goo blog サービス終了のお知らせ 

本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

教育関連 【先生のお薦め本】 梅棹忠夫・北野大・浅羽道明

2007年02月13日 | 教育関連書籍

 

今月の当塾メルマガは教育関連の本特集です。受験シーズンのど真ん中でも、“メルマガのために、“書評お願いしま~す” と一言いえば、いやな顔一つせず(心は別ですよ…)、さっと出していただける。本当にすばらしい先生方です。


今回も非常におもしろそうな本が揃いましたので、ご紹介します。そういえば一度はこのブログにコメントや参考書解説をいただいた先生ばかりです。



『知的生産の技術』 
 梅棹 忠夫著 岩波新書 777円



詳細を見る

【K先生】

教育のあり方をめぐる議論、昨今やたら喧しく、教える側、学ぶ側の心構えや姿勢、「効率よい」学習のノウハウを説く本等々、書店の棚は百花繚乱。

とはいえ、何かを学び、力を伸ばすために最も必要なものはと問われたとき、私はあえて「学識」という古臭い言葉を挙げたいと思います。こんな言葉を使うのも、詰め込み式に脈絡もなく覚える用語といった浅薄な「知識」と区別するためです。

「学識」とは、手を動かし、様々に思いをめぐらす日々の積み重ねを通して身体化されるものに他なりません。一見すると要領良い知的発想法が説かれているかのようなこの本は、情報を整理すべくカードを使うことや、複数者で共有する利点ばかりではなく、それに至る試行錯誤を丁寧に語っています。

京都大学教授、国立民族学博物館館長を歴任し、紫綬褒章を受賞した著者が、ここで説いている一つ一つは、地道な努力の積み重ね以外のなにものでもありません。

具体的な作業から離れ、安易に事の核心に触れたいと気が急いでしまいそうな時こそ、より確かな一歩を踏み出すべく先人の苦労談に耳を傾けては如何でしょうか。






『教育のプロが語る「できる子ども」は環境で決まる』北野 大著 ダイヤモンド社 1680円


詳細を見る
 

【monta先生】

著者がさまざまな方と、よりよい教育環境にするための経験と工夫について対談しています。

例えば、100マス計算で有名な陰山英男氏、東京初の民間人校長である藤原和博氏、灘校の校長の河合善造氏、桐蔭学園の「中等教育学校」を開校した鵜川昇氏などの方々です。

できる子どもにするのは、やはり親の知恵も必要です。親の日常生活の中からも子どもは学習していきます。家庭でも実践できることが、本書にはたくさん詰まっていると思います。





『大学で何を学ぶか』 浅羽 道明著 幻冬舎文庫  520円


詳細を見る

【RYU先生】

教育に関する本からは少しズレるかもしれませんが、広い意味では「教育」に関する本と言えるでしょう。

「大学」という組織の教育機関としての問題をあぶり出した上で、学生が大学でなにをするべきかを示してくれるこの本は、少々議論が古いモノの、今の世の中でも通用する部分も多いです。

大学生になりたい人、大学生になったけれどつまらない日々を過ごしている人にお勧めです。


いかがでしょうか。どの本も読んでみたくなりますよね、ね?



■■■ ランキング ■■■

受験生と彼らを支える優しき塾講師にも…

応援の1クリック(4クリック)していただけるとありがたいです。


↓                 ↓

人気blogランキングへ   にほんブログ村 本ブログ 

ブログランキング      



http://tokkun.net/jump.htm 

(当教室HPへ)

 

 


『教室の悪魔 見えない「いじめ」を解決するために』 山脇由紀子

2007年02月08日 | 教育関連書籍


教コの悪魔.jpg


今、話題の一冊です。昨年11月ごろから、連続して報道された、“いじめ” とそれによる痛ましい自殺。あれほど報道されたにもかかわらず、今でもいじめによる自殺がなくなりませんね。

昨日、やっと『ダメな教師の見分け方(戸田忠雄)』 の記事中で言及した、あの最悪の教師が逮捕されたと報道されました。ずっと姿を隠していたとのこと、許せません。とにかくこういう教員をすぐ排除できるシステムに変えてもらいたいですね。


他に、このブログで紹介した本の中で、いじめに関連したものだけでも


遺書』  『ナイフ(重松清)』  『信さん(辻内智貴)』 

『オレ様化する子どもたち(諏訪哲二)
』 『みんなのなやみ(重松清)』 


などがありましたし、他の書籍紹介の記事やコラムなどでも触れました。ひとりでも多くの人に知ってもらえたら、ひとつのいじめでも無くなればと思いますから…。


すべての子どもがいじめや自殺の報道に関心を払っているわけではないでしょうが、少なくとも学校の先生方やご家庭では、かなり敏感になっていることと思いますが、それでも無くならない。


いじめは、それだけ “発見” すること自体が難しいのだとわかりますね。当然、自殺までには至らないケースがほとんどでしょうから、まだまだ発見されていないいじめがあると想像できます。


本書には、筆者が相談に乗った数多くのいじめの事例が出てきますが、なるほど発覚しない、発見できないことが良くわかりますし、この種のいじめを受けたら、自殺せずとも、その後の人生にずっと残ってしまうであろう心の傷を負うことも想像できます。


著者は、児童心理司で、過熱する報道に違和感を覚え本書を執筆したそうです。特に、“いじめられる方にも問題がある”といった意見は今のいじめ問題の本質を見落としているとして反論しています。

なぜ子どもが自殺するのかを論ずるのではなく、今のいじめは自殺したくなるほど、残酷、陰湿で悪質だということを理解して欲しいという意見です。


繰り返し強調しているのは、いじめを扇動しているリーダー格がいたとしても、構図は “クラス全体対一人” というようにに持っていき、追い詰める。ターゲットは基本的には誰でも構わず移っていく。いじめに加わらなければ、自分がターゲットになるのだということです。


とにかく本書全体を通し、筆者が専門家として、いじめがどんなものかを親たちに伝え、ひとつでも減らそうという気持ちをひしひしと感じ、非常に好感の持てる一冊です。

いじめが盛んに報道された時、私は息子に “学校でいじめがあるかい” と聞きましたが、もし息子がいじめていても、いじられていても絶対に言わない。良好な親子関係であったとしても。

親に心配をかけたくないというのがあるでしょうし、何よりも自分の親に言うこと、親が学校に来ることは、いじめっ子にとっては “チクリ” ですから、必ずいじめはエスカレートするというわけです。

従って、親はいじめを知ったとしても、子どもを無視して学校に連絡をするのは非常に危険だし、学校の責任追及をしようとすれば、さらに好ましくない事態に陥る可能性が高いことも指摘します。


ではどうすべきか、実例などもあげて説明します。また、発見しにくい理由はいじめる方だけでなく、いじめられている方も言わないからですが、見つけるためのチェックリストが付いています。


□最近、よくものをなくすようになった 

□親の前で宿題をやろうとしない

□学校行事に来ないで欲しい

 というようなものから…最後の

□自傷行為(リストカットなど)


まで、かなりの数の、きっと行き届いたチェックポイントだと思います。さすがに数多くのケースを扱い、いじめの実態を知り尽くした人ならではの役立つ知識ではないかと感じます。


時おり、塾講師である私のところにも、主に父母からいじめを受けているという相談が来たりします。中には、学校の先生にはっきり告げた方が良いと答えることもありますが、そう簡単に判断できないことも痛感しました。


実際に自分の子どもがいじめに関係ないとしても、子ども社会を知るのに良い一冊だと思いますし、すぐに読めますので、すべてのご家庭に置いておいても良いのではないかと感じます。必要がなくなれば、誰かに譲れば良いし…。


