本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『4コマ哲学教室』 南部ヤスヒロ(文) 相原コージ(漫画)

2006年09月17日 | 教育関連書籍




ひとつひとつは、報道されませんが、年間3万人以上、毎日、100人近くが日本で自殺をしていることになります。戦争をしているわけではないのに、一日100人が、自分のこころと戦いながら、命をすてていることになります。

生徒や子どもから、“ぼくの生きる意味は?” と問われたら、何と答えましょうか。

これまでも 『 14歳からの哲学 』  『 なぜ人を殺してはいけないのか 』 『 人生を変える3分間の物語

など、そういうたぐいの本をご紹介しましたが、本書は4コマ漫画というスタイルで、非常にわかりやすく、しかもこころを揺さぶる一冊でした。


人はなぜ生きるのか、生きる意味について悩む主人公の 『 浩 』 と、知り合いになった 『 ブタ公 』 のおはなしです。

浩があれこれ悩む一方で、ブタ公は物語のはじめに、平然と、 “俺は人に食われるために生きている” と言い放ちます。 “ それで良いのか ” と詰め寄る浩に、ブタ公は “良いも悪いもない、そういうことだ” と答えます。

浩の “人生はいかにあるべきか” という価値判断(哲学)に対し、ブタ公は、“人生はこうなっている” という事実判断(科学)で答えるわけです。 浩とブタ公は、そこからなんとなく一緒に旅に出て、日々生きる意味についてやりとりをします。

たいてい浩が何かを思いつき、それをブタ公に言うのですが、あっさり否定されてしまいます。 4コマ漫画で一つの話ができており、そのあとに南部氏が解説を加えます。


ある日の会話はこうです。

【  浩   】 : 『なぁ、ブタ公、俺さ、ついに分かったんだ!自分の生きる意味が』
【ブタ公】: 『なに?』
【  浩   】 : 『俺はさ、本当の自分を見つけるために生きてるんだよ!』
【ブタ公】: 『本当の自分なんてものはないよ。
                       自分がイケてないことの理由を、
                       今の自分が本当の自分じゃないから
                       なんてところに求めること自体が
                       すでにイケてないんだよ。
                       そんなイケてない今の自分こそが本当の自分なんだよ』
【  浩   】: 『ぐおおおお~っ!!』(倒れる)
【ブタ公】: 『パンもらうよ』     

ブタ公の最後のセリフは、毎回の決め台詞です。


★★★★★
中学生なら漫画の部分だけをまず読んで欲しいですね。解説は高校の倫理社会の先生のものですから、中学生だと、ちょっと難しいと思います。

解説には、古今東西の哲学者や思想が登場します。ソクラテスカントヘーゲルもちろん、そこからポストモダン構造主義 などの思想までを、漫画のストーリーに沿って平易な言葉で解説しています。


人の悩みはほとんど、家族を含めた他人を意識すること、他人と比べることから生じるはずですが、絶対的幸福などというのも、麻薬を使ってでもいない限り、常に相対的なものであったり、他人から与えられるものですね。

時々、“自分は孤独を愛する” などという表現を見ますが、ほんとうにそうならば、なぜそれを言葉で他人に伝えようとするのか、私には不思議です。孤独を愛するとアピールするのは、孤独を愛するということを理解してくれる仲間を求めていると感じてしまいます。それでは、孤独を愛している、ということにはならないのではないかという疑問です。


筆者は、がんばれば、何でもできる、何にでもなれる(実際はがんばれない)式の教育のまま大人になってはいけないと主張します。自分の限界から目をそらさずに、生きていくことが成長するということだと。

そして、“本当の自分”が別にいる式の考えを広める、SMAP や 尾崎豊 などの歌詞をやんわり批判します。


さて、そんなことを、解説しつつ、漫画は、浩とブタ公の二人旅、物語が感動のエンディングへむかいます。

“食べられるために生きている”  と言っていたブタ公が、いよいよ本当に、食べられるためにつかまってしまいます。その時、浩は…。


何度も読み返しました。ゆっくり読んでいただければ、たしかにこころにあったかいものを感じることのできる一冊だと思います。

4コマ哲学教室

イーストプレス

詳  細



P.S. 本書をながながと取り上げたのは、時おり拙ブログにコメント下さる、ひゃくおく◎萬太郎さんが、下の歌をご紹介していただいたからです。本書にもぴったり(と勝手に思っております)。

■■■ 厳しい社会に圧倒され、身動きが取れず、引きこもってしまった若者が、時間を経て、現実を直視し、心の中の青い鳥を追い出すというストーリーです。音楽も最高で、涙が出ました。こころの戦いをやめ、自分とまわりを見つめなおす、そんな感じです。 お時間があれば、ぜひ聞いてみて下さい。 

 http://www.geocities.co.jp/PowderRoom-Lavender/7709/blueb21c.html


http://tokkun.net/jump.htm 

『4コマ哲学教室』 南部ヤスヒロ(文) 相原コージ(漫画)
イーストプレス:127P:1575円


■■   本当の自分  ■■
まだまだ何度も読みたい本、聴きたい曲です。

いったい自分は 【浩】 (-_-;) なのか 【ブタ公】 (^0_0^) なのか

やれるところまでやってみようのクリック(???)お願いします。 ふ~ ( ^^) _旦~~

→   → にほんブログ村 本ブログ  



最新の画像もっと見る

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そうだった、これを読まなくっちゃ! (usagi-kani)
2006-09-17 06:20:06
この本、以前に他のブログで紹介されていて、是非読みたいと思い、「読みたい本リスト」に入れておいたものでした。

