カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

あらた

2011年01月02日 | 京都
「あらたな、年の瀬。」

何事も、人に合わせて行動するというのは、何かにつけて難儀なもので、昨年の暮れ、例年の如く、学生時代の仲間が催す忘年会に参加すること、それは、個人的スケジュールに照らし合わせると、到底無理なこと、しかしそれでも、例年の如く、無理を承知で我々夫婦に声をかけてくれる友人に、どのようにすれば、その心遣い、その心意気に見合った感謝の意を表すことが出来るのであろうか、その答えがその日、多少の機転で、運命的に、コロリと転がり込んできた。

明日の予定もハッキリ立たない、ましてや人と会う予定など見当も付かぬまま、そのような状況の年末において、それでもこの時期、少々雪の積もる事が恒例であるこの地において、車のタイヤを冬用に履き替えない、そういうわけにもいかず、その日、唐突に空いた時間を利用して、京都市内まで、タイヤ交換、さらに、無謀なれども組み込み可能と思える別の所用を済ませるために、昼間、何とか出掛ける段取りを、無理やりに取り付けた。

多少なりとも遠出をする場合、まさか、仕事絡みの諸々、それだけで大人しく帰路に着くというのが、何だか損をしているような、そんな気になるというのは、偏に個人的な感覚、所謂、貧乏性の類なのであろうか。
これを期に、今年最後、会える人とは会っておきたいという、一方的なこちらの都合を、先ずは相手に問うてみる、それは、問うまでもなく迷惑な事なのか、もしかすると、忙しくとも歓迎される事なのか、それは問うてみないとわからない、そう思う、それ自体が、自分勝手であると言われるのであろうその事を、我ながら否定するものではない。

メールの一括送信にて、とりあえず問うてみた数名、その内、奇特にもOKが出たのが、京都市内在住の一名、そして、意外なことに、駄目で元々、そのようなつもりであった大阪在住の夫婦が、何と、わざわざ京都市内まで出向いて来てくれると、そのように言うではないか。

夕方5時頃に立ち上げたこの計画、所用の済む時刻が、およそ8時過ぎ、そこまでの用事が、ちょっと自分でも信じられないくらいに、無事とんとんと完了し、一路、阪急西京極駅へと、奇特にも気前良く、わざわざ大阪から夜の京都に訪れるという彼らを迎えに行く。
さて、予約もなしに、この年の瀬に、どの程度まともなお店に受け入れてもらう事が出来るのか、心配するというより、博打を打つような心持ちで向かったのが、予てから、心の片隅にあった、お好み焼きあらたであった。

日頃、夫婦ふたりだけで、お好み焼きを食べに行くという選択、機会が、あまりない事、そして、大阪から出向いてくれた彼の好みが、普段から、特に鉄板焼きであることを知っていた事も手伝って、無理を承知で訪れた人気店、あらた、案の定、店内に入るまでもなく、その熱気溢れるお店の風情、あわよくばと、引き戸を開けるが、当然のこと満席である。
威勢の良い若い店員さんに、5名、何とかならないかと、とりあえず尋ねてみたところ、ちょうど席が空きそうであるとの事、本日の所用も含め、予定とも言えない予定、時間割の進行は、順調な事、この上ない。

場所は京都駅の裏、八条口、南側に最近出来た、誰がどう見ても無用としか思えないであろう、馬鹿げた規模の、巨大ショッピング・モール、その、すぐ傍である。
元来、地域柄、開けた場所ではない路地の中、迷う事を覚悟で訪れてみると、後から出来たそのモールに近いせいで、お店の風情からすると、その組み合わせに多少の違和感を覚えるが、意外な程にわかり易くなったこの立地、そのお陰で、今後さらなる人気店となるであろう事、必至である。

店の外で待つ間にも、非常に対応良く、段取り良く、店内の準備を待つ、それも楽しいとさえ言い得る雰囲気を作る接客は、特筆に価すると言ってもよい。

店内、総忘年会という雰囲気に乗ってというわけでもないが、急遽こちらの都合によって催される事になった、即席忘年会。
既に出来上がっている雰囲気はと言うと、それがまた、このお店の料理というのが、否が応にも酒の進む、そんな類なのである。
お好み焼きといえども、大雑把な作りではなく、どこか繊細な、丁寧に手の込んだ作り。
店員さんが、広島風と称するお好み焼きは、ちょっと独特で、薄い生地の上に炒めたキャベツとスジ、そして麺、タップリのタレに、さらに刻んだ生の葱をタップリ載せて、マヨネーズの幾何学模様、これが、濃いだけと言うのでもない、外見上で予想する以上に一種独特の、きつい、しかし複雑な風味を持っていて、流石お店の看板商品、特筆物である。
鉄板焼きは、野菜炒めのような状態のものが、濃い味付けで供されるのであるが、それもどこか繊細で、細かいスジを、きっちり味付けしてある、これまさに酒の肴と言っていい状態である。
鉄板焼き好きの彼は、本日が仕事納めであったらしく、ご機嫌よろしく、テンション高く、最後、ラスト・オーダーの時点で、既に皆、充分に飲み食い完了している雰囲気にもかかわらず、さらに追加オーダーする。
そう、せっかく大阪から来てくれたのだから、大いに味わい、楽しんでくれれば良い、それは、勿論の事である。
最終的に、支払いは、2,800円/一人、その程度で、たらふく飲み食いして、驚きのお会計である。

だが、本日最後、そして、今年最後の落とし穴、それが、無いわけはない、世の中というものは、いつでも、何でも、そうなのだ。
程好く酔いのまわった彼は、最終電車の時刻を見誤り、怒った彼の奥方をなだめる唯一の方法、それは、何事もなかったかのように、彼らを無事、車で大阪まで送り届ける、それしかない。
いや、もう、これでこそ、本日の過度に順調に行き過ぎた諸々の所用に、ある面、納得もいこうかというもの、これでこそ、予定調和、そう言えるのではなかろうか。
そう思うしかない、我々夫婦主催の、悲喜こもごも、ご都合主義、お約束的オチ付きの、忘れられないであろう、忘年会であった。


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