いじめ対策のマニュアルのような一冊です。

教室の悪魔 見えない「いじめ」を解決するために

ポプラ社

詳   細



■■■ ブログランキング 4冠!遠のく… ■■■


いつも応援していただきありがとうございます。

もう一押しの激励クリック、よろしくお願いします。

    ↓                 ↓

人気blogランキングへ 1位  にほんブログ村 本ブログ 1位 

ブログランキング うわっ2位に…   あとこれは→   3 位    




http://tokkun.net/jump.htm 

(当教室HPへ)





『教室の悪魔 見えない「いじめ」を解決するために』 山脇由紀子
ポプラ社:138P:924円

 

 

 


『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』ロン クラーク著, 亀井よし子訳

2007年01月24日 | 教育関連書籍
 

あたりまえだけどとても大切なこと.jpg



“給食費を払わない親” に関するニュースには本当に驚かされました。とうとう、そんなところにまで、教育問題が出てくるんだと…。子供の “食育” 問題は親や家庭のしつけ問題でしょう。


ゆとり教育導入当時に、絶対反対だと思った理由の中で、一番分かりやすいものが、

【すでに同様の発想で、アメリカ、イギリスでの“ゆとり教育的なもの”が大失敗している】 ということでした。


先日ご紹介した、『日本を滅ぼす教育論議(岡本薫)』 の中でも、ゆとり教育を始めると知った外国人から“日本人は我々を見ていないのか” と言われたというエピソードが紹介されています。


そうです。すでに20年前にアメリカのレーガン政権は、衰退するアメリカ経済の問題は教育にあるとして 『危機に立つ国家 :A Nation At Risk』 を発表し、これは何千万部も売れたベストセラーとなりました。その一部、英語ですがよろしければご覧下さい。大学受験生なら読めると思います。


 →http://www.ed.gov/pubs/NatAtRisk/risk.html




結局、日本でも教育再生会議がこれから、きっと “日本版、危機に立つ国家” を発表し、アメリカのゼロトレランス方式(生徒に対する不寛容:小さなことでもきちんと罰則を与える) が、例えば、いじめっ子に対する出席停止措置にあたるのでしょう。


数年前の予想通り、もうそっくりの道をたどっていると感じます。


そんなアメリカでも、教育現場で悩まされたのは、学力の低下の後に続く、マナーの低下、日本なら少し前の学級崩壊、フリーター、失業問題、そして犯罪です。


本書は2001年に「全米最優秀教師賞」を受賞した著者が、教育現場における日常生活のマナーの大切さを紹介した本です。


目次は以下のようなものです。


大人の質問には礼儀正しく答えよう

相手の目を見て話そう

だれかがすばらしいことをしたら拍手をしよう

人の意見や考え方を尊重しよう

勝っても自慢しない、負けても怒ったりしない

だれかに質問されたら、お返しの質問をしよう

口をふさいで咳やくしゃみをしよう

何かをもらったら三秒以内にお礼をいおう

もらったプレゼントに文句をいわない

意外な親切でびっくりさせよう

〔ほか〕


日本とは文化が異なりますので、そのまま具体例を受け入れることはできないでしょうが、その行動の根底にある、相手に対する思いやりは共通です。


ポイントは、この筆者が上のようなことを頭から押しつけるのではなく、まず自ら実践し、それがなぜ大切なのかも子供たちに考えさせていたからこそ成功したというところだと思われます。


大変読みやすく、ユーモラスでもあり感動的でもあります。 本書は子供の教育論であるばかりでなく、私たち大人の生き方をも問題にしていると思います。ちなみに著者はこの教育実践を通じて、ハーレムの底辺校から優秀な生徒を生み出しています。


給食費もそうですが、上記のような、普通は説明せずとも “当たり前” だと思われることが、そうではなくなっている、このような題名、内容の本が必要とされる時代になったとも考えられますね。

あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック

草思社

詳  細


P.S. 給食費問題、すずさんのブログ、【What A Woderful World】 で取り上げておられます。ぜひご覧下さい。

  → どうしようもない親、息ができなくなる 
   



また、genio先生の時事問題もチェック!

 → 入試に出る時事ネタ日記





■■■ ブログランキング ■■■



記事にもし賛同いただけましたら

応援のクリック、よろしくお願いします。



↓            ↓

人気blogランキングへ  にほんブログ村 本ブログ  



http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】



 『あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック』ロン クラーク著, 亀井よし子訳
(草思社:254P:1470円)




『日本を滅ぼす教育論議』岡本薫

2007年01月09日 | 教育関連書籍

 

日本を滅ぼす教育論議 岡本薫.jpg


当教室の冬期講習も昨日で終わり、今日から間髪を入れずに通常授業が始まります。

冬期講習は、朝8時45分から夜の8時半まで。私VIVAは浪人や高3の大学受験英語しか教えておりませんので、空き時間があってこうして毎日ブログを続けさせてもらいましたが、他の先生方は、毎年のことですが…大変。

長時間、授業をしっぱなしで、ほとんど空き時間がないんですね。人気講師になると10枠以上の授業がびっしり組まれています。本当に超ハードスケジュール、ご苦労様です。生徒諸君もよくついて来た、頑張った。


さて、そんな状態で、ゆっくりニュースも吟味しておりませんでしたが、年末年始のあわただしい中で大きなニュースが流れました。

鳴り物入りで始まった教育再生会議、今月まとめる第1次報告で、ついに、ゆとり教育の方向転換を明確にするというのです!

細かくなりますが…、12月の再生会議総会で事務局側が提示した「骨子案」でゆとり見直しの文言が削除されていたことに委員が反発したそうです。その削減のばかげた理由が、「ゆとり教育を推進した歴代文部科学相、文相ら与党側に配慮」 だそうです。

役人や政治家のメンツのために教育があるんじゃない、何を言っているんでしょう、実に腹立たしい。

 

ゆとり教育は導入当時から、大失敗することは予見可能どころか自明の理でした。我々もメルマガなどでも何度も訴えました。本書にもあるように、アメリカ・イギリスですでに同様の改革が大失敗して、彼らの国を挙げて教育のやり直しにやっきになっていたのですから。

他にも失敗の要因はたくさんあり、ここでは繰り返しませんが、(総合教育に関しては、コラムにしてとりあげました。→ 【未履修とゆとり教育】 ) とにかく、すべて議論にすらなっていませんでした。本書はそれを見事に整理してくれています。


“ゆとり” とか“生きる力” といった抽象的な概念は、そもそも行政が口にする目標にはそぐわないと、最初から大きな違和感がありましたが、本書でも日本の議論の特徴としてさまざまな分析をして見せます。


また、例えば、心ある教育専門家が独自の調査をもとに「学力が低下している」とせっかく警鐘を鳴らしても、文部科学省は “していない” とか“意欲も学力の一つ” のような言い方をして、政策の失敗を絶対認めませんから、問題の所在が確認できません。学力が大幅に低下していることは、きっと10年くらい直接教えている現場の先生なら誰でも実感していたと信じています。反論のデータ自体も決定的に不足したままでした。

指導要領の問題にしても、3割削減に批判が集まり、不利と見るや、“それは最低基準” と言い換えましたね。また子どもでもわかる話ですが、小中高の授業数を減らしておきながら、国公立大学入試の受験科目を増やすなど、とにかく支離滅裂の教育改革だという印象でした。

ただ、ただですよ、そうなってしまったのは文部科学省だけの責任ではありません。

そもそも実証的なデータもないままに、詰め込み教育批判を展開してきたのは世の中の“雰囲気”ですし、とにかく“教育”というものをすぐに“心”に結び付けて、システムを後回しにするのも我々日本人のどうしようもない性癖ですね。

日本人は、“こころ”という言葉に非常に弱い…。

 

そう言えば、教育再生会議の座長の野依良治氏が、“塾を全廃せよ” と意見したそうですが、いつまでたっても、そういう意見が一定の支持を集めるのは、教育を金と結び付けている連中はけしからん、心の問題だという強い意識があるからでしょう。塾講師も学校の先生方に負けない“心”を持っていると言ってもダメなんですね(笑)。


