東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

バーンアウト症候群

2014年05月12日 | インポート

Photo  連休前に「働きすぎ、疲れすぎ、数量化しすぎに、ご注意!」(4/18)で三楽病院の精神科の医師だった中島一憲さんの「現役医師が見ている『教師のこころ』」「少しだけ、こころが壊れていませんか?」を紹介した。
 情緒的消耗感を感じ、学校に行けなくなる教員の症状を「バーンアウト症候群」(燃え尽き症候群)と名付け、その克服を提言した「『教師』崩壊(新井肇著、すずさわ書房)」から、一例を紹介する。

困難な生徒指導と保護者への対応に苦慮(小学校・女性・20代)
 F先生は26歳の独身女性で、1年前に小学校5年生のクラス担任となった。新任から3年間、中学年を担任した後、初めての高学年の担任であった。勤務校は新興住宅地にあり、教育熱心な家庭が多かった。
 5年生担任の2学期途中から、女子3名ほどが問題行動を起こすようになり、その対応に苦慮した。禁止しているものを学校にもってくる、授業中の出歩きもはじまり、時には授業エスケープをするようになった。校外での喫煙が発覚したりもしたが、他の児童は同調するようなこともなかったので、学級会を開いて児童自身に考えさせた。また、当該児童の親を個別に呼んで、じっくりと話をする機会をもったが、問題行動は一向に改善されなかった。
 やむを得ず、校長立ち会いのもとで、保護者会を開いたが、逆に「担任はじめ、学校の指導が悪い」と学校批判の会になってしまった。F先生は、「年のせいか、親になめられている」ような感じを強く持った。その後も、子どもにいろいろと働きかけたがうまくいかず、「空回り」しているような気分に襲われた。
 問題行動が深刻になってからは、学年主任が中心になってサポートしてくれたが、うまくいかなかった。また、11月頃からは、その3人の児童に追随する児童が出てきてしまい、学級全体の指導に行き詰まりを感じるようになった。「にっちもさっちもいかない」という気持ちが強くなり、いつまでも疲れやだるさがとれず、風邪気味で休むこともたびたびあった。やがて、朝起きると出勤したくない気分に襲われる日が多くなっていった。
 結局、一年間精神的に苦しい状況が続き、やめたいという気持ちが常に頭から離れなかった。問題の児童が6年に進級した今年、違う学年の担当になり気持ちが楽になった。そのまま6年に持ち上がっていたら、教師をやめていたかも知れないと言う。かなり高い情緒的消耗感を示しながらも、最悪の事態に至らなかった要因として、「仕事のうえで困ったことがあるとき相談できる人」が職場の同僚にいたことが大きかったと思われる。
 また、F先生は、その頃を思い出し、問題を抱え込むつもりはなかったが、結果として学年という枠のなかで抱えてしまづた、と反省している。学年主任ばかりでなく、他の学年の先生にも相談すればよかった、と言う。管理職が保護者会に立ち会ってくれたことには感謝しているが、その時の、学校批判を容認するような対応については、リーダーシップという面で今も不満を感じている。
 F先生は、授業にも特別活動にも熱心に取り組み、常に熱意をもって子どもに接している。
 幼い頃から教師になろうと考え、大学は教育学部の中学校課程で学んでいたが、教育実習で子どもたちと一緒に学んだり遊んだりすることに魅力を感じ、小学校を希望した。新任からの3年間は特に蹟くことはなく、教職の理想に燃えていたが、この一年間は真剣に教師をやめることを考えたという。
 元来、困難なことにぶつかっても我慢して頑張っていくねばり強さを備えているが、性格的に優しすぎて、子どもや同僚に対して強く出ることができない。自分で問題を抱え込みがちで、他の人に相談することはできるが、その人の意見に必要以上に従ってしまうようなところがある。真面目で、責任感も強く、「損な性格かな」と思いながら、人に頼まれると嫌と言えず、仕事を引き受け過ぎて、後で後悔することがよくあると言う。
 今回も、子どもたちだけでなく、保護者にも働きかけ、家庭の理解を得ることで問題を解決しようとした。しかし、家庭の問題が子どもたちの行動の背景にあることから、家庭訪問をしたり、保護者会を開いたりしてその問題に立ち入ろうとしたことが、かえって裏目に出てしまったようである。
 教師集団の悪しき習癖として、学年あるいは学科・教科のセクショナリズムにとらわれ、外に弱みを見せまいとして閉鎖的体質に陥りやすいという点がある。このケースも、一つのクラスの問題であっても、状況によっては学校全体の問題としてとらえ、学年の枠にとらわれない組織的対応をすることの必要性を示唆しているように思われる。学年主任と管理職だけでなく、生徒指導担当者、教育相談担当者、養護教諭などを交えてチームを組んで、F先生を支え、負担をやわらげるような対応がおこなわれてもよかったのではないかと考える。

 この例からもわかる通り、バーンアウトを防ぐための同僚や管理職の役割は重要だ。相談しやすい職場環境(雰囲気)と協働体制が不可欠であることを物語っている。パワーハラスメントで教員をバーンアウトに追い込む管理職などもってのほかである。
 いま、「しんどいなぁ」と思っている教員があなたのまわりにもいませんか?
 「しんどい」と思ったら、自分で抱え込まないで、「しんどい」ことを話してみましょう。
東京教組に相談してください。東京教組は、教員の「しんどい」思いに寄り添っていきます。
シャクナゲ


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