夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

詩・POEM 「Autism パターン」

2007-07-26 06:56:09 | 創作(etude)
 少年A君は
 昼食のテーブルで
 ぼくの手を引いた
 その澄んだ眼で
 わたしをその招待席に
 誘った

 これで二度目になるのだが
 彼の食事は変わっている
 まるで鏡でも見るかのように
 わたしの動作を確認して
 それを繰り返す

 ぼくは少しでも
 彼の食事のパターンが
 適正に保てるように
 ゆっくりとした時間の中に
 食事動作を考えてしまう

 はじめにおかずのちくわの竜田揚げ
 そして次はご飯を食べる
 味噌汁を飲む
 野菜サラダを食べて
 ご飯茶碗を持って食べる

 彼はわたしの後について
 食事を続けるのだが
 どうしても
 おかずが足りなくなったり
 順序が合わなくなる

 彼はその足りないおかずを差し出して
 「ア、ア,ア?」と「これどうする?」
 そう確認している
 「ゆっくりと食べなさい」そう言うと
 彼は安心してそれをいただくのだ

 ご飯つぶが手につくと
 それを彼は私にとってくれとせがむ
 食べられない魚の骨やトマトのヘタを
 彼はわたしの茶碗やお皿に入れている
 こうして食事が終決しようとしている

 最後に「ごちそうさまでした」と
 わたしが手を合わせて言うと
 彼もまた「ごちそうさまでした」と
 同じく繰り返す
 完食した皿には何も残っていない

 彼が最後にする行為は
 わたしのトレーの中に
 自分と同じ食器を重ねること
 そうして全てがそろった時
 彼はそのトレーを下膳してくれるのだった

 お母さんとの食事も 
 その繰り返しだという
 彼が必要なのは
 そうすることでの
 安心なのかもしれない
 
 いつか自分の意志だけで
 食事をする時が来るのだろうか
 その時彼の脳裏には
 対面する人の食事風景が
 模範となるのだろうか
 
 

 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。