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今日の筆洗

2018年04月06日 | Weblog

 やはり少しばかり味気ない。プロ野球で今季取り入れられた「申告敬遠」だ。監督が告げれば、投球なしで敬遠四球にできる。開幕から何度か使われ、大きな混乱はなかったようだ。一方で、捕手が立ち上がった瞬間の球場のどよめきや感情を抑えながらゆるいボール球を投げ込む投手の姿に接する機会は今後減る▼「殺」「死」「刺」「盗」など殺伐とした文字が多い野球用語の中でも、「敬」は「生」「安」などとともに、いい響きがある少数派だ。漢籍に由来する「敬遠」という言葉も、もとは「敬して遠ざく」と読んで、相手を敬いながら、むやみになれなれしくはしないことを表した▼立ち上がった捕手へのあのボール球。米国流にのっとって試合時間を短縮するには、なくてもいいのかもしれない。しかし投球に相手打者の力に対する敬意がこもっていると思えば、味わいがある▼このところ、もっと荒々しく相手を「遠ざく」動きが、国際社会で目立っている。英国でロシアの元情報機関員が襲撃された事件を機に、ロシアと欧米が外交官を数十人規模で、追放し合う。「新冷戦」とも呼ばれる対立が、深刻さを増す事態になっている▼米国ではトランプ大統領が、次から次に側近たちを冷たく切ってきた。切った相手への敬意は、感じられない▼敬することなく人を遠ざける。残されるのは、殺伐とした空気だろう。