普通欧米では小中学校の教員の地位は、知識を教えるだけですから、決して高くないのですが、日本は“心”を磨いてくれるという意識がありますから、“聖職”。低いどころか、一般の公務員より高い身分が保証されています。 本書でも、ここらあたりは、文化論、哲学的見方も加わって非常に興味深い指摘です。


とにかく頑張れ!だけ、というのは教育だけではなく、会社でも部活でも見られます。ガンバレはよいのですが、頑張れば何とかなるからといって、リスク管理を怠ったり、がんばりが足らなかったと反省するだけで、具体的問題の原因分析の責任を免れてしまったり、ルールとモラルを混同してしまう一番大きな要因だと指摘します。まったく同感。

今回の履修漏れの問題を見て下さい。


とうとう今年の受験生は歴史に残る不平等入試に向かうことになってしまいました。これほどの大問題ですが、何か根本的な解決策は出されたでしょうか。もうどこから手を付けたらよいのか、誰もわからないほどシステムが機能していないことが明らかになりました。(コラム【現在の教育問題】)

先生を敬うという日本の伝統はすばらしいし、できれば続いて欲しいと切に願います。私もいまだに小中学校で担任をしていただいた先生と賀状のやりとりをさせていただき、懐かしく思い出します。

ですが、一方で問題教員を排除するシステムは不十分だったり、免許更新は形式的なものになりそうで、これ一つだけとっても、やはり議論が深まりません。 具体的目標が設定されない、データがそろわないまま枝葉末節の議論に終始し、中途半端な対策ができあがってしまい、あわてて修正したり、知らん顔したりする現状を批判します。


きっと会社経営や組織運営にまで応用できそうな考察がたくさん含まれています。大変、溜飲を下げた一冊で多くの方々にぜひ読んでいただきたいと思います。


http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】

日本を滅ぼす教育論議

講談社

詳  細





■■■ ブログランキング ■■■

塾を全部廃止して本当に教育が良くなると思っているのでしょうか。アドバルーンをあげただけのような気もしますが、それなら公立小学校を全部廃止するとやった方がずっとインパクトが大きく効果的でしょう。実際そう主張する専門家もいます。

私自身は公立の学校が再生しない限り、問題解決は難しいと思っております。とにかく教育問題を政治問題化しないこと、まともに議論すること。先生方にとってもつらい制度改革のようなものが必要ではないかと。つたない文ですが、少しでも参考になりましたら、下のテキストバナーをクリックしていただけるとありがたいです。

      ↓              ↓

人気blogランキングへ  にほんブログ村 本ブログ  


P.S. 本書についてただ、一点気になるのは…、大変僭越ですが、著者である岡本薫氏、私の言いたいことを書いてくれたような気がしてうれしかったのですが、経歴を見ると、ついこの前まで、文化庁と文部科学省の課長じゃないですか。つまり、自分のところで、この改革をしてきた責任はないんでしょうか。官僚組織は良くわかりません。


『ダメな教師の見分け方』 戸田忠雄

2006年12月05日 | 教育関連書籍
 

ダメな教師の見分け方.jpg


血も凍るような事件というのは、こういうものを指すのでしょう。都内の小学校教諭が、交通事故死した子供6人の写真をホームページに無断で掲載し、聞くに堪えないコメントを書き込んでいました。

その内容をニュースで聞いた時には、言葉を失いました。「3度の飯より子ども死体」と名乗っていたというではありませんか。また、別の子供の裸の写真まで掲載されており、児童ポルノ処罰法違反容疑も…。


そして、何よりもおそろしいのは、この教諭は今年9月に著作権法違反容疑で愛知県警に書類送検されていたにもかかわらず、それで処分を受けるどころか、ついこの前まで教壇に立っていたという事実、それを許す学校、教育委員会など日本の教育システムです。


我々は、こんな教員、こんな学校に税金を払って、大切な子どもを預けているわけです。


教員であれ、医師や弁護士であれ、何万人、何十万人もいればすべてがすぐれた人格を備えているわけではないでしょうから、その中に犯罪者がいたというのは避けられないとしても、それを排除する仕組みが、学校にできていないことに恐怖感を覚えます。


この事件も勇気ある遺族の告発がなければ、卑劣な行為がずっと続いていた可能性が高いと考えざるを得ませんし、ひょっとして、まだ表に出ない問題教員が実は相当数いるのではないかと疑われても仕方のないできごとです。


これまでも、 教育関連のカテゴリー で、学校の問題点を指摘していた、『学校が泣いている』や、『高校を変えたい 』など、数冊をご紹介しました。 本書はそれらと比べてもかなりラジカルな主張なのですが、残念ながら、小手先の改革案では、学校にいじめも自殺も、そしてこういう問題教員もなくならないと思いますので、取り上げます。


戸田氏は長野県立高校の校長と予備校の校長を経験しています。学校の最大の問題点として校長の権限のなさを挙げ、民間企業の社長なみの権限が必要だと指摘しています。

校長から何か業務を指示すると、業務命令が「民主的でない」とされ、職員会議を最高議決機関のように履き違え、ひたすら管理職いじめを行なう。あげく教職員組合は自らの存在理由を「平和教育」「反戦」などと政治的な問題にすり替え、学校業務を妨害している。


読んでみて最大の問題は、視点が生徒や保護者などのニーズから遊離して、極めて内向きの発想になっているということです。教員の評価システムを変える必要があるでしょう。


こうして、学校の問題を取り上げるときに心が痛むのは、まじめにやっている教員や、大変お世話になった恩師を個人的に何人も知っていることです。本書のような、十把一絡げ的な議論は、本来は避けたいのですが、今回のような事件を聞きますと、もう個人の問題をはるかに越えていると感じます。




http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】




織田信長が延暦寺を焼き討ちしたおりに、堕落し政治に口出しをする悪僧だけでなく、高僧と呼ばれるような人々をも容赦なく首をはねたと言います。常人には思いも付かないことですが、僧のために命乞いをする自分の配下の兵士たちに対し、“名僧、貴僧などが支えている寺の権威こそが諸悪の根源だ“ と言い放ったと何かで読みました。


学校も懸命に立て直そうと努力されている先生方が多くいらっしゃっても、今回の事件を聞けば、権威も地に堕ちたといえる段階まできてしまっていると感じます。公立学校の再生が何よりも重要だと考えていますから、なんとしてでもすぐに問題教員を排除できる制度を作り出してほしいものです。


「ダメな教師」の見分け方 ちくま新書 (547)

筑摩書房

詳   細



P.S. この事件に関し、相互リンクの kazuさんも興味深い記事を書いておられます。ぜひ、ご覧下さい。


 kazuさんのブログ
 → 『訳わからん このシャバは

 


■■ ランキング  
■■

最後までお読みいただきありがとうございます。拙文にいくぶんかでも賛同できると思われましたら、応援の1クリックをお願いします。
       ↓               ↓
  人気blogランキングへ    にほんブログ村 本ブログ  
 



『ダメな教師の見分け方』戸田忠雄
筑摩書房:302P:903円

『大学の話をしましょうか-最高学府のデバイスとポテンシャル』 森博嗣 

2006年11月19日 | 教育関連書籍


大学の話をしましょうか.jpg

大阪大学が、世界史の履修漏れの高校生たちの補習を行うと発表しました。大学が高校生の教科書を使って、単位を認めるそうで、文部科学省も、聞いたことがない そうです。 そりゃそうでしょう。

いろんな指摘が可能ですが、未履修問題が、何も片付いていない段階で、大阪大学は、“必修世界史が未履修でも入学を認める”と宣言したことになりかねません。

もうむちゃくちゃですが、それは別の機会にゆずり、今日はもう一つ別の観点から本書を紹介します。


大阪大学がそれを決定した時、竹中亨教授(西洋史)のコメントは


国際化の時代なのに、学生が第二次世界大戦などを知らず社会に出て行くことに歯止めをかけたい


どうです。


“歯止めをかけたい” つまり、阪大という名門校の大学生が、すでに戦争に対する知識がないというのです。

学力低下の論争の火付け役になった、『分数ができない大学生』(岡部 恒治 , 西村 和雄 , 戸瀬 信之 )という調査報告の本をご存知でしょうか。京都大学、慶応大学という偏差値の高い大学でも、小学生の分数さえできない者が相当数いるという告発です。


