そのころ、世に数まへられぬ古教授ありけり。

この翁 行方定めず ふらふらと 右へ左へ 往きつ戻りつ

3月9日(水)田中正造の短歌

2011年03月09日 | 昔日記

 朝刊に田中正造自筆の短歌が見つかったという記事が載っていた。「世をいとひそしりをいミて何かせん身をすてゝこそたのしかりけれ」と翻字されていたが、こりゃ歴史学者の為事だろうねと、国語音韻学者である同居人と話す。

 「いミて」と翻字してあるが、「ミ」は漢数字の「三」が字母の平仮名なのだから、「み」とすべきを、歴史系の人たちはカタカナにしてしまう。「ハ」「ニ」も同様だ。この風趣?は、かつて「三」「八」「二」字母の平仮名活字が存在したこと、そしてカタカナに同字母の文字が存するところから生じたものであろう。歴史系だけでなく、美術史や能楽の研究者も同様にする人が多いが、文字の位相が違うのだから、全くもってナンセンス。むしろ間違いといってよいし、これらの字母だけを保存してみてもはじまらない。

 これを旧来の陋習という。歴史学者は、漢字の異体字には神経質なくせに、こういうところは鈍感で困る。いや、敏感過ぎるのかな? もちろんテクストによっては、平仮名と片仮名の交ぜ書きをしている場合もあるが、それは文字の位相が異なるから、当然違えたらよいのである。


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