■源氏物語「大沢本」 標準的な写本「青表紙本」との違い2000字、異なる展開も
源氏物語の写本の一つで、昨年約70年ぶりに全54帖の存在が確認された「大沢本」(鎌倉-室町時代)に、標準的な写本「青表紙本」の本文と大きく異なる展開の内容が含まれていることが、大阪大名誉教授・国文学研究資料館(東京都立川市)伊井春樹館長の研究で分かった。異なる部分は約2千字分。
藤原定家が編纂した青表紙本の本文と大きく違う部分が見つかったのは、主人公光源氏の死後の物語「宇治十帖」の中の「蜻蛉巻」(かげろうのまき)。 薫と匂宮という2人の男性との三角関係に悩んでいた美女・浮舟が宇治で行方不明になってしまった後のくだりだ。
青表紙本では、匂宮に命じられた従者の時方が夕方都を出て、雨が上がったころ宇治に着く。やがて時方が帰った後に、浮舟の母君が葬儀を行うという展開。だが大沢本では、先に雨の中で母君が宇治に着き、葬儀を計画。小降りになったころに時方が着くという展開に変わっている。
大沢本は主に、鎌倉―南北朝時代に作られたとされるが、蜻蛉巻は室町時代に補充して作られたとされる。
作者の紫式部による自筆本は現存していない。代わりに書写され、少しずつ内容が変化した様々な写本が伝承。鎌倉時代、藤原定家はそれらを整理、以後、研究が途切れることなく続いてきた。
大沢本はこのほか、前半の「花宴巻」の巻末にも源氏の心境をつづった部分があるなど、標準本と違う部分が数多く見つかっている。
[共同通信、朝日新聞]
■源氏物語 外伝「巣守」か 断簡を発見
現代に伝えられる「源氏物語」54帖には存在せず、古い注釈書などに巻名だけが残る「巣守巻」とみられる写本の一部が見つかった。これは源氏物語の後半「宇治十帖」の続編を紫式部の死後に別人が書いたとされてきたもの。これまで実態がわからなかった幻の写本で、源氏物語の変遷を探る貴重な資料となりそうだ。
源氏物語研究で知られる池田和臣・中央大教授(中古文学)が古書店から入手した15・5cm四方の古写本の断簡2枚が、筆跡や紙質の鑑定により鎌倉末期から南北朝時代のものと判明した。源氏物語には現在知られている54帖のほかに、平安末期の故実書「白造紙」(はくぞうし)に「巣守」「桜人(さくひと)」「狭蓆(さむしろ)」などと巻名目録に記されており、人物紹介などを記した「源氏物語古系図」にも「巣守」の名前が挙げられている。
池田教授が1葉目を入手したのは、15年ほど前。屏風に張られた多くの断簡の中から見つけた。さらに昨年、古美術品市場に出た手鑑(てかがみ)(断簡を集めたアルバム)から、もう1葉を発見。筆跡や紙の特徴により、同じ写本から切られた断簡だと判断した。
さまざまな資料を総合すると、「巣守帖」は、薫の誠実さにひかれた「巣守の君」(光源氏の甥・源三位の娘で中君の姉)が若君を産み、求愛する匂宮の執着から逃れようと山中に隠れてひっそりと暮らす内容。
見つかった断簡には、山に沈む月を見ながら隠とん生活を送る「巣守の君」の心情を思わせる、現存の資料には見られない和歌が記されていた。
「うき世をも かけはなれなは いる月は 山こそついの すみかなるらめ」
執筆年代や人物の関係などから、散逸した写本にほぼ間違いないと結論づけた。
この写本については、21日に東京・実践女子大で開かれるシンポジウムで発表される。
[参考:朝日新聞、毎日新聞、読売新聞]
昨年発見 源氏物語写本「大沢本」標準本と異なる展開も(産経新聞) - goo ニュース
源氏物語の写本に新展開部分 80年ぶり確認の「大沢本」(共同通信) - goo ニュース
源氏物語“続編”見つかる 「巣守帖」写本の一部か(共同通信) - goo ニュース
