史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

「江戸東京に遺る勝海舟の足跡」 三澤敏博著 日本橋出版

2021年01月30日 | 書評

昨年末、三澤様より「新著出版のお知らせ」が届いた。「『江戸東京に遺る勝海舟の足跡』という書籍を上梓しましたのでご案内申し上げます」とあった。早速、書店で探してみたが見つけられなかったので、Amazonで取り寄せた。三百ページを超える分厚い本である。

以前から近々東京における勝海舟関係史跡をまとめた本を出すということは伺っていた。その数は二百以上と聞いていたが、正直に申し上げて、勝海舟の関係史跡だけでそのような数になるとは到底思えなかった。私も都内の史跡に関しては相当数足を運んでいて、当然その中には海舟の関係史跡も含まれているが、その数は精々十分の一程度にとどまっている。

本書に掲載されている関係史跡は実に二百三十六か所にも及んでいる。ページを開いて最初に口をついて出たのが「マジか!」というひと言であった。それにしても凄まじい「勝海舟愛」である。途轍もない執念を感じる。一人の歴史的人物に惚れ込むとはどういうことか考えさせてくれる一冊である。著者の愛や執念は、「幕末軍艦咸臨丸」(中公文庫)を読んだときに感じた著者文倉平次郎の情熱にも通じるものがある。

勝海舟は膨大な日記を残している。明治以降、海軍卿や元老院議官などの高官に就いた時期もあったが、いずれも短期間で辞任して、特にこれといった事績はない。むしろ、徳川家や亡友西郷隆盛の復権や顕彰に努めたほか、生活に困窮する旧幕臣の救済に尽力した程度で、いうならば歴史に残るような仕事は一切していない。知人の葬式に列席したり、会食に出席したり、写真を撮りに行ったりといった、ほとんど隠居生活のような毎日である。

筆者は、日記から海舟の行動を克明に読み取り、訪問先を特定し、それを現代の地図に当てはめるといった地道で気が遠くなるような作業をやり遂げた。その結果、石碑が建っているわけでなければ、説明板があるわけでもない、「尾崎三良麻布邸跡」だとか「向山黄村邸跡」などといった超マニアックな史跡を本書では数多く紹介している。

この本で初めて知った史跡も多い。早速都内に出かけて…といきたいところであるが、年明け早々緊急事態宣言が発せられ、在宅勤務に逆戻りしてしまった。その上、テニスのレッスン中に左脚ふくらはぎに肉離れを負ってしまい、歩くのもやっとという状態である。またしばらく史跡の旅はお預けである。ストレスのたまる日が続く。

本書でも矢田堀鴻の「矢」が抜けていたり(P.177)、旧津山藩主松平確堂(斉民)を旧松山藩主としたり(P.209)、木母寺を木文寺と表記したり(P.275)、誤字脱字が少々目に付いた。粗探しみたいで申し訳ないが、校正はしっかりお願いしたい。

 

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