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「タロウとマジダとジロウ」9

2017年04月11日 | T.B.2001年

ジロウはタロウの事をよく知らない。

子どもにとっては、
一回り歳が離れている人なんて
そんな物。

大人に聞いて知っているのは
どこか遠くの村で暮らしていた、
病院のタカシ先生の親戚だという。
それなら南一族……だと思う。
南一族の証である頬の入れ墨もある。

ここ1年の間で南一族に戻ってきた。

暮らしていたと言う遠くの村で
何かあった、かもしれない。

気がつけば居た。

気になっている子が
毎日のように通い詰めていると聞いて
様子を見に行った。

単純に遊びに行っているだけだが
何とも頼りなさそうな
へらへらした男だ、と思った。

マジダ、こいつのどこが良いの?

と、それが未だに疑問。


「タロウ!!」

小屋へ入る第一歩は
いつもより少し勇気が要る。

それでも怒りの方が勝っているジロウは
ずかずかとタロウの小屋に入る。

「おい、危ないから」
「仕事なんてしてないくせに」
「何言ってるんだ、
 今は忙しいから、しばらくは」
「知るか、出かけるんだよ」

引っ張ろうとするジロウの手を
タロウは簡単にふりほどく。

「昨日も言っただろう俺は」
「俺に構うな、
 居なくなるからって?」
「……カイセイ」

タロウが低めの声でジロウを呼ぶ。
ここに来て本名で。

ジロウだって知っている。
頼りない様に見えて、
タロウはきちんと【大人】だ。

怒っている。
でも、それはジロウも同じ。

ジロウがタロウのすねを蹴る、が
自然に避けられる。

「こら、何やって」

分かってる、
最初に会ったときだって、
避けられたのを避けなかった。

だから、ジロウは悔しかった。

けど、

「もっと周り見てみろよ!!」

最初っから避けられるつもりで
ジロウは逆の脛を
思いっきり蹴り上げる。

「いっつ!!」

思ってもいなかった動きに
タロウは思わず屈み込む。
ジロウは背後に回り、背中を思いっきり押す。

ただ、それだけ、
タロウはふらついて前に2.3歩よろめく。
入り口付近で揉めていたせいで
タロウは小屋から出る形になる。

「女、泣かすな、バカ!!」

そんなジロウの怒鳴り声に
タロウは思わず前を見る。

「………」

マジダがそこにいる。


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