その後違う本ばかり読んで、存在すら忘れてしまっていました。

早速、買いに行きます!
返信する
Unknown (milesta)
2006-09-17 07:38:04
二十歳前後の若者が自ら命を絶ち、その家族の一人が私の知人だったことが二度あります。家族の深い悲しみを見ると、もう誰にもこんなことをして欲しくないと思います。だけど、家族からも愛され、親しくしている友達もいて、それ以上どうしたら思いとどまらせることができたのかが、全くわかりませんでした。

VIVAさんのこの記事を読んで、



>筆者は、がんばれば、何でもできる、何にでもなれる(実際はがんばれない)式の教育のまま大人になってはいけないと主張します。自分の限界から目をそらさずに、生きていくことが成長するということだと。



「これだ!」と思いました。たぶんどちらのケースも、理想通りに行かない自分に歯がゆさを感じたところから始まっていました。理想通りになんていかないのが当たり前だと気づかせてあげれば救える人はいるかもしれないですね。自殺まではいかなくても、自暴自棄になって、引きこもってしまったりということも防げる言葉かもしれません。そういう壁(自分の限界)にぶち当たるのは、大人になる一歩手前辺りが多いと思うので、高校生ぐらいまでに、そのことを知ることができそうな、この本はすばらしいですね。



良い本のご紹介ありがとうございました。
返信する
usagi-kaniさん (VIVA)
2006-09-17 11:30:09
お久しぶりです。そうですか。思い出していただけて良かったです。もし読まれましたら、お知らせいただけるとありがたいです。これからもよろしくお願いします。
返信する
milestaさん (VIVA)
2006-09-17 11:40:24
私の直接の知り合いというわけではありませんが、やはり自殺の話しは時々聞きます。塾に来ている生徒から聞くこともあります。生徒やご父母の受ける衝撃ははかりしれないほど大きいんですね。



おっしゃるように、“自分の限界”をしっかり認識してこそ、大人であると思いますし、その限界まで努力しようという意欲もわくというものでしょう。



こんなに豊かで、平和な日本に自殺が多いというのは、子どもたちだけじゃなく、大人も考えなきゃいけないですね。
返信する
「哲学」の新しい響き (湖の騎士)
2006-09-17 11:52:06
VIVAさん お久しぶりです。私は自分の本の校正に追いまくられていました。その本がついに出来上がりました。『スヌーピーの処世哲学』(海竜社)です。定価もここにご紹介されている本とまったく同じ。タイトルの「哲学」も共通しています。人々はなぜ「死」を選ぶのかについて我ながら見方が足りないと自覚しています。VIVAさんが紹介されたこの本は、私の視野を広げてくれるでしょう。早速入手したいと思います。私の本はまた違うアプローチですが、生きる意欲が湧いてくる本には仕上がったつもりです。
返信する
こちらで、、、 (tiakujo)
2006-09-17 12:02:54
こちらで湖の騎士さまを見つけて、奇声をあげてます。今、湖の騎士さまの「スヌーピーの処世哲学」記事を読んできたところです。

VIVAさまのこの本も「哲学」で、私も読まなくてはならないと思いました。まんがで、私にも読めそうだし、、、
返信する
相原コージ (HIRO。)
2006-09-17 17:01:16
相原コージってあの相原コージ?ですか。「コージ苑」とか「文化人類ギャグ」とか書いていた絵の下手な漫画家ですよね。すごく面白くて確か捨ててなければ家のどこかにあるはず・・・。最近、名前を聞いてないのでいなくなったかと思ってましたが。試験がおわったら是非読みたいです。風邪、ほぼ治りました。
返信する
廣淵先生 (VIVA)
2006-09-17 17:23:58
ごぶさたばかりですみません。朝日新聞に出ていた宣伝見ましたよ。うれしいです。こうして拙ブログにコメントくださる方の著書がど~んと新聞に出ているのは。



非常に楽しみにしております。
返信する
tiakujoさん (VIVA)
2006-09-17 17:29:11
そうなんですか。今、私も先生のブログに立ち寄ってまいりました。本書が、tiakujoさんに『ミラクル』ほどのインパクトがあるかどうかは、自信はないのですが、良い本だと思いますので、よろしければご覧になってみてください。
返信する
HIRO。さん (VIVA)
2006-09-17 17:33:54
あ~あ、ばらしちゃった(笑)。そうですよ、あの相原コージです。絵が下手な漫画家って…、救いようないですね(笑)。それを割り引いても、良い本だと思いますので、試験が終わったら、ぜひお読みくださいね。



油断せず、お体お大事にしてくださいね。
返信する