goo blog サービス終了のお知らせ 

ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBA世界ミドル級TM ウィリアム・ジョッピーvs保住直孝

2002年10月10日 | 国内試合(世界タイトル)
保住はよく頑張った。現時点での持てる力を、全てとまでは言わないが
存分に発揮した。スピードの差に翻弄されながらも、時折接近戦に持ち込んで
ボディを叩き、思惑通り「一発当たれば・・・」という展開を期待させた。
決して後ろに退かず、TKOで敗れたものの最後まで倒れなかった。
完敗ではあるが、保住自身が責められるような内容ではなかったと思う。

結局「ミドル級の壁」はあまりにも高かったということを思い知らされた。
ジョッピーは確かに現在のトップボクサーだが、ミドル級史上、決して
超一流の選手とまでは呼べない。しかしそのジョッピーに完敗したのだ。
ただ、それは戦う前から分かっていたことだ。むしろ保住は、予想以上の
健闘をしたとさえ言える。

というわけで試合は残念な結果に終わったが、それ以上に残念だったことが
ある。それはこの試合を放送したテレビ朝日の目に余るレベルの低さだ。

そもそも試合前から、おかしな演出が目立った。保住を紹介する特別番組を
作ってくれたのは有難いが、「KOマシーン保住」だの、「やられたら
やり返す」だの、どうも宣伝文句がプロレス風なのだ。

あるいは他の番組でジョッピーを「ミドル級史上最強王者」と紹介したり、
保住とは縁もゆかりもないはずの竹原慎二氏を引き合いに出し、「竹原の
敵討ち」と言ってみたり。確かに竹原氏は日本人唯一のミドル級世界王者
であり、ジョッピーに敗れて王座を失ったのも事実だ。しかし保住と竹原は
別に同じジムだったわけでもないし、仲が良かったわけでもない。

まあそこまでは、世界戦を盛り上げるための演出と思えばそれほど目くじらを
立てるべきでもないだろう、と思っていた。しかし、問題は試合の後だ。

ゲストにプロレスラーが来ていた。それは別にいいのだが、試合後、勝者
ジョッピーになぜか花束が渡され、それを渡したのもプロレスラーだった。
この時点で何かおかしいな、と思ったのだが、案の定リング上のレスラーと
解説席のレスラー(近々この両者は対戦するらしい)が険悪なムードとなり、
何と解説席の方が、リングの男に向かってボトルに入った水をぶちまけたのだ。

要するに両者の対戦の前景気をあおるための宣伝行為なのだが、テレビ朝日
側の、あまりに低い知性と非常識に呆れ驚いた。これはボクシングの、公式な
世界選手権なのである。大げさに言えば、世界中のボクシングファンが注目
しているのだ。それを、あまりに利己的な宣伝の場へと貶めてしまった。
これまた大げさに言えば、日本は全世界に恥をさらしたということになる。

確かにテレビ局にとって視聴率は大事なものだろう。しかし、目先の利益に
とらわれるのにも程がある。この演出をよしとした人間は、すでに頭が
おかしくなっているとしか思えない。即刻退社し、旅にでも出て正常な感覚を
取り戻すべきだ。

ボクシングには多くの団体や階級があり、ファンでない限り完璧に覚えるのは
かなり難しいだろう。しかもテレビで放送される試合数も少ないわけで、よく
マニアがやり玉に上げるアナウンサーの言い間違いやレベルの低さも、それを
思えば責めるのは可哀相な面もある。

しかし、こうまで程度の低いボクシング中継は初めてだ。さすがに今回
ばかりはひど過ぎる。これなら、放送しない方がマシだったのではないか
とさえ思える。プロレスファンだって恥ずかしい思いをしたのではないか。