数日後、彼女は再度、墓地へと向かう。
もちろん、父親には内緒だ。
墓地の入り口に着くと、彼女は目を見開く。
この前の彼がいる。
「驚いた」
彼女が云う。
「何が?」
「また、会えたから」
彼は首を傾げる。
「君のお母さんのお墓、見つけると約束したから」
「……ありがとう」
彼は頷く。
「優しいのね」
彼女は笑う。
空を見る。
父親に気付かれる前に、また、自分の屋敷に戻らなくてはいけない。
そんなに、時間はない。
「急いで探そうか?」
「うん」
彼の言葉に、彼女が頷く。
彼と彼女は、墓地の少し奥へと向かう。
「そのお墓、立派ね」
彼の目の前のお墓を見て、彼女が云う。
「この形は、高位家系の人だね」
「ひょっとして、母様の?」
「いや、違う」
「ずっと、昔の人かしら」
彼女が云う。
「私とも血がつながってるのかな」
「たぶんね」
「なんて書いてある?」
「え?」
彼女が云う。
「そのお墓の人の、名まえ」
「名まえ?」
思わず、彼は焦る。
「墓石に掘ってあるでしょう?」
彼女が訊く。
「そのお墓の人の名まえは?」
彼は、彼女を見る。
息を吐く。
墓石にふれる。
掘ってあるであろう名まえを、指でなぞる。
「……?」
彼女は、彼をのぞき込む。
「何をやっているの?」
彼女が訊く。
「旧すぎて、読めない?」
彼が、首を振る。
云う。
「光院、て、書いてある」
「ふぅん?」
彼女が云う。
「知らない名まえだわ」
「本当に?」
「うん。でも、確かに高位家系系列の名まえね」
「今の宗主の、お兄さんだよ」
「そうなの?」
「そう」
「知らない」
彼女が云う。
「母様のお墓も、きっと、こんな形なんだわ」
彼と彼女は、墓を探し続ける。
日が少し、傾いてくる。
彼女は顔を上げ、彼を見る。
云う。
「見つからないね」
「そうだね」
「……ごめんなさい」
「え?」
彼女が云う。
「よく考えたら、こんなことに付き合ってもらって……」
「別に、いいよ?」
彼女は、空を見る。
「時間?」
彼の言葉に、彼女は頷く。
「今日も、ありがとう」
「うん」
「また、会える?」
「うん」
「絶対?」
「うん」
「……ありがとう」
彼女は、はにかむ。
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