源氏物語、幻の続編「巣守帖」か…写本確認(読売新聞) - goo ニュース
過去のニュース・情報
2008.7.22源氏物語「大沢本」鎌倉中期の写本全54帖 70年ぶり確認
源氏物語の写本の一つで、昨年約70年ぶりに全54帖の存在が確認された「大沢本」(鎌倉-室町時代)に、標準的な写本「青表紙本」の本文と大きく異なる展開の内容が含まれていることが、大阪大名誉教授・国文学研究資料館(東京都立川市)伊井春樹館長の研究で分かった。異なる部分は約2千字分。
藤原定家が編纂した青表紙本の本文と大きく違う部分が見つかったのは、主人公光源氏の死後の物語「宇治十帖」の中の「蜻蛉巻」(かげろうのまき)。 薫と匂宮という2人の男性との三角関係に悩んでいた美女・浮舟が宇治で行方不明になってしまった後のくだりだ。
青表紙本では、匂宮に命じられた従者の時方が夕方都を出て、雨が上がったころ宇治に着く。やがて時方が帰った後に、浮舟の母君が葬儀を行うという展開。だが大沢本では、先に雨の中で母君が宇治に着き、葬儀を計画。小降りになったころに時方が着くという展開に変わっている。
大沢本は主に、鎌倉―南北朝時代に作られたとされるが、蜻蛉巻は室町時代に補充して作られたとされる。
作者の紫式部による自筆本は現存していない。代わりに書写され、少しずつ内容が変化した様々な写本が伝承。鎌倉時代、藤原定家はそれらを整理、以後、研究が途切れることなく続いてきた。
大沢本はこのほか、前半の「花宴巻」の巻末にも源氏の心境をつづった部分があるなど、標準本と違う部分が数多く見つかっている。
[共同通信、朝日新聞]
■源氏物語 外伝「巣守」か 断簡を発見
現代に伝えられる「源氏物語」54帖には存在せず、古い注釈書などに巻名だけが残る「巣守巻」とみられる写本の一部が見つかった。これは源氏物語の後半「宇治十帖」の続編を紫式部の死後に別人が書いたとされてきたもの。これまで実態がわからなかった幻の写本で、源氏物語の変遷を探る貴重な資料となりそうだ。
源氏物語研究で知られる池田和臣・中央大教授(中古文学)が古書店から入手した15・5cm四方の古写本の断簡2枚が、筆跡や紙質の鑑定により鎌倉末期から南北朝時代のものと判明した。源氏物語には現在知られている54帖のほかに、平安末期の故実書「白造紙」(はくぞうし)に「巣守」「桜人(さくひと)」「狭蓆(さむしろ)」などと巻名目録に記されており、人物紹介などを記した「源氏物語古系図」にも「巣守」の名前が挙げられている。
池田教授が1葉目を入手したのは、15年ほど前。屏風に張られた多くの断簡の中から見つけた。さらに昨年、古美術品市場に出た手鑑(てかがみ)(断簡を集めたアルバム)から、もう1葉を発見。筆跡や紙の特徴により、同じ写本から切られた断簡だと判断した。
さまざまな資料を総合すると、「巣守帖」は、薫の誠実さにひかれた「巣守の君」(光源氏の甥・源三位の娘で中君の姉)が若君を産み、求愛する匂宮の執着から逃れようと山中に隠れてひっそりと暮らす内容。
見つかった断簡には、山に沈む月を見ながら隠とん生活を送る「巣守の君」の心情を思わせる、現存の資料には見られない和歌が記されていた。
「うき世をも かけはなれなは いる月は 山こそついの すみかなるらめ」
執筆年代や人物の関係などから、散逸した写本にほぼ間違いないと結論づけた。
この写本については、21日に東京・実践女子大で開かれるシンポジウムで発表される。
[参考:朝日新聞、毎日新聞、読売新聞]
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