カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

十兵衛

2014年01月10日 | 京都
「二兎も三兎も、追わんが如し。」

「ちゃんどん」、其の響きを耳にして連想するであろうことは、おそらく皆同じ、誰しも少々想像を巡らせてみれば、容易に其の由来が思い浮かぶ、ちょっと鈍くさいネーミングのことは、さて置き、其の一皿の饂飩というのは、実際、侮り、軽視してしまう訳には行かない、此れでもかと言わんばかりに充実の内容である。

判り易く、世間に流布する類で言えば、其れは単なる餡かけ饂飩、そう言ってしまって構わない内容なのであろう。だがしかし、其の「ちゃんどん」と称する饂飩が唯一無二である理由というのは、確かに、其処に在る。大きな器にたっぷり、なみなみと装われた饂飩と餡、其れだけで十二分にほっこりさせる其の出で立ちにもかかわらず、さらに其の中にバリエーション豊かな三種のトッピングを施すことも出来るという。あまりに贅沢な其の様式は、果たしてどれ程の食いしん坊が考案したものなのだろうか、加減というものを知らない欲張り具合である。

だがしかし、不思議と此れが、其の量にもかかわらず、食べ切ってしまう旨さなのである。正直、見た目に美しいとは言い難い、しかし、一見して其の旨さは感じ取れる。トッピングは蕩ける餡の中、其の風味を散らして渾然一体となり、奥行きのあるひとつの出汁と化す。当初、食い合わせの悪さを思わせる、バターや生タラコでさえ、実際出汁の一部として素晴らしいハーモニーを奏でている。其れは本来、あまりに大胆な試みではあるけれど、其れでも現実に結果として成功しているのである。

そして肝心の饂飩そのものなのであるが、温かい「ちゃんどん」における其の在り方は、所謂、「京うどん」として、其れなりの柔らかさ、そして優しさを感じさせる食感であったのが、驚くなかれ、「ぶっかけ」で味わった、其の噛み応えというのは、およそ此れまで日本全国津々浦々で戴いた、どの剛麺と比較しても引けをとらない、其れ程の粘り腰なのである。細麺であるが故、もちもちした食感という表現は、少々的外れであるのだろうけれども、まるで上質な餅を戴いているかのような、しっとりとした、其れでいて実際のところ粘ついたりもしない、品の良さと強さを兼ね備えた、稀有な饂飩なのである。

事もあろうか洋館風であるという店舗の外観、そして土足厳禁であるという、其の内装の思い掛けない奇抜さによって、うどん屋らしからぬと喧伝される此の御店ではあるけれど、やはり此の饂飩の上出来を目の当たりにしてしまうと、そんなことにいちいち難癖つける気さえ失せてしまう、其れ程に旨い、完成度の高い饂飩であった。

そして実は此方の御店、洋菓子もそこそこに高級なものを提供している、所謂、カフェでもあるのだった。好いこと尽くめであるとはいえ、何と欲張りなことであろうか。

十兵衛うどん / 松尾駅上桂駅嵐山駅(阪急)
昼総合点★★★★ 4.0



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