これに反論し、ペーパーテストの結果だけじゃなく、“意欲も学力だ”などと、言っておりましたが、現状、そのやる気も学習時間の平均も、国際比較では日本はほとんど世界最低レベル


家庭学習をする子とまったくしない子の二極化はかなり前から進行しています。10年くらいやっている先生は絶対、知っている、肌で感じていると思います。


履修漏れ事件の原因が、受験ばかりを意識した高校教育のせいだ、という主張が新聞などにものります。しかし、これ以上、高校生が勉強しなくなってしまった日本の将来はとても明るいとは思えません。


今の受験制度のままで、学力低下の問題をいっぺんに片付ける方法は、実は簡単で、大学の入学定員を大幅に減らして、受験科目数を増やすことです。実施するのが難しいだけです。

実際、少子化をむかえて、大学は個性を出そうと、定員を減らすどころか、逆に次々と新しい学部を作りますし、中国人留学生まで入れてまでも、一定人数を確保しようと懸命に競う大学までありましたね。 入学試験の科目を減らしたり、AO入試や○○推薦などと、実質は生徒の青田買いをしなければ、質を確保できない、定員に届かないところも出てきました。“歯止めをかける” どころではありません。


本書が、何かの売上ランキングに出ていたので、何も知らずに読みましたが、著者の森博嗣氏は人気作家でありながら、名古屋大学工学部建築学科の助教授なんですね。 上記の点に関して、氏は


昔、必要だから大学がたくさんできた。今は少子化なのだからどんどんつぶせば良い と言い切ります。その通りで、そうすれば、学力低下問題だけは一気に解決しますし、税金の節約になります。大賛成です。


本書では森氏がインタビューに答えるという形式で、教育、特に大学の組織などについてご自分の意見を述べています。大学に籍を置く人間としては、非常にラジカルというか、個性的な意見でしょう。

大学の組織がいかに非効率かということを批判する人は、かなり激しい口調になるのが常だと思いますが、森氏のたんたんとした語り方が印象的です。


作家の中には、教育に関して的確な発言する方が多いような印象を持ちます。このブログでも、これまで、重松清氏の『みんなのなやみ』や 村上龍氏の『希望の国のエクソダス』 などをご紹介しました。


非常に読みやすく、アカデミズムの実態を解説してくれている一冊です。残念なのは、インタビュアーの突っ込みというか、踏み込んだ質問が少ないので、なんとなく、表面的な印象を持ってしまいます。聞きたいことはまだまだあるのに~、という感じでしょうか。インタビューでなく、自分で書かれたものであったらと悔やまれます。 

大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル

中央公論新社

詳  細




http://tokkun.net/jump.htm(当教室HPへ)





P.S. ここ二日間、はでに遊ばせていただきましたので、かなりじみな印象ですね、今日の記事は(笑)。実は昨日の川柳も、ランキングでは大変な、高評価をいただきました。ありがとうございます。学問に王道なし【 There is no royal road to learning. 】 と生徒に言っておりますので、あまりの高評価に、“年内はずっとスッコトでいくか” などと誘惑にかられましたが(笑)、私も生徒同様、地道にまいります。

直球あっての変化球だと指摘をいただき、私も変化球投手に代わるのは、もう少し経験をつんだあと。アドバイスを頂いたみなさん、感謝しております。時々は、スットコや川柳なども出しますので、そのときは一緒にはしゃぎましょう(笑)。今後ともよろしくお願いします。昨日までの落差が大きくなりますと決心がゆらぎますので(笑)、できましたら、応援のクリックを… m(__)m (さっ、本よも)
      ↓                         ↓

人気blogランキングへ    にほんブログ村 本ブログ 



『大学の話をしましょうか-最高学府のデバイスとポテンシャル』森博嗣中央公論新社:187P:756円


『〈教育力〉をみがく』家本芳郎

2006年11月19日 | 教育関連書籍
  

指導力不足の教員が問題化しています。

本書は改めて「教育力」とは何か考えます。
議論の前提となる議論という感じです。
それによれば、「教育力」とは
「指導の力」
「人格の力」
「管理の力」
がその柱です。

読んでいて、教育内容によって
指導方法が具体的に議論されていて
とても参考になりました。

また、同じ教育目標でも、
教師の個性によって指導方法も
異なっていてもいいんだということを知り、
ちょっとだけ安心しました。

ただ自分がどんな個性をもった講師なのかは
生徒に聞いてみないと分かりませんが。

“教育力”をみがく

子どもの未来社

詳  細



最後までお読みいただき、ありがとうございました。できましたら、下のテキストバナーに賛同のクリックをいただけると大変ありがたいです。どうかよろしくお願いします

人気blogランキングへ  にほんブログ村 本ブログ 


http://tokkun.net/jump.htm

『授業を変える 学校が変わるー総合学習からカリキュラムの創造へ』佐藤学

2006年11月16日 | 教育関連書籍
 

授業を変える、学校が変わる.jpg


自殺や未履修問題のどさくさにまぎれて、と言ってはきついかもしれませんが、昨日、教育基本法の改正案が、委員会で与党単独採決をされ、今日にも衆議院を通過する運びです。

安倍内閣の最重要法案で、“国民も改正を望んでいる” その根拠にしていたタウンミーティングの議論でやらせが発覚。大問題だと思うのですが、未解決のまま。一方の民主党も、自民党以上に乗り気かと思わせた時期がありましたが、いつの間にやら、絶対反対の社民党なんかと組んで審議拒否。


これまたどっちもどっちでがっかりです。 まじめにやれ!と言いたくなります。


さて、その教育基本法、”愛国心” ばかりが取り上げられますが、その疑問は以前に 『 愛国心 (田原総一朗、西部邁、姜尚中) 』 のところで触れました。

みなさんは教育基本法読んだことがありますか。わずかA4用紙に1ページくらいしかありませんので、ぜひ全文お読み下さい。 当教室のHP上にUPされています。


→ 教育基本法全文 http://tokkun.net/kihon.htm


どこを読んでもまずそうなところはないと思いませんか。この法律を急いで変える必要がどこにあるのか。

また、制定された当初(昭和22年)、日教組はこれを“官僚的な悪文だ”と、制定そのものに反対でしたが、今は「今の教育基本法は子どもたち一人一人を大切にする素晴らしいものだから改正は必要ない」と言います。あれ? このように日教組の姿勢が180度変わってしまったのはなぜでしょうか。 


実は改正のポイントは第十条。そこに、「教育は、不当な支配に服することなく」 とあります。過激な教員や組合はこれを拡大解釈して、学校から “管理” という考え方を徹底的に排除してきました。

戦前の教育に対する反省から、権力に屈せず、良心に基いて生徒に向かい合うのは結構なことですが、干渉がないことをよいことに、教職を聖域化してしまい、日の丸、君が代問題や、指導要領軽視の根拠になっているとしたら、やはり大問題でしょう。

教育の場で政治闘争をするのは避けて欲しい、と度々訴えました。ですから、制度いじりをするならば、やはりもう少し現状を正確に把握して欲しいということで、佐藤氏の著作を紹介します。


佐藤氏は東大教授です。他の教育学の先生方と異なるのは、一貫した現場主義とでも言うような行動力です。教育というものに関してはとかく、政治家、官僚、学者、組合や親まで含めて、机上の空論がまかり通ってしまうことがあるということを認識しておられるのでしょう。

学級崩壊など問題のある学校に入り込み、徹底した議論を行い、改革を実践し効果が上がるまでつきあう、というかかわり方をするのです。“学校のお医者さん” あるいは、“先生たちの先生” と言えそうです。


