負けられぬ一戦を前に勝利への決意や覚悟を示す意味で「Z旗を掲げる」という言い方がある。今の人はあまり口にしないか。かつては受験生もよく使っていた▼由来はもちろん、日露戦争の日本海海戦に際し、日本海軍が掲げたZ旗。「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」。アルファベットの最後の文字だから、後のない戦いということになるのだろう▼ウクライナの町々を執拗(しつよう)に攻撃するロシア軍の戦車や装甲車にも白ペンキで書き殴ったような「Z」の字がある。「Z旗を掲げる」という表現は日本でしか通じないと聞くからロシア軍の「Z」にはどんな意味があるのか▼ロシア側は明らかにしていないが、ロシア語の西を英語のアルファベットで表記したZAPADの略らしい。西への配備用という意味だが、これが別の意味を持つようになった。「Z」の戦車の映像が広まった結果、ロシアではウクライナでの軍事作戦を支持するシンボルのようになってしまった▼体操のワールドカップに最近、ロシア選手が「Z」マークを胸に出場したそうだ。「Z」がウクライナの町を蹂躙(じゅうりん)し、市民を苦しめている事実を、その選手は情報統制のせいで、よく分かっていないのだろう▼「Z」を横に倒し、「NO WAR」(戦争反対)の「N」にしたい。もともとロシア語のアルファベットには「Z」は存在しない。
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