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平岩弓枝著 御宿かわせみ15 「恋文心中」

2020年02月24日 09時10分22秒 | 読書記

図書館から借りていた 平岩弓枝著、長編人情時代小説「御宿かわせみシリーズ」第15弾目の作品、「恋文心中」(文春文庫)を 読み終えた。
本書には 表題の「恋文心中」の他、「雪女郎」、「浅草天文台の怪」、「わかれ橋」、「祝言」、「お富士さんの蛇」、「八朔の雪」、「浮世小路の女」の 連作短編8篇が収録されている。

平岩弓枝著 御宿かわせみ15 「恋文心中」

江戸時代末期、アメリカ、イギリス、ロシア等の船が続々と日本近海にやってきて、開港を迫られる徳川幕府がその対応で右往左往する時代背景の中、本篇では、これまで吟味方与力神林家の冷飯食い(次男坊)で 自由気ままだった東吾にも 大きな変化が起こる。

「雪女郎」
大雪の夜、深川材木問屋甲州屋太郎左衛門の番頭忠兵衛が雪女郎を見たという噂が広まる。一方、東吾は兄神林通之進から「徳川幕府危急存亡の折故 緊急のお召し(出仕命令)が有るやも知れぬ・・」と告げられる。忠兵衛が殺され、畝源三郎、東吾等が 捜査に乗り出すが、雪女郎を装った殺し事件の背景には 岡場所の女の悲しさが浮かび上がってくる。

「浅草天文台の怪」
両国回向院の御開帳で 見世物の兜が人気を呼んでいるが 境内に鎧兜の武者の幽霊が出るという噂。早速 源三郎、東吾、長助が 探索開始するが、開帳師伊之助に詰め寄る若侍に気づく。将軍家から拝領した兜を質入れした井上丈太郎で、質流れした兜の行方を追っている。井上丈太郎は 幕府の天文方、浅草天文台で天文、気象の観測、暦の研究をする役人、下手すれば切腹もの?、幽霊の正体、実は?、謎解きの末、「御用だ!」、すさまじきものは横恋慕。

「恋文心中」
東吾「講武所教授方」の辞令が下った。旗本や御家人の子弟に武芸全般の稽古をするため、幕府が新たに神田駿河台に設置した練習所だ。練兵館の斎藤弥五郎から、弟子上位の筆頭であるとして東吾が推挙された。兄通之進は 東吾を見習いとして共に町奉行所に出仕し しかる後 与力職、家督を東吾に譲り、隠居するつもりでいたが 「幕府危急存亡の折、若隠居はまかりならぬ、兄弟そろってお上に奉公するべし」との達しで そのシナリオは崩れ、東吾は これまで神林家の次男坊の冷飯食いだったが いきなり知行(扶持米が出る)身分となる。東吾は さらに 勝安房守の目に止まり、築地の「軍艦操練所」に行くことを命じられ、奇数日は講武所、偶数日は軍艦操練所へ出勤することになる。兄通之進「今まで 好き勝手をしてきた罰じゃ。神林家の家名を辱しめぬようしかと奉公せよ」、弟が晴れて推挙され、陽の当たる場所に出たことに 満足そうである。
東吾は 軍艦操練所で昵懇になった坪内文二郎という青年から相談を持ち掛けられるが なんとも軟弱な男と 追い詰められた大名の後室お勝の方の悲しい結末が・・・。 

「わかれ橋」
5月28日は両国の川開き、花火見物で大川の両岸は大変な人出になる。「かわせみ」に るいを知っているという大和屋の一人娘喜久が訪ねてきて 夫の新助に殺されそうだと相談される。るいは 八丁堀にいた頃のことを思い出そうとするのだが・・・?。
ちゃんと話せば分かる夫婦のコミュニケーション不足だったのか?、夫婦の危機は回避出来た。

「祝言(しゅうげん)」
6月末、神林東吾るい内輪の祝言が行われる。御宿かわせみシリーズ、物語の始まりからずっと続いていた二人の微妙な関係が やっと落ち着くことになる。大川端の「かわせみ」から 長助の先導、駕籠脇には るいの親代わり畝源三郎、お千絵夫婦、花嫁の行列が 八丁堀の神林家に到着する。出迎えるのは麻生家の宗太郎、七重夫婦。東吾は 紋付裃姿、金屏風の前で るいの花嫁姿に見とれてしまう。通之進「花婿が そうにたにたするな」、兄嫁香苗がうつむいて笑う。立会人は 方月館の松浦方斎、練習兵館の斎藤弥九郎。「今夜はみんなよく泣いたな」
東吾は この年の春、講武所教授方と軍艦操練所方に任命されてしまったため 奉行所与力職を継ぐことも、神林家家督相続も出来ない状態となってしまった。兄通之進は隠居所を手配し組屋敷から去るつもりでいたが隠居が出来ず、東吾は 「かわせみ」の離れを改造し、所帯をもつことになったのだ。
翌朝、るい、嘉助、お吉は 「かわせみ」の宿泊客から、昔大火で焼け出された霊巌島の畳表問屋播磨屋次郎兵衛の娘おはつの行方について問われる。50歳になろうかという姫路藩酒井家上屋敷の侍、本田藤七郎だったが 20年以上昔別れ別れになった女おはつは・・・、東吾、源三郎、長助等が探索の末、・・・・。

「お富士さんの蛇」
るいのことを「もう お嬢さんはないだろう。御新造さんと呼べよ」と 東吾は張り切っているが 「かわせみ」の老番頭の嘉助も女中頭のお吉も 長年の習慣で つい「うちのお嬢さん・・・じゃなかった御新造さま・・」と 言い換えする日々が続いている。
駒込の富士浅間神社詣でがらみの殺しが有り、長助の知り合いの蕎麦屋六兵衛、その妹おたまが疑われているいう。小間物屋吉野屋の娘お初、大和屋の娘おたか、御家人久保栄次郎・・、下手人は?、憎しみ、恨みが殺人に・・・。

「八朔の雪(はっさくのゆき)」
8月1日は 八朔の日、天正18年8月1日徳川家康が江戸入りした記念日で、大名が白装束で総登城する日になっている。吉原でも紋日(休日)となり 遊女は白づくめの扮装をする習わしになっていてそれを見物に訪れる遊びもあった。新婚早々の東吾が 軍艦操練所の同僚に誘われて しぶしぶ吉原見物に行く羽目になったのだが・・、
そこで東吾が親身になって身の上話を聞いてやったお染が殺された。源三郎から告げられ 頭を殴られたような衝撃を受ける東吾。源三郎「おるいさんに気づかれないようにして下さい」

「浮世小路の女」
神田亀井町の細川越中守のお抱え医者高橋良典が 浄瑠璃講釈菊花亭秋月からゆすられていると町役人に訴え出た。妹分おていが高橋良典にもてあそばれたという秋月の言い分であるが 大名お抱え医師としがない女芸人では 処罰される側は決まっているようなもの。東吾の兄吟味方与力神林通之進は 定廻り同心源三郎に真相究明を指図、東吾も協力することになる。
菊花亭秋月は 東吾の子供時代を知っているという、るいと同年代の女。るいに良く似ている。「もう東吾様のお嫁になってあげません」・・・その女の子は 「お秋だったんだ」
一座と上方へ去って行った菊花亭秋月・・・東吾がるいと夫婦になっていることを知った秋月(お秋)の女心を 東吾はなんとなくは分かるのだった。

(つづく)

 

 


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