音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

イエス・ファースト・アルバム (イエス/1969年)

2010-08-06 | ロック (プログレッシヴ)


プログレッシブ・ロックという言葉が最初に使われたのは、なんといってもピンク・フロイドである。「原子心母」のLPレコードの帯に「ピンク・フロイドの道はプログレッシブ・ロックの道なり」というコピーが書かれており、これは、当時、フロイドのアルバムの発売元である、東芝音楽工業の石坂ディレクターという人が命名したと聞いている。今考えると、素晴らしい仕事である。つまりはそもそもがフロイドの形容詞であるのだが、似たようなイギリスのバンド、クリムゾン、ELP、ジェネシスもそう呼ばれたし(どこがフロイドと似ていたのかは実は良くわからない)、一方では翻ってフロイド、及び、これらのバンドが影響を受けた(と言われる)アルバムやアーティストもそういう扱いとされ、例えば、ビートルズの「サージェント・ペパーズ」や、アーティストではマイルスなんかはその対象として崇められてしまった。すべての発信はフロイドである。

そのフロイドに似ていたためにプログレに扱われたこのバンドのファースト・アルバムは、これまた、実にピンク・フロイドに似ている。と、つまりは、クリムゾンやジェネシスと根本的に違うのがここなのである。彼らはフロイドに似ているかいないかは別としてプログレであったが、イエスは、フロイドの初期と同じで、とてもサイケデリックな音であった。このファースト・アルバムを聴くと、例えば「ルッキング・アラウンド」や、「サヴァイヴァル」のように、後々のイエス・サウンドの兆候を垣間見ることができる一方で、全体的にはサイケな音、つまりはフォーク・ロックを基調とし、コーラスをうまくのせた音作りがされていて、その基調はやはりサイケが支配している。しかし、フロイドのファーストとの決定的な違いは、フロイドはこの1枚目が鮮烈なデビューであったことである(勿論、この時点で後々のフロイドの大活躍や音楽性を示唆できるものではないが、それとは全く別の次元で)が、このことはまたフロイドのところで書く。しかし、こうして良く聴いてみると共通点は多い。しかし、一方で、イエスも(フロイドの鮮烈さに比べるととても地味ではあるが・・・)ここに幾つかのプログレスな部分を見せていて、それはカバーの2曲、バーズのカバーである「アイ・シー・ユー」と、ビートルズの「エブリ・リトル・シング」である。全体的にはバンドの統一観が薄いものの、こういう細かい部分ではデビュー当時から非凡なものをみせていたのは、音楽的なテクニシャンの集まりだったという言いかたもでき、実は、プログレバンドというのはそういうテクニシャン揃いが故に、とんでもない変遷を辿ってしまうことが往々にしてあり、イエスというのはその代表的なバンドであることが、もうこの時点で提示されていたのであろう。

思えばラッキーだったのは、当時イギリスではアトランティック・レーベルが、生粋の英国ロックバンドを探し、積極的に彼らと契約していたこと。イエスもそのひとつで、彼らはいわばツェッペリンの恩恵でデビューできたようなものだ。勿論、そういう「時流」にのることも大事で、形はどうあれ彼らの場合、この時点でプロとしてデビューしていたことが本当に大きな実績だったのである。


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