以前、別の著書の中で、佐藤氏は、「新しく出たばかりの教育関連の本を10冊読んだが、著者10人、誰一人学校に足を運んでいない」 と憤慨しておられました。

本書では佐藤氏がかかわった実例を紹介しています。もちろんいくつかの共通の問題があるのですが、やはり子供に個性があるように学校も各々異なっているとおっしゃっています。

宮台真司氏などは、佐藤氏のことを 『学校が自由になる日(宮台真司、藤井誠二、内藤朝雄) 』 の中で強く批判しています。言いたいことはわかるのですが、今だ、学校は良いところという “ 共同幻想 ” を持っている私には、同意はできません(笑)。

父母というより、教育関係者向けの本かもしれません。



http://tokkun.net/jump.htm (当教室HPへ)



授業を変える学校が変わる―総合学習からカリキュラムの創造へ

小学館

このアイテムの詳細を見る

政治家も役人も、そして親も現場を見よう!   
の応援クリックお願いします。

     ↓            ↓
人気blogランキングへ    にほんブログ村 本ブログ 
 
 (2位です。あと1300点!強い)         (現在1位です。ありがとうございます)



『授業を変える 学校が変わるー総合学習からカリキュラムの創造へ』佐藤学
小学館:238P:1995円



『遺書―5人の若者が残した最期の言葉』Verb (幻冬社)

2006年11月13日 | 教育関連書籍

遺書 verb.jpg



このままでは、自殺は無くならないし、無責任体制も温存されてしまう” 

と、コラム に書いたばかりなのですが、また、“生徒の自殺”と “校長の自殺” が同じ日に報じられるという、やはり異常事態ですね、残念ながら。

自殺報道は連鎖を引き起こすということの証明にもなってしまいました。こんな風潮の中で、絶対に死んではいけません。子どもはもちろん、校長先生だって。

もちろん、私には自殺を止める権利も義務もないけれど、本当にそう思います。教育問題で自殺者が出るのは、特に悲しいと感じます。


“校長先生” という立場は、生徒にとっては当然、“一番偉い先生” ですが、現在の教育委員会や文部科学省のしくみ全体で眺めて見ますと、実態は“中間管理職” のようなものに見えます。


これまで、『高校を変えたい や 熱血!ジャージ校長奮闘記 をご紹介しましたが、校長の悩みは、端的に言えば、教育論や子どもや親そのものというよりも、日本の教育制度とそれにまつわる人間関係です。上(教育委員会)と下(教員)に反感を持たれたら何もできず、その中で必死に工夫をされています。


生徒が自殺をする。いじめがささやかれ、遺書や家族の証言が紹介され、テレビで顔を隠した同級生の、“いじめ” をほのめかすインタビュー。そして、校長の会見、“自殺の原因をいじめとは断定できない”という趣旨の、はんで押したようなコメント。

なぜ同じコメントなのだ、きっとそう言わざるをえないのではないか、という印象を持つのは私だけではないと思います。

もし制度が今のままなら、自殺報道の際は、校長と一緒にその学校を管轄する教育長がきちんと顔を出すべきだと強く感じます。品川区の教育改革をご存知でしょうか。賛否両論あるようですが、若月教育長が子どもや地域のために先頭に立っているからこそ、学校のまとまりという大きな組織が “動く” のだと思います。

具体的な施策がすばらしいというより、とにかく仕組みがそうなっている、学校を変える早いやり方は、校長を責めるのではなく、教育長の意識改革することではないでしょうか。

逆に…、ゆとり教育の論争時に盛んにゆとり教育を持ち上げていた、文部科学省の寺脇研氏。盛んにテレビに出演されていましたし、著作もいくつか残っていますから、ご存知の方も多いでしょう。

彼が、テレビなどに出演する以前、広島県の教育長時代にやったことを見れば、システムがよく理解できると思います。なぜ当時、広島の教育があれほど荒れたのか、やはり校長の自殺もありました。興味のある方はぜひお調べ下さい。


本書は、悲しくも自殺を選んだ若者の遺書の実物の公開、そして自殺後の遺族などを取材したドキュメンタリーで、すべて実名、完全ノンフィクションです。

第1章:前島優作(13歳)
第2章:伊藤大介(25歳)
第3章:伊藤準(13歳)
第4章:鈴木善幸(14歳)
第5章:秋元秀太(19歳)

いずれも読むに耐えないような内容です。実際の遺書は、警察に指紋採取され、汚れてしまっています。 主にいじめを苦に自ら命を絶った若者の遺書を編集したものです。

遺族のコメントを交えてつづられる文面にはものすごい重みを感じます。 もちろんこのようなことをして失われた命が戻ってくるわけではないのですが、無念を世に伝えるため力を振り絞る遺族の方の気持ちを察すると言葉を失います。


自殺は、本人は覚悟の上ですが、そののち、まわりにどれほどつらい思いをさせてしまうのか、知ってもらいたい。それ以上に…、

いじめている連中に読ませたいのです。


遺書―5人の若者が残した最期の言葉

幻冬舎

詳  細

http://tokkun.net/jump.htm (当教室HPへ)




教育関係者、子どもの自殺ストップ   
の応援クリックお願いします。

     ↓            ↓
人気blogランキングへ    にほんブログ村 本ブログ 
 
 (2位です。1位の半分に届きました)        (現在1位です。ありがとうございます)



『遺書―5人の若者が残した最期の言葉』Verb 
幻冬社:231P:520円


『高校を変えたい - 民間人校長奮戦記』大島謙 (草思社)

2006年10月31日 | 教育関連書籍


高校を変えたい!.jpg


世界史の未履修問題とつながっているのかどうか定かではありませんが、とうとう茨城県立佐竹高校の高久校長の自殺というところまできてしまいました。

教職員たちの司令塔、学校のシンボルであるはずの現役校長が、自殺という衝撃的な事件によって、突然いなくなってしまった高校の混乱はいかばかりでしょう。残念この上ないできごとです。


常々思っていたことの一つに、“校長先生” という立場は、もちろん学校という組織の頂点には位置していても、どうも企業の社長とは全く違う、というのがあります。

部下である自校の教師たちは、企業サラリーマンとは根本的に異なって、入れ替わりもあります。 企業であれば、その会社の将来に自分の夢をかけた人物がその組織に参加していますから、社長と共に企業の繁栄という一つの目的を共有できますが、学校はそうはいきません。

企業が社長のもとに“一丸”となるのと、学校が校長と“一致団結”するのとは全く違うプロセスなり、戦略が必要だと思うのです。どちらがやりやすいかは明白です。

また、社長の上には何もありませんが(株主を除けば)、校長の上には教育委員会、さらに文部科学省に常に“指導・研修”を受けなければなりません。要するに、企業でいえば、校長先生の気持ちとしては、一国の主とはいえ、中間管理職に過ぎないということです。


校長という職は難しい、分かりにくい、そんなことを教えてくれた一冊が本書です。


筆者は三重県で初めての民間人校長として、公募によって選ばれました。大島氏は東芝入社後、東芝アメリカベンチャーキャピタル社の社長まで勤めた後に、公募に応じた純粋なビジネスマンです。

私は大会社のビジネス慣行も、学校の運営の実態も直接は何も知りませんが、本書を読んで、同じ“組織” と呼ばれていても、両極端といってもよいほど違うなという気がしました。本書には、大島氏の応募の経緯から、その後の苦悩まで、すべて書かれています。

