TSUNODAの経営・経済つれづれ草

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「食い逃げされてもバイトは雇うな(上)」を読む

2007-10-06 22:16:37 | 今週の一冊
 週末の土曜日は、今まで読んだ本の感想を思うままに書きたいと思います。今回は、山田真哉の人気会計本「食い逃げされてもバイトは雇うな(上)」の感想を書きます。

 私は、数年前に県立専門校で4年半会計、簿記と会計を教えていた経験があります。その時期に資格受験校TACに通っていました。税理士資格の簿記論を勉強していました。簿記もですがとりわけ会計理論に興味がありました。TACの受講者への月間情報誌に、たいへんおもしろい読み物が掲載されていました。それが、今思うと山田真哉の出世作の「女子大生会計士の事件簿」だったようです。

 さて、私が今回の本で目から鱗が落ちた箇所があります。「数字をありのままに見る」という箇所です。こんな問題が書いてあります。コストを削減したい。AとB
のどちらのほうがお得でしょうか。A.1000円のものを500円で買う。B.101万円のものを100万円で買う(Aの値引率は50%、Bの値引率は1%弱)。
正解はBと書いてあります。私はAが正解だと思っていました。私はこの問題を伸び率や数値比較など実数よりパーセンテージを重視する経営分析の視点から判断してしまったからです。しかし、金額でいえばAは500円で、Bは1万円なのです。どちらが得かはだれでもわかる問題だったのです。
 コスト削減を考える時は、この視点が必要なのかとはずかしながら今となって気づきました。節約(コスト削減)はパーセンテージでなく金額重視だったのです。
消耗品の値引きにエネルギーを費やすのでなく、金額の大きな取引の値引きにエネルギーを費やさなければならないということです。経営者が「従業員が100円のペンを無駄使いした」「紙の使いすぎで一ヶ月500円も損した」と目くじらを立てるより、本当は1050万円で受注できる仕事を、今回は1000万円でいいですとあっさり50万円値引きしてしまうほうが問題と書かれています。たしかにパーセンテージは自分の主張を有利に展開するときに利用しやすい数値です。これに惑わされない方法のひとつが、金額という絶対的な価値尺度のみで判断する「金額重視主義」だという考え方はまったく納得です。

 この本の題名になっている「食い逃げされてもバイトは雇うな」の理由も金額重視主義からの判断です。出前で店を留守にしてしまい食い逃げが多い店の話です。ラーメン屋の損得勘定は、ラーメン食い逃げのコスト4000円と店番も兼ねてのバイトコスト8000円を比較しています。バイトを雇用するほうが4000円の損失になる計算になります。感情より勘定を重視せよと書かれています。

 この本は、身近な事例で会計の考え方をわかりやすく説明しています。機会損失の考え方、経営分析数値のとらえ方、決算書の読み方などの深い内容が本質をはずさずに理解できるように書かれています。少し会計をかじった人間にとっては物足りない部分もありますが、金額重視主義のようにいろいろ気づかされることのある本です。

 「難しいものをやさしく、やさしいもの深く、深いものをおもしろく」とは作家井上やすしの言葉だったと記憶していますが、この本に当てはまることだと思います。


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