「お気遣いなく。」
その料理人が誠実であればあるほどに、料理に現れるのは人柄で、そこに傷つき易い繊細な部分が見え隠れする、そんな印象があったりすると、どうしても気を遣って、こちらが遠慮してしまう。
自然、見栄えの好い細かな料理に、不器用にナイフを入れることも、心なし躊躇われるし、たとえ、残すという選択肢は自分の中にはなかったとしても、何があっても絶対に残してはいけないという強迫観念に、内心、囚われることは、免れ得ない。
そしてそれは、当然、不快なことであるが、しかし勿論、独り善がりな妄想による、自業自得でもある。
少々予約が取り難く、個人的な都合としては、取り立てて便利な立地でもない、そんな御店に、何度か伺いながらも、その事について語るのは気が引けるような気がしていたのは、やはりそういうことだったのであろうかと、初耳の、鈍感力という言葉を、最近、聞かされ、思い至った。
鈍感であれれば、遠慮しなくて済む、そうなのだ、何であれ。
人であれ、料理であれ、繊細さが過ぎると、付き合い難い、それは、その繊細さを尊重したいと思うのならば、尚更のこと。
好ましくも侵害しがちなその領域には、おそらくは、近づかないのが無難だと、関わりを持つのを避けてしまう、そんなことを続けている内に、当初の好ましさは、反射的な疎ましさに変化して行き、何ひとつ、得るものすらなくなる、それは、まさに本末転倒である。
この御店の正直な誠実さは、料金にも現れていて、何かにつけ、小まめに追加料金が発生する。
つまり、最低限のサービスを望むのであれば、非常に安く、所々、和のテイストすら感じさせる、そんな手の込んだ繊細な料理を戴けるということでもある。
基本のセットを、可能な限り安い価格で提供しているのだから、それ以外に要る物がある場合は、残念ながら、無償では無理であると、正直に申告していると、そういうことであろう。
おそらくは御夫婦であろう、この御店のおふたりは、非常に腰も低く、客に掛ける言葉も少々遠慮がちで、それにつけ込む、むやみに押しの強い客など来店しないこと、同じく客の立場であるこちらが、天にお願いしたくなるほどである。
避けようのない、無神経にあれこれと要求する、そんなような素振りの厚かましい客になど、どう対応するのであろうかと想像させる、その線の細さは、そんな場面を思うだけで、痛ましい。
例えば、出町柳のイタリアンのように、同じく繊細な料理でありながらも、薄暗いイメージ、その圧迫感もなく、物理的にも非常に開かれた空間であることを印象付けるこの御店、それ故に、むしろ、剥き出しになったその繊細さが、少々痛々しい。
だから、気を遣わず、遠慮なく、ざっくばらんに美味しいものが食べたい、そんな時には、ごく近所にあるピザの御店に行こうかという、比較的、気楽な選択肢を採用してしまう、そんなことも少なくないのが、正直なところではある。
その料理人が誠実であればあるほどに、料理に現れるのは人柄で、そこに傷つき易い繊細な部分が見え隠れする、そんな印象があったりすると、どうしても気を遣って、こちらが遠慮してしまう。
自然、見栄えの好い細かな料理に、不器用にナイフを入れることも、心なし躊躇われるし、たとえ、残すという選択肢は自分の中にはなかったとしても、何があっても絶対に残してはいけないという強迫観念に、内心、囚われることは、免れ得ない。
そしてそれは、当然、不快なことであるが、しかし勿論、独り善がりな妄想による、自業自得でもある。
少々予約が取り難く、個人的な都合としては、取り立てて便利な立地でもない、そんな御店に、何度か伺いながらも、その事について語るのは気が引けるような気がしていたのは、やはりそういうことだったのであろうかと、初耳の、鈍感力という言葉を、最近、聞かされ、思い至った。
鈍感であれれば、遠慮しなくて済む、そうなのだ、何であれ。
人であれ、料理であれ、繊細さが過ぎると、付き合い難い、それは、その繊細さを尊重したいと思うのならば、尚更のこと。
好ましくも侵害しがちなその領域には、おそらくは、近づかないのが無難だと、関わりを持つのを避けてしまう、そんなことを続けている内に、当初の好ましさは、反射的な疎ましさに変化して行き、何ひとつ、得るものすらなくなる、それは、まさに本末転倒である。
この御店の正直な誠実さは、料金にも現れていて、何かにつけ、小まめに追加料金が発生する。
つまり、最低限のサービスを望むのであれば、非常に安く、所々、和のテイストすら感じさせる、そんな手の込んだ繊細な料理を戴けるということでもある。
基本のセットを、可能な限り安い価格で提供しているのだから、それ以外に要る物がある場合は、残念ながら、無償では無理であると、正直に申告していると、そういうことであろう。
おそらくは御夫婦であろう、この御店のおふたりは、非常に腰も低く、客に掛ける言葉も少々遠慮がちで、それにつけ込む、むやみに押しの強い客など来店しないこと、同じく客の立場であるこちらが、天にお願いしたくなるほどである。
避けようのない、無神経にあれこれと要求する、そんなような素振りの厚かましい客になど、どう対応するのであろうかと想像させる、その線の細さは、そんな場面を思うだけで、痛ましい。
例えば、出町柳のイタリアンのように、同じく繊細な料理でありながらも、薄暗いイメージ、その圧迫感もなく、物理的にも非常に開かれた空間であることを印象付けるこの御店、それ故に、むしろ、剥き出しになったその繊細さが、少々痛々しい。
だから、気を遣わず、遠慮なく、ざっくばらんに美味しいものが食べたい、そんな時には、ごく近所にあるピザの御店に行こうかという、比較的、気楽な選択肢を採用してしまう、そんなことも少なくないのが、正直なところではある。