私自身が生徒の時には、校長先生はいつも優しくニコニコしながら生徒に声をかけていらっしゃいましたが、普段は授業もなく一日何をしているのだろう、と思ったものです。

筆者も校長業務の予想外の忙しさに苦しめられます。その中でも、有益でないものがかなりあるために、さまざまな改革に乗り出します。

何かしようとすると、必ず抵抗勢力が現れます。ビジネス界の常識で乗り切ったり、それではどうにもならないものに様々な工夫をして改革を成し遂げていく過程は痛快です。

同時に、“学校のしくみ” というやつは、こんなにも複雑なんだと知ることができました。 以前、ご紹介した、底辺高を改革する校長の物語 『熱血!ジャージ校長奮闘記(鈴木高弘著)』 も最高におもしろかったのですが、こちらの著者はまったくの畑違いの出だけに違った意味で勉強になりました。


結局は、システムの問題がどうであれ、命がけで改革しようというリーダーが校長になって、どれだけ先生方を巻き込めるか、そこにつきるのではないかという気がしました。

先生が変われば、生徒は自然に変わっていく、その様子が感動を呼び起こす、そんな一冊です。


それにしても校長先生の自殺というのはやはり衝撃です。本書のようにすべてがうまくいくわけではないでしょう。日本全国に校長先生は何万人もいます。偉そうですが、すべての校長にエールを送りたい、僭越ながら、教職を志した時の気持ちを思い出していただきたい。そう思いました。


高校を変えたい!―民間人校長奮戦記

草思社

詳  細

http://tokkun.net/jump.htm 



 『高校を変えたい! - 民間人校長奮戦記』大島謙
草思社:241P:1575円


■■ ランキング ■■

校長先生、今は大変でしょうが、頑張っていただきたい!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。できましたら応援のクリックをお願いします。
       ↓               ↓   
人気blogランキングへ  にほんブログ村 本ブログ  


『オレ様化する子どもたち』 諏訪哲二

2006年10月18日 | 教育関連書籍


Oresama.jpg

“いじめによる自殺” に関して、学校側、教育行政の対応に批判が集中しています。確かに 『ナイフ(重松清)』 のところで触れたように、重度の機能不全におちいっている印象を私も持っていますから、大いに問題点を議論し、改善すべきだと思います。

ただし、それでも問題の一部を取り出したに過ぎません。そもそも、いじめる子、ある意味、暴行や恐喝という犯罪行為をし、他人を死に追い詰めてしまう子どもの問題は、何も分析、解決されません。

どんな生徒たちだったのか、私の知る限り、ほとんど報道もありません。


今日、取り上げるのは、現代の子どもに何が起こっているのかを掘り下げた、非常に優れた、名著とも呼べる一冊ではないかと思っています。

本書の大前提は、“子ども”という存在を、無垢のものとして神聖視したり、イデオロギーで語ったりするのをいったんやめて、何が起こっているのか分析しようというものです。

何よりも子どもというのは、学校ではなく、社会全体の思想や流れに、最も敏感に影響を受け、したがって社会を、もっともストレートに映し出しているのだからということです。 その通りだと思います。


80年代のいじめ、校内暴力、その頃から子どもが変わったと指摘され、何かあるたびに、子どもではなく、教師、学校、社会批判がなされました。しかし、いまだに世間が、『子どもがわからない』状態が続いていると指摘します。いったい子どもに何が起こっているのか。

筆者は、現代を、社会の隅々まで、生まれてから、どうやって死ぬかまで、お金とそれにまつわる情報があふれている時代だと見ます。すでに子どもたちは経済的には独自の判断をする、『消費の主体』となっています。 ところが消費では主体であっても、学習や労働の場では、主体ではありません。


“タバコを吸ってはいけない”というのは、消費の観点から見ると、自分のお金で買って、自分の部屋で吸っているならば、教師が出るマクはないというわけです。

さらに、授業中に『しゃべってはいけない』という注意に対し、『しゃべってねえよ、オカマ!』 と先生に言い返す生徒。現場を押さえられているにもかかわらず、『喫煙していない、カンニングをしていない』と言い張る生徒。これらをどう理解すればよいのでしょう。

すべて彼らが主張しているのは、市場経済でいう“等価交換”だというのです。つまり、自分の行為と処罰や人前で叱られるというマイナス行為が、つりあわないと感じて、怒ってしまう。経済的に常に“等価”という考え方が、学校という、本来、ひどくそれが釣り合わない場所に持ち込まれた現象だと分析します。

過度の平等主義から、“教師も生徒も同等の一人の人間”、などというイデオロギーも、こうした現象を後押ししているかもしれませんね。


子どもは『自分を変えよう』としなくなった、子どもには完成した自分がすでにあり、一人の個である教師に、一人の個として拮抗しようとすることが教師をあわてさせているとします。

確かに、消費ということに関しては、高校生くらいなら、大人顔負けの主体として、何でも判断できるでしょうが、教育の場面ではそうはいきません。そこを子どもにわきまえさせる、親の教養や、洞察力があるかないかで、子どもの将来に大きく影響を及ぼすという指摘です。そうなると、格差社会へつながりまでも見えてきます。


さらに、後半はメディアで盛んに発言が取り上げられる、宮台真司、和田秀樹、上野千鶴子、尾木直樹、村上龍、水谷修の各氏の教育観を論評します。長くなりますので、紹介しませんが、その分析や問題提起にもうならされます。

強く推薦したい一冊です。



http://tokkun.net/jump.htm
 


P.S.
 当教室のある、横浜市都筑区というのは、ある経済紙に、日本で唯一“塾のダンピングが起こっている!”と書かれたことがあります。それで余計にそうかもしれませんが、何が安い、高いということを親ごさんも生徒もよく話題にします。

中には『先生、その先生の食べている弁当ね、○○で、△△時以降に買うと、50円安いよ』などと教えてくれる、超親切な子まで(笑)。 それに関する子どもの判断は常に的確なんですわ、これが。


オレ様化する子どもたち

中央公論新社

詳  細



■■
 ランキング  ■■ 

最後までお読みいただいてありがとうございます。少しでも参考になりましたら、応援のクリックをいただけるとうれしいです。

人気blogランキングへ    2位復帰まであとわずか…。

にほんブログ村 本ブログ  現在1位です。 ありがとうございます!

都築区   個別指導 中川 代々木 大学受験 中学受験 数学 予備校


『オレ様化する子どもたち』諏訪哲二
中公新書クラレ:238P:777円


『本当の学力をつける本』 陰山英男

2006年10月11日 | 教育関連書籍



Hontonogakuryoku.jpg


 安倍首相が掲げた教育改革を検討する 「教育再生会議」 が設置され、そのメンバーが発表されました。座長は、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏。計17人の有識者と安倍首相、伊吹文部科学相、それに山谷えりこ氏らで構成するようです。

以下がそのメンバーですが、みなさんはどんな感想を持たれるでしょうか。


浅利慶太 (劇団四季代表)・ 池田守男 (資生堂相談役)=座長代理 ・ 海老名香葉子 (エッセイスト)・ 小野元之 (日本学術振興会理事長)・ 陰山英男 (立命館小副校長)・ 葛西敬之 (JR東海会長)・ 門川大作 (京都市教育長)・ 川勝平太 (国際日本文化研究センター教授)・ 小谷実可子 (日本オリンピック委員会理事)・ 小宮山宏 (東大総長)・ 品川裕香 (教育ジャーナリスト)・ 白石真澄 (東洋大教授)・ 張富士夫 (トヨタ自動車会長)・ 中嶋嶺雄 (国際教養大学長)・ 野依良治 (理化学研究所理事長)=座長・ 義家弘介 (横浜市教育委員ヤンキー先生)・ 渡辺美樹 (ワタミ社長)   【50音順】


私は知らない方もおられますし、どの程度、この会議が力を持つのか未知数ですが、かなり目立つ布陣ではないでしょうか。力を入れているんだなぁという印象は持ちますね。

この中で、ゆとり教育導入の論争時、さかんに学校の現場から、反復練習の必要性を説き、百マス計算で一躍有名になった、陰山英男先生の著書を取り上げます。

というのも最近、ある新聞で、「百マス計算のせいで、計算が嫌いになり、友だちともつきあいにくくなった」 というような批判があり、さらにそれに同調するかのような記事を目にしたからです。


