すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

「ペスト」

2020-04-17 21:15:00 | 読書の楽しみ
 アルベール・カミュの小説「ペスト」が大いに売れているそうだ。とは言っても年頭から15万部ほどだそうだから、もっともっとたくさんの人に読んでほしいものだ。
 ぼくには全体を適切に要約して紹介するなどということが出来るわけもないので、最後の一節だけを引用することにしたい。これから読む予定の人は以下を読まない方が良いかもしれない。でも、この最後の一節を読んで全体を読んでみる気になる人がいたら嬉しい。
 これは今現在の危機的状況の中でぼくたちが肝に銘じなければならないこと、そして感染が収まった後には決して忘れてはならないことだ。
 …ペストの終息宣言がなされ、封鎖されていた市の門が開かれ、街中から喜びの歓声が上がるのを聴きながら、この疫病との戦いに中心的な働きをしてきた医師リウーは考える。

 「じっさい、リウーはこの町から立ちのぼる歓喜の叫びを聞きながら、この歓喜がつねに脅やかされていることを思いだしていた。というのも、彼はこの喜びに沸く群衆の知らないことを知っていたからだ。それは様々な本のなかで読めることだ。ペスト菌はけっして死ぬことも、消滅することもない。数十年間も、家具や布製品のなかで眠りながら生きのこり、寝室や地下倉庫やトランクやハンカチや紙束のなかで忍耐づよく待ちつづける。そして、おそらくいつの日か、人間に不幸と教えをもたらすために、ペストはネズミたちを目覚めさせ、どこかの幸福な町で死なせるために送りこむのである。」
(これも、「100分de名著」中条省平から引用しました。全訳は新潮文庫・宮崎嶺雄訳があります。)
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