソコンの中に没頭し、長女はボーイ・フレンドや街で声を掛けられた男と軽いタッチでモテルに通っている。
張りぼての家族。全員が「楽しい家庭」を演じているに過ぎない、虚構の家。
印象的なシーンがある。
コンビニで雑誌を読んでいる小泉今日子を見掛けた長女の鈴木杏が、背後からこっそり忍び寄り、微笑みながら母親の肩をトントン叩くシーンである。
小泉今日子は、最初「誰だよ!うるせえなあ!」という感じで物凄い形相をする。ところが。振り向きざま、それが自分の子どもだと解ると、いきなり笑顔で「あらあ。気づかなかったわあ」というような優しい仕草に急変するのである。
上手い!
やがて、この家族は、それぞれの秘密が露呈される過程で、バラバラになり、そして静かに崩れてゆく。
とても怖い。そして恐ろしい映画である。
ラスト近く、ちょっとしたカタルシスを映画は用意してある。
その奇妙なカタルシスに向かって、この映画は怒涛の如く流れるのである。
観るべし!!