音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

黄金伝説 (シンプル・マインズ/1981年)

2010-05-01 | ロック (イギリス)


ニュー・ウェイヴが派生してニュー・ロマンティクスという新しいジャンルを生んだことは前回、ソフト・セルのところで書いたが、その代表格といっても良いのが、このシンプル・マインズであろう。なぜこのバンドが代表格かというと、例えば、カルチャー・クラブやデュラン・デュランというのは、同じビジュアルでも、視覚的なビジュアル志向が強い。誤解がないようにお願いしたいが、シンプル・マインズが見た目にイケメンではないと言っているのではなく、十分に視覚的アドバンテージもあるが、それ以上に音楽的にビジュアルなのである。別の言葉でいえば、膨らみや広がり、或いは可能があるという言い方ができようか。

シンプル・マインズも最初はパンク系ロックであった。パンクがビジュアルではないとは言わない。例えば、ストラングラーズやスペシャルズなどは、パンクロックに分類されるも、とてもファッショナブルなスタイルを持っているし、音楽も徐々に幅広くなっていっている。無論、クラッシュの音楽領域の広がりは最早説明の必要はない。パンクというと不安定だが力強いビートをベースに、攻撃的なリリックがあり、生き方とヘアスタイルが尖がっているなんていうのは、初期のピストルズに洗脳されて勝手に作り上げられたイメージが独り歩きしているだけに過ぎない。シンプル・マインズもこの洗脳されたパンク音楽の定義の中で、音楽性だけはビート・ベースであったことは間違いない。しかし、その後、エレクトリックな音を前面に出してくるようになり、徐々にインテリジェンスが上がったという印象が強い。しかし、このバンドが活動の中で大きかったのは、初期の時点で一度ベストアルバムを出し自分たちを総括したことにあると思う。その結果、このアルバム「黄金伝説」の発表に繋がり、いわば、一番良い時期に自らの音楽を見直し、新しい船出に繋がったと言えよう。この音楽総括により、自分たちのスタイルと時代との間に何が不足しているのかをしっかりと把握したと言える。また、ここにスティーヴ・リリーホワイト(ヴォーカルのジム・カーが友人のU2のボノから紹介を受けた・・・)という存在も忘れてはならない。ただ、このアルバムはまだプロデューサーに彼を迎えていない時期であるが、初期の集大成から新しい「彼ら」の音楽を提言したという点においてはその方向性も著しく変わっており、つまりは、スティーヴがこのバンドのコンセプトを変えたのではなく、バンドの求める方角に彼が居て、彼らのブランドづくりに関与したのがスティーヴだったと言える。そういう意味では前述したU2と比較されることが多いが、基本的な違いは、U2はアイルランド、シンプル・マインズはスコット・ランド出身ということだろうか。この辺りがこの2グループの違いであるし、また、同時に英国バンドと、この2グループも基本的には違うところがあるが、分かりやすいのがビック・カントリーとの比較で、何故ならこのバンドもステーヴ・リリーホワイトのプロデュースである。この中でもっとも内省的なのが、シンプル・マインズであると思うのだが、スティーヴのプロデュースとこの作品とどちらが良いかは殆ど好みの問題であると思う。私はこの作品の方が好きである。

そういえば、このアルバムの1曲目が日本のCMに使用された時は驚いた。ウイスキーか何かだと思ったが、とても不釣り合いな気がしたし、勝手ながらニューウェイヴ・ファンとしては安易に使用して欲しくないとも思ったのが事実。もうひとつ、ジム・カーは、プリテンダーズのクリッシー・ハインドと一時期夫婦であったが、この両名の名前を言っても反応しない最近の音楽ファンにはがっかりしてしまう。


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