そのころ、世に数まへられぬ古教授ありけり。

この翁 行方定めず ふらふらと 右へ左へ 往きつ戻りつ

8月3日(水)万葉切

2011年08月03日 | 公開

 春学期最後の会議日だが、お昼にかけて打ち合わせが1件2時間ほど。「たかはし」の二重弁当をいただく。「今日もまたたかはしの弁当をいただいて太れるならむ半キロがほど」とは、佐佐木幸綱先生御作のパロディ(改作)である。さてさて打ち合わせ内容は、到底景気のよい話とはならなかった。大学の成績評価でいえば「B」あたりで、まあまあというか、パッとはしない。

 隣の研究室のT教授が、これからM省殿がお見えになりますが…とおっしゃる。ああ、例の万葉切の調査は本日であったか。午後は予定がないので陪席させていただくことにして、T教授と一緒に中央図書館へ。M省殿は私を見るなり、一瞬いやな顔をなされたかも…。

 図書館蔵の万葉切と、ご持参の一葉をつき合わせる。料紙と綴じ穴、さらには字高が完全に一致。しかし、筆は違うようだ。なるほど、実物同士を直に比べるのはまことに有効なことである。勉強になりました。これで当該切は5葉が確認されたことになるよし。炭素年代測定の結果も教えていただいたが、言われていたのより1世紀古いものっであったそうな。詳しくはM省殿のご論文を俟たれたし。

 特別資料の課長やMさんも切を見せていただいた。13世紀書写本の断簡であることが確定したのは、図書館にとってもありがたい情報だ。ついでに、Mさんに架蔵古今和歌六帖の書誌を取らせてほしいと頼まれる。6冊たったの6万円也で買った写本だが、存外よい本だった。明日持って参ります。

 まあお茶でもと、M省殿を「Cafe GOTO」へお誘いする。手前の交差点のところで、新進歌人のTさんと一緒になった。疲れ果てたような顔をしていた。馬場あき子の新作能は行けなかったそうだ。そうそう、T教授はH氏が来年度から任期制の教授になることをご存じではなかった。詩人・エッセイストとしての採用だからな。

 「GOTO」ではC大の博士候補生Tさん(Tばっかりだ)がお友達とケーキを召し上がっていた。同居人がTさんにお渡しくださるようにと金子みすゞ先生にお預けした品はまだ受け取っていないとか。さて、コーヒーとケーキでしばし歓談の後、外へ出ると、元図書館長のO先生とばったり。涼しげなかりゆしスタイルで、少しお瘠せになったかな。近々またノルウェー・スウェーデンへお渡りのよし。私は今月エストニアへ参りますると申し上げた。

 神楽坂で少し買い物をする。まずは豆腐。それから同居人にパンを買ってこいと言われたから、「日光金谷ホテルベーカリー」でもとめた。神楽坂はパン屋さんが増えたかも。「志満金」さんの手前に新しく出来たビルに入っている「丸勢」にも寄ってみる。着物姿のご婦人が、美味しかったわ~とか言いながらお買い上げになっていたから、つられていくつか買ってみた。

 web試験の結果は、絶対カンニングしていないだろうなあという成績となっている。カンニングし放題だと思うのだが、T教授に言わせると、今の学生さんはカンニングさせてもらう友達もいないのだそうだ。それはそれで寂しいというか、問題なのかもしれない。教室で私語が皆無なのも、友達がいないからだと。そういえば思い当たるフシがいくつもある。今日びの学生さんは、1割はいろいろ問題を抱えているが、そういうこととも連動しているのだろう。まあ、教員のほうも同じくらいの割合で壊れていると言えなくもない。

 黒野耐『「たられば」の日本戦争史』(講談社文庫)を電車の中であっという間に読んでしまう。現代日本の分析を読むがごとし。