そもそも百マス計算自体は、新しいアイデアでも、何でもありません。ごく普通の計算練習に遊びや、競争の意識を入れただけのものに過ぎないのですから、当時、書店に「百マス~」 が、あふれるほど並んだこと自体がおかしいと感じました。

こんなことは、授業の工夫の一つで、当教室でも、単語テストや暗記競争であれ、漢字コンクールであれ、賞状を作ったり、グラフを示したりしてしますが、これらは生徒に発奮してもらう材料過ぎませんから、うまくハマる子もいれば、やってられないとそっぽを向いてしまう子も出てきます。

その点に関して申し上げれば、宮本哲也先生の 『強育パズル』 や 『合格パズル』 にしても同様です。 すべては、教師の力次第で、クラスの雰囲気や、学習の効用などを考えながら導入すべきものです。あまりにも陰山氏の学校の進学実績や百マス計算の効果が喧伝されたために、百マスだけやれば、学力が伸びると勘違いした、教師や親が間違っています。

百マス計算のせいではなく、余計なブームを作り出したために、「自分もやらねば」「乗り遅れる」 と思った塾や、教師が、その力量もないのに、百マスという名前に頼ったのが間違え、それを当てにした親が間違えです。 こんな単純な作業を、長期に渡ってやらせ、学力を上げてしまう陰山氏の力がすごいのです。

教師は常に、教材研究を怠ってはならないのですが、すでに世の中に良い教材はあふれていることもまた事実です。どうやらせるのか、そのクラスや生徒に合わせて何を選ぶかが、教師の力量なんです。学習効果が出ないことを、教材のせいにする前に、自分でふさわしい教材を厳選しだり、作ったりすること、また、そもそも自分の指導力を疑った方が良いですね。(もちろん自省の念を含めて)


教育現場からの、陰山先生に対するやっかみもかなり含まれている感じを受けます。何年か前、急に校長になられた時、氏に批判的な教員のHPをいくつも見た記憶があります。現在の肩書きを見ますと、すでに辞めてしまっているのでしょうか。


さて、ついつい力が入ってしまって長くなりました。本書にも、ごく当たり前の教育論、家庭でできること、学校でできることが紹介されています。

これまで、ご紹介した 『親力で決まる』 の親野智t可等氏と似ている印象も持ちます。大村ハマ先生の『教師 大村はま96歳の仕事』や、森口朗氏の『授業の復権』、そして、亡くなられましたが、家本芳郎先生の『教育力を磨く』 など、きっと多くの共通した考え方を見つけられると思います。


『教育再生会議』 のメンバーのみなさん。国内の教育改革、大きく前進して欲しいと願っています。“骨抜き” などと言われないよう、官僚、教育現場としっかりわたりあって下さい。

本当の学力をつける本―学校でできること 家庭でできること

文藝春秋

詳  細


http://tokkun.net/jump.htm 


『本当の学力をつける本』 陰山英男
文藝春秋:239P:1300円

 

■■
 継続は力  ■■


今日も記事がUPできました。お読みいただいてありがとうございます。少しでも参考になりましたら、ランキング 応援のクリックをいただけるとうれしいです。

人気blogランキングへ    2位です。やっと1位の3分の1。追い上げ急。ふ~。

にほんブログ村 本ブログ  現在1位です。


『いま魂の教育』石原慎太郎

2006年10月03日 | 教育関連書籍
 

安倍首相は、公立校の再生をはっきりとした政策の課題にしました。ひとつの大きな問題で、方向としては大賛成ですが、具体的政策を実施して、目に見える効果を上げるのは、難しいでしょうね。

教育問題が難しいのは、学校もあれば、地域もあるし、親の問題もある、すなわち日本社会全体の問題になってしまって、的が絞りきれないまま論じていることがとても多いということです。


本書の著者、石原慎太郎氏は、30年ほど前に書かれた、『スパルタ教育』 の中で、すでに当時の親はしつけができていないと指摘していました。ということは今の60歳や70歳くらいの方々を指していたわけですね。どう思われますか。

本書は、副題に “日本の崩壊を救う唯一の手立て” とあります。書名、副題ともかなりセンセーショナルなものになっており、石原氏も最後に “かなり難しい内容なのだな” と述べています。やはり議論の進め方が難しい、的が絞りにくいという告白だと私は感じました。

この著作の中では、決して教育の荒廃について深い原因探求にページを割いているわけでもなければ、極端な教育観を振りかざしているわけでもなく、国の教育制度や文部省批判を展開しているものでもありません。

最初から最後までごく常識的な教育論を、普通の親を対象にわかりやすく説明しています。

たとえば

“トマトやキュウリの固有の味を味わい知らせよう”
“親は子供に自分の愛読書を一冊与えよう”
“本を足で踏まない”
“約束を破ればかけがいの無い信頼を失うことを教えよう”
“子供のうそを咎めない”
“あいさつは人間関係の入り口であると教えよう”
“時代を越えて変わらぬ価値があることを教えよう”
“子供に意味の無い買い物をするな”
“子供が病気のときに健康のありがたさを説こう” などなど…、


昔ならどの家庭でも教えていたであろうことを、なぜそれらのことが現代において重要なのか、自分の体験だけでなく、さまざまな歴史的具体例にもとづいて主張しています。 

ルーズベネディクト、西田幾多郎、論語、川端康成、武田信玄、織田信長、ヘミングウェイ、ファーブル昆虫記、アインシュタイン、エジソンなど歴史的人物、事件からイチロー、タイガーウッズ、警備会社の社員、近所の知り合い、そして“葉っぱのフレディー”にいたるまで、実にさまざまな人、書物、事柄が取り上げられていますから展開に無限の広がりが感じられ倦怠感なく読みすすめることができます。


ただし、文体も常体があったり敬体があったりして、思いつくままに羅列している印象はぬぐえず、教育論というより、エッセーに近いのですが、全編を通じたテーマは一貫しています。教育は機関よりもまず、親が責任を持つということでしょうか。

さらに、この国の教育をあるべき姿にしなければ『自立性を欠いた日本という国家社会の蛇行はこのままいけば、日本に関わるすべてのアイデンティティを喪失し、民族の消滅に繋がっていくに違いない。』という認識を持ち、子供に知識や物を越えた世界の存在を知らせる、人間の存在はかけがえの無いものであることを説くというものです。


“極右”と呼ばれることがあり、石原慎太郎という名前だけで、ちょっと…という方もおられるでしょうが、本書には、親が利用できる、実践的具体例がいっぱいに詰まっています。 親だけでなく、先生も、社会に興味のある生徒も読んだら良いと思います。非常に読みやすい一冊で、お薦めできます。

いま魂の教育

光文社

詳  細


http://tokkun.net/jump.htm 


『いま魂の教育』石原慎太郎
光文社:283P:1260円



■■ ランキング  ■■

2つのランキングに参加しております。記事が少しでもご参考になりましたら、クリックしていただけるとうれしいです。

    現在3位です。

にほんブログ村 本ブログ ありがとうございます。1位です。 

『熱血!ジャージ校長奮闘記』 鈴木高弘

2006年09月22日 | 教育関連書籍


学校で、国旗・国歌を強制することは、違憲であるという判決が、東京地裁から出されました。これでますます、学校の現場は混乱しますね。読売産経 の両新聞の社説では、この判決に強く反発し、逆に 朝日新聞 は高く評価。

この決定は、これまでの他の判決とも矛盾している部分がありますので、代表的な新聞社だけでなく、国の司法判断までも分裂していることになります。残念でなりません。

それぞれの主張は理解できますが、それより教育現場から、この政治闘争をやめさせる方策はないものでしょうか。朝日・産経両新聞の社説にも決定的に欠けているのが、生徒に対する影響の視点です。

