「簡にして、素。」
己の求めているものが其処に簡潔に凝縮されてさえいれば、むやみな華やかさや奇を衒った捻りなどあえて眼にすることなどなくとも、およそ人は満足できるものである。
むしろ、己の本当に求めていたもの、其の本質というのが何なのか、何とはなしに期待し、予想していた以上に虚飾を削ぎ落とされた其の質素な顕れによってあえて気付かされ、欲張り過ぎていた己に内心恥じ入ることになる、そのようなことも、時としてある、今回が実は其のような様相であった、此の、まつおえんげいという園芸店の一角にある小さなカフェで、こじんまりと提供された料理は、まさにそんな気のする食べ物であったのだ。
其の時、既にモーニング・セットの提供される時刻は少々過ぎてしまってはいたのだけれど、何となく、気分は未だモーニングであった故、気紛れに、普段はあまり注文することのない類の料理、オムレツ・セットなるものを注文してみたのであるけれど、其の質実さというのが、思いの外、秀逸であった。
カットした厚切りの食パンに、満遍なくきつね色の焦げ目をつけ、みじん切りの玉葱が少々ミックスされたプレーンなオムレツと、そして、生った其のままのレタスの形を思わせる瑞々しいサラダが、きっちりと隙間を埋めてワン・プレートに配置され、運ばれてくる、ただ其れだけのものではあるのだけれど、其れが何処か完成形というものを思わせる、そんな風情を、先ず視覚的に感じさせられるのだ。
其のオムレツには、愛嬌たっぷりに赤いケチャップで音符が描かれており、其の無邪気さというのが、作った人の如何にも素直な心根を現しているかのようで、たとえばそんな料理に、まだ何か足りないなどと文句の言いたくなるような人物など、果たして此の世にいるのだろうか、もしそんな卑しい心持ちがしたのなら、其れは勿論、問題は其の心の内にあるのだと己を省みるしかない、此の料理にも、此の店を取り囲む、周りで栽培された花や木にも、どのような他意も、おそらくありはしないのだから。
己の求めているものが其処に簡潔に凝縮されてさえいれば、むやみな華やかさや奇を衒った捻りなどあえて眼にすることなどなくとも、およそ人は満足できるものである。
むしろ、己の本当に求めていたもの、其の本質というのが何なのか、何とはなしに期待し、予想していた以上に虚飾を削ぎ落とされた其の質素な顕れによってあえて気付かされ、欲張り過ぎていた己に内心恥じ入ることになる、そのようなことも、時としてある、今回が実は其のような様相であった、此の、まつおえんげいという園芸店の一角にある小さなカフェで、こじんまりと提供された料理は、まさにそんな気のする食べ物であったのだ。
其の時、既にモーニング・セットの提供される時刻は少々過ぎてしまってはいたのだけれど、何となく、気分は未だモーニングであった故、気紛れに、普段はあまり注文することのない類の料理、オムレツ・セットなるものを注文してみたのであるけれど、其の質実さというのが、思いの外、秀逸であった。
カットした厚切りの食パンに、満遍なくきつね色の焦げ目をつけ、みじん切りの玉葱が少々ミックスされたプレーンなオムレツと、そして、生った其のままのレタスの形を思わせる瑞々しいサラダが、きっちりと隙間を埋めてワン・プレートに配置され、運ばれてくる、ただ其れだけのものではあるのだけれど、其れが何処か完成形というものを思わせる、そんな風情を、先ず視覚的に感じさせられるのだ。
其のオムレツには、愛嬌たっぷりに赤いケチャップで音符が描かれており、其の無邪気さというのが、作った人の如何にも素直な心根を現しているかのようで、たとえばそんな料理に、まだ何か足りないなどと文句の言いたくなるような人物など、果たして此の世にいるのだろうか、もしそんな卑しい心持ちがしたのなら、其れは勿論、問題は其の心の内にあるのだと己を省みるしかない、此の料理にも、此の店を取り囲む、周りで栽培された花や木にも、どのような他意も、おそらくありはしないのだから。