カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

シンセツ

2014年01月31日 | 京都
「惜し気なく、灼熱にて。」

火傷しそうなケーキというのは、初めてです。

とはいえ、其れがまさか、白い生クリームの載っている上品なケーキなのかというと、勿論のことそういう訳ではなく、そもそもが温かい類のケーキではある、ホット・ケーキ、パン・ケーキの類のもので、けれども、幾ら温かいことが望ましいとはいえ、其の熱さというのはあまりに尋常でなく、じゅうじゅうと音を立てる鉄板に載せられた其のパン・ケーキというのは、やはり此れまでの人生において初めて眼にする代物で、しかし熱いからといって、戴くのに長々と時間を掛けていては、おそらくは其の片面にのみ黒々と苦い焦げ目が付いてしまうこと請け合いの、其れ程までに容赦のない加熱っぷりなのです。

文字通り舌をも焦がす其の熱さは、同じく鉄板から直にコテで戴くお好み焼きなどと同様に、火傷しないタイミングで、しかし熱々のまま頬張ることにこそ、其処にあるべき喜びを享受し、満喫することが出来るという、正直、安全性においてはギリギリであると言わざるを得ない、そんなシステムなのでしょう。

たっぷりなみなみと注がれた、濃く熱く、苦い珈琲も、店内に大音量で流れる、ブラスを多用した陽気なバンド音楽も、所謂、メイン・ストリームのアメリカンというものとは、微妙にズレのある代物ではあるのだろうけれども、其れでもやはり、あらゆる面において行き過ぎた観のある此の店のポリシーというのは、まさにアメリカンと言うに相応しく、其れは惜し気もなく存分に其処彼処に発揮されている、此処は十二分にそう言い得ることの出来るカフェなのでありましょう。

シンセツカフェ / 河原町駅祇園四条駅京都市役所前駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5


レシピ

2014年01月19日 | 兵庫
「混じり気なし、の。」

坂の多い神戸北野の狭い路地、其の一角にある、急な階段を下りた閉じられた薄暗い空間に、其の二軒の店の扉はある。どちらも特に中の雰囲気が外から窺えるという訳でもなく、其の場所柄もあって、明るく開けた安心感を抱けるとは、ちょっと言い難い。

階段を下りた右側、手前にあるレシピの扉をくぐると、思いがけず、此れはバー其のもののような雰囲気である。随分と高く設定された座席に腰掛け、勿論のことテーブルとの位置関係は適切ではあるものの、足は直接床には届かない。だから正直、ちょっと落ち着かない。其れは、店内の照明が少々薄暗く、辺りが見通せないせいでもあるのだろう。

接客を担当する女性から受ける印象は、可もなく不可もなく、其れなりではあるのだろうけれども、テーブルの位置が床から高過ぎて、サーブする一皿々々が置き辛く、ちょっとこちらが気を使ってしまう、其のような気詰まりな瞬間が、無きにしも非ずである。

客を一段上に座らせ、先ずは機嫌をとるという其のスタイル、其のシステムはわからなくもないけれど、其れだけで、其の分、居心地が良くなる、そういう仕組みに乗せられる程に、無邪気にはなれない自分がいることを、むしろ其処から悟らされてしまう。

そんな在り方と比例して、随所に仕組みというものを意識させる其のフレンチは、とてもよく出来てはいるのだろうけれど、やはり正直、ちょっと肌に合わない。味に不足はないのだけれど、其の距離感に、何処か物足りなさを感じさせられてしまう、其のような結果となってしまった。

本来は、其の完成された美学を理解し、其の形式に浸ることを望む人こそ、この店を訪れるべき客なのであろう。此処にはもう、訪れる者がもたらす化学反応など、およそ起こる余地は残されてはいないのだ、きっと。

レシピフレンチ / 三宮駅(神戸市営)三ノ宮駅(JR)三宮駅(神戸新交通)
昼総合点★★★☆☆ 3.5


十兵衛

2014年01月10日 | 京都
「二兎も三兎も、追わんが如し。」

「ちゃんどん」、其の響きを耳にして連想するであろうことは、おそらく皆同じ、誰しも少々想像を巡らせてみれば、容易に其の由来が思い浮かぶ、ちょっと鈍くさいネーミングのことは、さて置き、其の一皿の饂飩というのは、実際、侮り、軽視してしまう訳には行かない、此れでもかと言わんばかりに充実の内容である。

判り易く、世間に流布する類で言えば、其れは単なる餡かけ饂飩、そう言ってしまって構わない内容なのであろう。だがしかし、其の「ちゃんどん」と称する饂飩が唯一無二である理由というのは、確かに、其処に在る。大きな器にたっぷり、なみなみと装われた饂飩と餡、其れだけで十二分にほっこりさせる其の出で立ちにもかかわらず、さらに其の中にバリエーション豊かな三種のトッピングを施すことも出来るという。あまりに贅沢な其の様式は、果たしてどれ程の食いしん坊が考案したものなのだろうか、加減というものを知らない欲張り具合である。

