夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

「空に小鳥がいなくなった日」谷川 俊太郎

2007-08-23 23:06:26 | 私の本棚
   朝

 また朝が来てぼくは生きていた
 夜の間の夢をすっかり忘れてぼくは見た
 柿の木の裸の枝が風にゆれ
 首輪のない犬が日だまりに寝そべっているのを

 百年前ぼくはここにいなかった
 百年後ぼくはここにいないだろう
 あたりまえな所のようでいて
 地上はきっと思いがけない場所なんだ

 いつだったか子宮の中で
 ぼくは小さな小さな卵だった
 それから小さな小さな魚になって 
 それから小さな小さな鳥になって

 それからやっとぼくは人間になった
 十ヶ月を何千億年もかかって生きて
 そんなこともぼくら復習しなきゃ
 今まで予習ばかりしすぎたから
 
 今朝一滴の水のすきとおった冷たさが
 ぼくに人間とは何かを教える
 魚達と鳥たちとそして
 ぼくを殺すかもしれぬけものとすら
 その水をわかちあいたい
 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。