カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

銀そば せいいち

2015年07月17日 | 京都
「田舎の、女の子。」

そして、目前に立ちはだかる其の石組みの段差というのは、あえて来る者に問いかける。わざわざこんな処まで、本当にこんな変わり者のわたしに会うためだけにやって来たのかと。

オシャレなカフェでいつか働いてみたかったという妻に、一度は自分の打った蕎麦をぜひ人に食べさせてみたかったという夫が合わせたのか、とにかく蕎麦屋を開きたいという夫に、カフェのような雰囲気でならばと、妻が無茶を通したのか、いずれにせよ、田園の続く幹線道路から細い農道を折れ曲がり、とても飲食店があるとは思えない其の雰囲気の中、ふと気が付くと、其処に小さく看板の掲げられた、蕎麦屋らしからぬ其の蕎麦屋が立ち現れる。

其れが古民家式や民芸調の建物だというのなら、そんな蕎麦屋、むしろ今時めずらしくも何ともない。だが此処は、一見、旧い田舎の民家でありながら、その実、内装は隙のないクールな雰囲気漂うカフェなのである。何と意表を衝かれる在り方なのだろうか。

だがしかし、此れが意外なことに結構流行っているというのだから、なお驚かされる。常連客の傍若無人な老人たちから、デートで来たのであろう若いカップルまで、ポリシーの伺えるような、実はそうでもないような、此のギャップのある緩さに、多くの客が群がってくる。程々に見目麗しく、しかし其の儚い美意識を人には求めない、そんな類の存在が、むやみに人に好かれぬ訳はない。

さらには、家族連れは勿論、熟年夫婦まで其の店内にはいるのだけれど、如何せん、オペレーションがまったくなっていない。オーダーの後先は勿論、やっと空いた食卓への誘導もかなり適当で、やんわりとながら苦情が出ているのが其処此処で目に付く、其れが非常に残念ではある。

やって来た蕎麦はというと、透明感のある水気の多いもので、瑞々しいと言って言えなくないのではあるけれど、人によっては張りがないと述べる者もきっとあることだろう。冷はそこそこ好いけれど、温は正直なところ人にお勧め出来るとは言い難く、蕎麦以外のものを戴くと、良くも悪くも家庭料理的雰囲気が強く伺える。

詰まる処、やはり突出しているのは其のクールなカフェ的内装であって、ふと、意外にセンスの良いワンピースを着た、しかし内面的にはまだまだ朴訥なばかりの田舎の少女を思わせる、そんな悪くない風情の、此処は蕎麦屋なのである。

銀そば せいいちそば(蕎麦) / 亀岡)
昼総合点★★★☆☆ 3.5



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