死んだ男の
残したものは
ひとりの妻と
一人の子ども
ほかには何も
残さなかった
墓石一つ残さなかった
時々ふと口ずさむ
この歌
ドウドウメグリヲスルコノウタハ
イツマデモリフレインシテイル
私が死んだとき
何が残るのだろうか
一人の妻と
ふたりのこども
自宅と
法人の軌跡
私は
それ以上を
望んではいない
死ぬときに
私は
どんな未練を
感じるのだろうか
たぶん
二人の
ハンディキャップを負った
むすめたちへの思いだろう
すまないという思いだろうか
娘たちが
これから死ぬまで
どんな思いで
暮らしていくのかを
見届けるわけにはいかないから
その不憫さが
心残りとして
わたしの
この世に
残すものになるのだろう