しかし、スタートトゥデイとメルカリでは大きく異なる点があります。スタートトゥデイは利益を出しているということです。営業利益率は30%を超え、超優良企業と言えます。
大幅な利益が出ているスタートトゥデイと赤字企業のメルカリを分ける決定的な差は、やはり広告宣伝費にあります。メルカリが前期141億円の広告宣伝費をかけたのに対し、スタートトゥデイは15億円しかかけていません。売上高対比では64%対1.5%という大きな開きとなります。どちらもスマホアプリで商品を売買する形態にもかかわらず、どうしてこれほどの差が生まれるのでしょうか。それは、競合環境が大きく影響してきます。
スタートトゥデイはアパレルのショッピングサイトです。アパレルのインターネット通販としては、Amazonや楽天などの大手を含む他の追随を許しません。その要因の1つは、早くから著名ブランドを囲い込んだことがあると考えられます。
一方のメルカリには強力な競争相手がいます。Yahoo!の「ヤフオク!」はインターネットによる個人間売買の先駆けであり、メルカリへの対抗策も次々に打ち出しています。また、楽天の「ラクマ」は、メルカリなら10%かかる販売手数料を3.5%に抑え、顧客の奪い合いを行っています。
Yahoo!と楽天はいずれも資金力豊富な巨大企業ですから、マーケットシェアを取るためには採算度外視で手数料の値下げや広告費の投下を行うことができます。このようなサービスは1社総取りになることも多いため、メルカリはシェアを取られないために広告宣伝を続けなければならないのです。
スマートフォンの普及による個人間売買市場の拡大を考えると、メルカリの売上高は大きな成長余地があるでしょう。しかし、その市場は競合がひしめく「レッドオーシャン」なのです。
もちろん、このまま赤字が続くということはないと思います。売上高が伸びればやがて費用を上回るようになるでしょう。しかし、それで利益が出るとわかると競合は攻勢を強めるでしょうから、再び広告宣伝費により利益が削られます。
それでもメルカリが安定した利益を出し続けるためには、競合に突破されない「経済の堀」を確立しなければなりません。
現在は「使いやすさ」「匿名配送」を強みとして謳っていますが、これらは少し研究すればすぐに真似できてしまうものでしょう。スタートトゥデイを手本とするならば、先駆者の強みを生かさなければなりません。
1つの方向性として考えられるのが、出品者の囲い込みです。特に大口の出品者に対しては、他に移らなくて済むような優遇措置を取る必要があるでしょう。そうすれば、いくら他のサイトが広告を出しても、出品が少ないサービスからはユーザーは離れていきます。