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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『授業の復権』 森口朗

2006年03月24日 | 教育関連書籍


バブル崩壊後の日本経済を“失われた十年”などと形容しますが、教育界においてもまったく同様の“失われた十年”であり、経済の方は復活の兆候を見せていますが、教育界はこのままではさらに“破滅への十年”となりかねないという現状認識を筆者は持っています。

学力低下の問題を語るときには、様々な視点が考えられます。指導要領改定に伴う授業時間の減少や、地域社会を含めた家庭の教育力の低下、競争は悪という思想を喧伝する組合や政治勢力の責任などです。どれにもある程度の信憑性のあるデータが示されたり、論争が展開されてきましたが、著者は、その中でも、質の高い授業を目指して、努力を怠らず、成果を上げている“授業達人”の教員に注目します。

本書では百マス計算で有名になった陰山英男氏を含め、六人の先生とその授業を紹介しています。それぞれの指導方法を産んだ背景などまで詳しく書かれており、非常に興味深く読むことができました。学校を取り巻く様々な要因を論ずることも大切ですが、何よりも“授業の質”が子供の将来や、学力に決定的に重要だという主張で、全く同感です。

教員が授業の質を上げることに全力を傾けることを可能にするには、学校周辺の状況整備を論ずることを抜きにはできないということもまた事実でしょう。そのあたりの筆者の主張は傾聴に値します。

今さら壊滅状態の日教組を攻撃しても現状打開に何の役にも立たない。むしろ日教組の果たしてきた授業力向上の機会が失われることの方が、若い教員にとってはマイナスだと分析します。

長くなりましたので筆者の教育再生プログラムを簡単に紹介しますと、

『第1段階.政治思想停戦、第2段階.競争の復活、第3段階.教師の誉め育て』です。授業力向上がすべてのポイントです。



P.S. 学校もそうですが、大学生のアルバイトをコンビニの時給並みで雇って、ろくな研修すらしない塾も多すぎます。ひどいところは学生にネクタイをさせてごまかしています。許せませんね。うちの塾はプロばかりですが、そうすると月謝は確かに高くなる。う~ん。話がそれてしまいました(笑)。とにかく勉強になる一冊です。

授業の復権

新潮社

詳  細


http://tokkun.net/jump.htm


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2 コメント

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Unknown (ななしのごんべえ)
2006-03-25 13:21:11
大学生のアルバイトが悪いかどうかは わかりませんが 人に

勉強を教える事を 安易に考えている人が 多い気がします。 できない子に勉強させるのは本当に大変です。(うちの息子の場合)そういった意味では 何年も 経験を積んだベテランの 先生が いいのかも しれませんね。子供の話では 最近の子供は 言う事を効かないのが 多いらしく 学校の先生も よくきれるらしいです。そういうのを きくと 教育現場は これから どうなっていくのか 少し心配になります。親の しつけが 悪いのか 先生の 指導力が ひくいのか。どうなんでしょう。
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問題は~ (VIVA)
2006-03-25 14:05:22
ななしのごんべえさん、コメントありがとうございます。子どもが変わったとすれば、世の中で子どもだけが変化するわけではありませんから、世間が変わった、となるでしょうし、少なくとも大人が変えたと言い換えられるでしょう。



教育問題は、学校の制度や家庭のしつけ、などいろいろな切り口から語ることができますが、本書の主旨はやはり授業をもっと重視しよう、というものです。



おっしゃるように、勉強を教えることを安易に考えてはいけないということですね。
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