カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

ガトー・ド・ボワ

2009年08月06日 | 奈良
「世の深さを知るオトナのためのケーキ。」

奈良は西大寺ガトー・ド・ボワへ行って参りました。
駅の裏側へ回るとすぐに見つかるそのお店。
線路を渡った狭い路地にありますが、意外とゆとりのあるお店のつくりです。
店内とは別に、外にオープンカフェのスペースもあり、さすがに暑くて誰もくつろいではいませんでしたが、こういうイメージ作りが、お店の指針をよく表していると思えます。
もちろんケーキあってのことではありますが、こういうお店の雰囲気にそそられて、また県外からでもわざわざ行こうかという気にさせられるというものです。

入ってすぐのショーウィンドーには、見るからに上品なケーキがずらりと並んでいます。
お目当ての「ギャラクシー」は、入店した当初、すでに残り2個だったので急いで注文したのですが、帰りに覗いてみると、再びトレイに満杯になっていました。

非常に親切で丁寧で若くかわいい店員さんに、店内でお召し上がりであることをご了承していただき、席が空くまで少々お時間お待ちさせていただいている間に、店内のカフェスペースから満足気に出てきた二人連れは、何と若い男子のカップル!
しかも、さほどかわいいとかオシャレとかいうわけでもありません。
いや、もちろん本当のところ、彼らがそういう意味でのカップルかどうか、どこまでイっているのかは見当もつきません。
ただそう見えるというだけの主観的偏見であります。

そういえば、むかしインドに行った時、デリーの街中でやたら手をつないだ男同士のカップルがいるので、恐れを知らぬ我が妻がインド人のガイドであるグプタさんに、あれはどういうことなのか?と訊ねると、心もち目を逸らしつつ、しかしアッサリと「仲良しです」と言われ、「そうですか・・・」と言うしかなかったことを思い出します。
ともかく、男独りで来ることも憚られる風情のこのような場所に、怯むことなく二人連れで来ることができるのだから、素直に恐れ入りました。
彼らの関係の深さはともかく、彼らを含むそのリベラルである姿、彼らのような若者が集う、上品なケーキ屋さんの存在というのは、むしろ昔ながらの女性陣に占領されていたイメージのある近寄り難いケーキ屋さんと比べ、何と素晴らしいことでしょう。

そんなことで、店内のカフェスペースに着席です。
やはり多いのは女性客、そして男女の組合せのカップル。
しかし、もう一組、若い男同士のカップル。
出来る限り何事にも自由な精神で挑もうという我が心意気に反して、やはり彼らの存在に対し、そこはかとない違和感を覚えてしまうのは、いやはやまだまだ修行が足らぬ!ということでしょう。

隣の席で一人読書をしながら甘味を味わいつつくつろいでいた、まさにケーキ屋さんに相応しい典型のような若い女の子、ほどなく満足気に退席です。
そして、その後に空いた席に案内されてきた彼、これがまたこの場所には似つかわしくないような、硬い感じの男子、お一人様。
まぁ、外見で甘いものを食べる資格があるかないか決まるわけでもない、と言うか、甘いものを食べるために資格が必要なわけでもないので、誰に意見される筋合いもないわけですが、やはり異様といえば異様な彼の雰囲気。
こちらのお店では、まずショーウィンドーで注文してから、席に案内されるわけですが、その彼の元に来たケーキの数、実に4個!
一個平均500円として2,000円!
それとお飲み物が500円程度で、合わせて推定最低金額2,500円です!
一人で!ケーキを!

それを食べながら、難しい顔をして、彼はメモを取るわけです。
その表情、これはまさに勉強中の顔ですな。
まさかケーキを楽しんでいる風ではありません。
もちろん周りの雰囲気や他の客の視線など、意に介してはいません。
まさか食べログやブログにレビューを書くためだけに、ここまで真剣に苦学する人などはいないと思われるので、苦い顔をした彼は、おそらくどこかのパティシエか何かなのでしょう。
世の中には、色んな状況で、色んな事情があって、それぞれにケーキを食べる人がいるのです。
このお店は、ケーキといえば甘くて楽しいものと決めてかかっているような、固定観念に縛られた人間にはもったいない、世の深さを知るオトナのためのケーキを提供する、素晴らしく自由なお店であります。

あと、確かにケーキ一個に660円という金額は、ハンパではありません。
たとえ近所に住んでいたとしても、そうそう購入できる代物ではないでしょう。
だがしかし、遠方からわざわざ奈良まで来た向きには、たとえこの価格であっても、その雰囲気と合わせて味わえれば、トータルとしては条件的にむしろ絶好と言ってもよい、ありがたみのある形なのではないでしょうか。