2017年10月18日、スコットランドの沖合に建設された世界最大の海に浮かぶ風力発電施設「Hywind Scotland」が電力の供給を開始しました。ここで用いられる風車は翼長75メートルの羽根を3枚組み合わせた直径154メートルという巨大なもので、1基あたり6メガワットの出力を持つ風車を5基設置することで約2万世帯に電力を供給する能力を備えています。
World’s first floating wind farm has started production - World’s first floating wind farm has started production - statoil.com
https://www.statoil.com/en/news/worlds-first-floating-wind-farm-started-production.html
この風車を設置したのはノルウェーの石油会社「スタトイル」(Statoil)で、5基の風車がスコットランド北東部・アバディーンシャー州にある町「ピーターヘッド」から25km沖に進んだ洋上に設置されています。ここで作り出された電力は、ノルウェーへと送られるのかと思いきや、実際には海底ケーブルを経由してピーターヘッドの町へと送られ、スコットランド内の電力網に送電されることとなっています。
このHywind Scotlandが稼働を開始してからおよそ3カ月で予想を超えるパフォーマンスを見せたとスタトイルが発表しています。スタトイルによると、強風が吹く冬の時期は、海底に固定するタイプの洋上風力発電の設備利用率は40%~60%が一般的とのことですが、2017年11月から2018年1月まで3カ月のHywind Scotlandの設備利用率は約65%と、一般的な数値を上回る結果が得られたそう。これは3カ月を90日として計算すると、30(MW)×24(時間)×90×0.65=4万2120MWhとなり、3カ月で約42GWh時間の発電を行ったということを意味します。
2017年10月には「オフィーリア」と呼ばれる大型ハリケーンがスコットランドを直撃、時速125キロメートルという強風を記録しました。さらに、2017年12月初めにはキャロラインと呼ばれる嵐がスコットランドを直撃し、時速160キロメートルを超える突風と8.2メートルを越える高波が記録されました。
Hywind Scotlandは、天候がきわめて厳しい時には安全性の問題からタービンの稼働を停止させますが、ある程度天候が落ちついてくると自動的に再稼働を始めるように作られています。さらに、タービンの羽の角度を風に合わせて調節し、大きな風や波に対してもなるべく受ける影響が小さくなるように稼働します。これによって、HyWind Scotlandは二度の嵐を乗り越え、かつ沖合の風をなるべく無駄にしないように発電できたというわけです。
スタトイルのエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントであるIrene Rummelhoff氏は「世界中の洋上風力資源の80%以上が、海底固定型の風力発電所を建設できないような深い海の上にあります。アジアやアメリカ西海岸の洋上には大きな可能性が眠っています。私たちはHywindが新たに活躍する機会を模索しています」と述べています。スタトイルとマスダールは、Hywind型の浮体式洋上風力発電所のコストを、2030年までに1メガワット時間当たり40~60ユーロ(約5200~7800円)に削減しようと考えているとのことで、洋上の風力資源は太陽光・地熱・潮力など他の再生可能エネルギーとも十分に渡り合えると主張しています。