夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

重いひとりの「いのち」として

2009-02-03 14:24:05 | つれづれなるままに
 重いしょうがいを負ってこの世に生まれ
 そしてだれかの支援なしには
 決していのち永らえることのできない
 ひとりのいのち
 そのいのちに
 大きな影響を与える
 保護者
 保護者がどう生きようとするかは
 そのいのちの生き方をも左右するのだ

 わたしも
 そのいのちが
 あまりにも
 当たり前から離れていて
 どう向き合えばよいのかをわからずに
 苦悩の日々が続いたのだ
 そのいのちを
 どう支えたらよいのか
 わからないままに
 いたずらに日々が過ぎ
 そうしたある日
 専門医を尋ねた

 なぜこういうしょうがいの子が
 わたしに授かったのか
 その原因が知りたいと言うと
 医師はきっぱりした口調でこう言うのだった
 「なぜ生まれたかを考えるよりも
 どう育てるのかを考えなさい」
 私はしょうがいを
 しょうがいのいのちを
 受け入れられずにいたのだった

 やがて
 わたしは
 同じ立場の先輩の親たちから
 笑顔のすばらしさを
 もらうことができた
 くよくよしないで
 愉しく生きよう!
 そういわれているようだった
 病気の治療と
 療育の日々が続く

 私は
 なぜ笑顔の美しい
 際限もない明るさを備えた
 女性をそばに置こうとしたのか
 はじめてそのとき思った
 そうだったのか
 このことのために
 準備された
 私たちの出会いだったのかと
 私は強く感じたのだ
 
 てらいもなく
 背伸びする必要のない
 気楽で
 庶民的な
 日々が
 そこに続いた
 焼き魚定食と
 おいしくて温かな
 団欒がそこにあった

 この子に
 私たちがしてあげられることは
 なんだろうか
 私にしてあげられるのは
 それは
 一つでも多くの
 楽しみに触れさせて
 あげることだった
 毎日子が喜んで
 笑ってくれる
 絵本を探した

 毎日朝目覚めから
 まぶたが重くなるまで
 子が好きになってくれるような
 素敵な音楽を聞かせた
 自分でいつか
 その楽しみを
 自分の手で
 爪弾けるように
 キーボードを
 ギターを
 絵本を
 心行くまで触れさせていた

 こうして
 私たち家族は
 成長してきた
 重い制約の娘は
 社会の
 心ある人々に
 いのちの
 重さと大切さを
 存在として
 メッセージにした
 共感の思いが
 やがて
 社会の
 連帯を
 生み出した

 ぼくたち家族が
 そのとき
 はじめて
 社会の中で
 存在意義を
 感じた時だった
 わたしたち
 そして
 かけがいのない
 いのちが
 そこに
 花開く瞬間だった

 私たちには
 お金はなかったが
 理想があった
 夢があった
 希望があった
 せっせと7年間
 種をまき
 水を与え
 そして
 花が咲いたのだった
 
 願えば叶う
 そう言った人がいた
 願いは
 必ずや
 叶う日が来ると
 今はじめて
 実感する
 神は
 内なる神は
 今まさに
 私たちに祝福を
 与えてくれたのだ
 そして
 次に来る人のために
 希望の種を
 蒔かれたのかも知れない

 かつて
 一人を感じた私だが
 決して一人ではないと
 今はじめて
 実感している
 あるときには
 道案内の人が
 あるときには
 重さを分け負う人が
 あるときには
 風雪をさえぎる人が
 不思議と
 そこそこに現れたのだ
 「あなたは一人ではない」
 何も言わない
 制約の娘が
 わたしの
 内なる神として
 わたしに
 ほほえみを与えるのだった
 
 
 
 
 
 


 

 

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
受け入れること (りんご)
2009-02-04 08:54:33
私は我が子が病気になった時どうしても
受け入れることができませんでした。

「なぜ我が子が?」という思いでいっぱいでした。
そのことが私を色々な面でさいなむことになりました。

今思うと随分未熟な親だったと思います。
でも今は立派な親だとは思っておりません。
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一言 (りんご)
2009-02-04 09:01:06

最後の行の「でも」のあとに
「だからと言って」を付け加えて
お読みになってください。

いまでも修養の足りなさを痛感する毎日です。
大変ご面倒をおかけしました。
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りんごさんへ (なりたはるみ)
2009-02-04 09:08:10
 りんごさんありがとうございます。
 「デジャビュー」(人生)という言葉が浮かんできました。自分の人生。こどもの人生。家族の人生。人々の人生。予期できないことの連続の人生。それがうれしくても、悲しくても、辛くてもすべてを受け入れるしかほかに道はない。時間がかかっても・・・。それが私の人生。そこから何かをつかんで、強くなるしかない。立派である必要はないのではないでしょうか。ぼくは娘たちからお父さんと呼ばれることはないでしょう。でも、きっと世の中で一番頼りにされている「相棒」くらいにはなっていることだと思っています。泣いたり、笑ったりの人生で僕は結構楽しんでいます。
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Unknown (すずきゆきお)
2009-02-06 18:56:52
澄んだ詩を読ませていただき
感動しました。
この素晴らしい詩を読んで
昨年、10月に感じたこと、
なりたさんご夫婦も、お子さんも、
そして施設のお子さん達も、皆々、本当に笑顔が素晴らしく感動したことを思い出しました。

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すずきゆきおさんへ (なりたはるみ)
2009-02-07 14:40:17
 すずきさん、温かなコメントありがとうございました。
 何も言葉では表現しない娘がじっと私を見つめていることがあります。そんな時に、娘からの内なる声が聞こえるような気がします。しっかりしてよ!お父さんと・・・。
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