先日ご紹介した 『学校が泣いている(石井昌浩)』 もぜひお読みいただきたい一冊ですが、この件については、『授業の復権(森口朗)』 が非常に参考になります。

確かに、判決も述べているように、大事な卒業式に政治的思想を持ち出し、妨害する教員の態度も許せませんが、それに対する都教委の指導は、いかにも高圧的。これでは双方、憎しみが増すだけの悪循環だと思うのですが。

昨日の判決の影響で、学校運営や大事な式典が混乱することを恐れます。学校現場での政治闘争をやめてもらわなければ、生徒がまともに勉強できません。教員の質を高める機会も失われます。


さて、というわけで予定を変更して、本書を紹介します。

本書は、そんな荒れる現場で、学校を再生したすばらしい校長先生の著書です。

鈴木氏は生徒の約半分が中退していく、“超指導困難校” 足立新田高校 を立て直しただけでなく、逆に都立トップの人気校にした校長で、本書は着任から退任までの生々しい記録です。

茶髪云々の小さな問題から、国旗国歌のような政治的問題まで、実に様々な問題が起こります。

入試会場ですでに喫煙をしたり、空き缶を投げつけたりする生徒!校長を自殺に追いやりかねない一部教員のあからさまないやがらせ、学校を嫌悪する近隣住人や保護者、そういう環境です。

そんな学校を任されたらどうしますか。

鈴木氏はまず、早朝からジャージに着替え、生徒たちが壊した備品やトイレを修理し、ガムをはがし、落書きを消すことから始めます。そこから、校長が飽くことなく次々と改革をする姿は圧巻です。

本の装丁というか、表紙がいかにも安っぽい印象(ごめんなさい)で、個人的には好きではないのですが、内容は本当にすばらしいです。 “ジャージ”に象徴される鈴木先生の“情熱”はもちろん、“知力”がけた違いです。

学校問題に興味のある方にはぜひ、お薦めしたい一冊です。

熱血!ジャージ校長奮闘記

小学館

詳   細



P.S. 高校入試に出る自由権に関して genio 先生 ( 入試に出る!時事ネタ日記 )が、簡単にまとめていますので、中三生はチェックしてください。


http://tokkun.net/jump.htm 

 『熱血!ジャージ校長奮闘記』鈴木高弘
小学館:253P:1470円




■■
 公教育  ■■


たとえ、良かれと思ってやっていたとしても、結果、公教育は見るも無残。本書の鈴木先生のような方、本書のような本にもっと関心が集まるよう応援したいと思います。ついでにVIVAにも応援、どうかよろしくお願いします。ふ~。
→  一瞬だけ並びましたが…。相手が強い。

→ にほんブログ村 本ブログ ありがとうございます。1位です。 


『4コマ哲学教室』 南部ヤスヒロ(文) 相原コージ(漫画)

2006年09月17日 | 教育関連書籍




ひとつひとつは、報道されませんが、年間3万人以上、毎日、100人近くが日本で自殺をしていることになります。戦争をしているわけではないのに、一日100人が、自分のこころと戦いながら、命をすてていることになります。

生徒や子どもから、“ぼくの生きる意味は?” と問われたら、何と答えましょうか。

これまでも 『 14歳からの哲学 』  『 なぜ人を殺してはいけないのか 』 『 人生を変える3分間の物語

など、そういうたぐいの本をご紹介しましたが、本書は4コマ漫画というスタイルで、非常にわかりやすく、しかもこころを揺さぶる一冊でした。


人はなぜ生きるのか、生きる意味について悩む主人公の 『 浩 』 と、知り合いになった 『 ブタ公 』 のおはなしです。

浩があれこれ悩む一方で、ブタ公は物語のはじめに、平然と、 “俺は人に食われるために生きている” と言い放ちます。 “ それで良いのか ” と詰め寄る浩に、ブタ公は “良いも悪いもない、そういうことだ” と答えます。

浩の “人生はいかにあるべきか” という価値判断(哲学)に対し、ブタ公は、“人生はこうなっている” という事実判断(科学)で答えるわけです。 浩とブタ公は、そこからなんとなく一緒に旅に出て、日々生きる意味についてやりとりをします。

たいてい浩が何かを思いつき、それをブタ公に言うのですが、あっさり否定されてしまいます。 4コマ漫画で一つの話ができており、そのあとに南部氏が解説を加えます。


ある日の会話はこうです。

【  浩   】 : 『なぁ、ブタ公、俺さ、ついに分かったんだ!自分の生きる意味が』
【ブタ公】: 『なに?』
【  浩   】 : 『俺はさ、本当の自分を見つけるために生きてるんだよ!』
【ブタ公】: 『本当の自分なんてものはないよ。
                       自分がイケてないことの理由を、
                       今の自分が本当の自分じゃないから
                       なんてところに求めること自体が
                       すでにイケてないんだよ。
                       そんなイケてない今の自分こそが本当の自分なんだよ』
【  浩   】: 『ぐおおおお~っ!!』(倒れる)
【ブタ公】: 『パンもらうよ』     

ブタ公の最後のセリフは、毎回の決め台詞です。


★★★★★
中学生なら漫画の部分だけをまず読んで欲しいですね。解説は高校の倫理社会の先生のものですから、中学生だと、ちょっと難しいと思います。

解説には、古今東西の哲学者や思想が登場します。ソクラテスカントヘーゲルもちろん、そこからポストモダン構造主義 などの思想までを、漫画のストーリーに沿って平易な言葉で解説しています。


人の悩みはほとんど、家族を含めた他人を意識すること、他人と比べることから生じるはずですが、絶対的幸福などというのも、麻薬を使ってでもいない限り、常に相対的なものであったり、他人から与えられるものですね。

時々、“自分は孤独を愛する” などという表現を見ますが、ほんとうにそうならば、なぜそれを言葉で他人に伝えようとするのか、私には不思議です。孤独を愛するとアピールするのは、孤独を愛するということを理解してくれる仲間を求めていると感じてしまいます。それでは、孤独を愛している、ということにはならないのではないかという疑問です。


筆者は、がんばれば、何でもできる、何にでもなれる(実際はがんばれない)式の教育のまま大人になってはいけないと主張します。自分の限界から目をそらさずに、生きていくことが成長するということだと。

そして、“本当の自分”が別にいる式の考えを広める、SMAP や 尾崎豊 などの歌詞をやんわり批判します。


さて、そんなことを、解説しつつ、漫画は、浩とブタ公の二人旅、物語が感動のエンディングへむかいます。

“食べられるために生きている”  と言っていたブタ公が、いよいよ本当に、食べられるためにつかまってしまいます。その時、浩は…。


何度も読み返しました。ゆっくり読んでいただければ、たしかにこころにあったかいものを感じることのできる一冊だと思います。

4コマ哲学教室

イーストプレス

詳  細



P.S. 本書をながながと取り上げたのは、時おり拙ブログにコメント下さる、ひゃくおく◎萬太郎さんが、下の歌をご紹介していただいたからです。本書にもぴったり(と勝手に思っております)。

■■■ 厳しい社会に圧倒され、身動きが取れず、引きこもってしまった若者が、時間を経て、現実を直視し、心の中の青い鳥を追い出すというストーリーです。音楽も最高で、涙が出ました。こころの戦いをやめ、自分とまわりを見つめなおす、そんな感じです。 お時間があれば、ぜひ聞いてみて下さい。 

 http://www.geocities.co.jp/PowderRoom-Lavender/7709/blueb21c.html


http://tokkun.net/jump.htm 

『4コマ哲学教室』 南部ヤスヒロ(文) 相原コージ(漫画)
イーストプレス:127P:1575円


■■   本当の自分  ■■
まだまだ何度も読みたい本、聴きたい曲です。

いったい自分は 【浩】 (-_-;) なのか 【ブタ公】 (^0_0^) なのか

やれるところまでやってみようのクリック(???)お願いします。 ふ~ ( ^^) _旦~~

→   → にほんブログ村 本ブログ