だがしかし、不思議と此れが、其の量にもかかわらず、食べ切ってしまう旨さなのである。正直、見た目に美しいとは言い難い、しかし、一見して其の旨さは感じ取れる。トッピングは蕩ける餡の中、其の風味を散らして渾然一体となり、奥行きのあるひとつの出汁と化す。当初、食い合わせの悪さを思わせる、バターや生タラコでさえ、実際出汁の一部として素晴らしいハーモニーを奏でている。其れは本来、あまりに大胆な試みではあるけれど、其れでも現実に結果として成功しているのである。

そして肝心の饂飩そのものなのであるが、温かい「ちゃんどん」における其の在り方は、所謂、「京うどん」として、其れなりの柔らかさ、そして優しさを感じさせる食感であったのが、驚くなかれ、「ぶっかけ」で味わった、其の噛み応えというのは、およそ此れまで日本全国津々浦々で戴いた、どの剛麺と比較しても引けをとらない、其れ程の粘り腰なのである。細麺であるが故、もちもちした食感という表現は、少々的外れであるのだろうけれども、まるで上質な餅を戴いているかのような、しっとりとした、其れでいて実際のところ粘ついたりもしない、品の良さと強さを兼ね備えた、稀有な饂飩なのである。

事もあろうか洋館風であるという店舗の外観、そして土足厳禁であるという、其の内装の思い掛けない奇抜さによって、うどん屋らしからぬと喧伝される此の御店ではあるけれど、やはり此の饂飩の上出来を目の当たりにしてしまうと、そんなことにいちいち難癖つける気さえ失せてしまう、其れ程に旨い、完成度の高い饂飩であった。

そして実は此方の御店、洋菓子もそこそこに高級なものを提供している、所謂、カフェでもあるのだった。好いこと尽くめであるとはいえ、何と欲張りなことであろうか。

十兵衛うどん / 松尾駅上桂駅嵐山駅(阪急)
昼総合点★★★★ 4.0


中華 こまめや

2014年01月04日 | 兵庫
「ハードボイルド・マーボードーフ。」

おそらくは、常連の客ばかりに取り囲まれている、およそアウェイであると言っていい其の状況で、ワレワレは、そうとは知らず術中に嵌り、顔面から噴き出す汗を拭っている。

どちらかと言わずとも、年配であると言っていい夫婦連れ、其のご婦人でさえ、ワレワレのテーブルに置かれている物と同じである筈のマーボードーフを、まったく平気な顔をして平らげておられる、此れはおかしい、そんな筈はない、この辛さは尋常ではない、もう間違いなく危険な部類の衝撃ではないか。

世間には、既にいい大人でありながらにして、辛い食べ物に鈍感であるというだけで、痛さに絶えられることを自慢げに誇る小学生のような人物も絶対数いるのではあるけれど、実際大方の人にとって、そんなことは何の自慢にもならない、己の味覚の鈍さを世に晒している、只、其れだけのことである。

当然のこと、ワレワレはそんな類の悪趣味とは無縁であるし、同じく眼前の老夫婦にしろ、其のような無謀な愚かさとは無縁であろうと思われるのである、然るに、やはり、其のマーボードーフと、此のマーボードーフの味付けというのは、別物であるとしか思えない、そうでなければ、此の花椒の効き具合に、正常な一般人的味覚が耐えられる訳はない、そう思える訳である。

どう見ても、初見であり、余所者であるワレワレは、或る意味やはり、道場破り的人物として、先ず認知されてしまったのであろう、そして、其のような輩に限って、あの店のマーボードーフは大して辛くなかった、期待外れだったと吹聴したりするものなのだ、確かに其れは、世間によくある、善くない話。

だが、ワレワレは、そんな輩とは違うのだ、只、美味しい中華料理が食べたかった、其れだけなのであって、何も極端な料理を味わいたかった訳ではない。

いやしかし、初めての訪問において、マーボードーフを注文する、其のこと自体が、云わば挑戦的行為であると取られてしまった、其のような成り行きであるのかも知れない、次回はもっと大人しく、穏やかな注文を、ワレワレは先ず心掛けるべきなのだろう、此のような苦難を課せられてさえ、再度、此の扉をくぐることを厭わない、其れに値する旨さを、此の店の料理は基本的に内包している、其れは充分に感じ取ることは出来たのだから。

中華 こまめや中華料理 / 伊丹駅(阪急)新伊丹駅
昼総合点★★★★ 4.0