ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本&東洋太平洋Sフェザー級TM 小堀佑介vs村上潤二

2007年05月19日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
字数の関係で書けなかったが、これは正確には「日本スーパー・
フェザー級タイトルマッチ」であると同時に、「東洋太平洋
スーパー・フェザー級王座決定戦」でもある、という試合。
小堀が勝てば、日本王座4度目の防衛とともに東洋王座も獲得。
村上は、勝てば一気に2本のベルトが手に入るわけだ。


そして結果の方は、小堀が4度のダウンを奪い7ラウンドTKO勝ち
しかし、攻防とも雑で、必ずしも快心の出来というわけではなかった。
もともと小堀はガードも低く、攻撃にもラフな面があるが、この日は
村上の巧さもあって、いつも以上に雑さが目立つ試合となった。

初回は、サウスポーの村上のアウトボクシングが冴えた。巧みな
フットワークで小堀を空転させ、シャープな右ジャブをヒットさせる。
しかし続く第2ラウンド、プレッシャーを強めた小堀が素晴らしい
タイミングの右フックでダウンを奪う。そしてすぐに2度目のダウン。
村上はかなり効いている。

もはや勝負あったかと思われたが、KOを意識した小堀の追撃が
雑になったことにも助けられ、ここから村上が踏ん張る。3ラウンド、
再び足を使ってダメージ回復に努めるとともに、ジャブ、右ストレートを
いくつか小堀の顔面に当てた。

同じような展開の第4ラウンドを過ぎ、5ラウンド。小堀がまたしても
ダウンを奪った。左ボディからの右フック。それほど強いパンチでは
なかったが、立ち上がった村上の足元がおぼつかない。フットワークで
上手くごまかしてきたが、ここまでのダメージが尾を引いているのだろう。

6ラウンド。村上の足のスピードが鈍り、小堀に簡単に懐に食い込まれて
しまう。そして7ラウンド。前のラウンド辺りから、足を止めて強い
パンチを打ち込む場面が増えてきた村上。足が鈍ったために開き直ったのか、
あるいはポイント上での劣勢を挽回しようとしたのか。いずれにせよ、
この距離に入ったことは命取りだった。

小堀の右、左、右のフック連打で、村上が頭をロープに打ち付ける痛烈な
ダウン。ここで試合を止めても良かったと思うが、立ち上がった村上を見て、
レフェリーは続行の判断。しかし後は、ただ小堀の連打にさらされるだけの
凄惨な時間となった。ほどなくレフェリーストップ。小堀が、7ラウンド
TKO勝ちで日本王座を防衛するとともに、東洋王座も手に入れた。


終わってみればやはり小堀は強かった、ということになったわけだが、
村上のアウトボクシングに手を焼いた場面もあった。ただ、最初に「雑」と
書いたが、多少の被弾も厭わずに前へ出たからこそ生まれたKO劇でも
あったわけで、小堀にすれば、この雑さは計算の上だったのだろう。

しかし、小堀は上を狙っていくべき選手だ。もし、この日の相手に
もっとバンチ力があったら危なかったかもしれない。出来れば今後は、
攻防ともに正確さを向上していってもらいたいが、それによって
小堀の持ち味である奔放さが失われてしまっては元も子もない。
豪快さと繊細さ、その辺りの兼ね合いは難しいところだ。

小堀のもう一つの美点に、「アジャスト能力」があると言われている。
試合をしながら相手に適応し、徐々にペースを握っていく能力だ。
確かにこの日も、村上のテクニックに苦しみつつも、終わってみれば
最後は完全に小堀のペースになっていた。


一戦ごとに評価、人気も高まりつつある小堀。世界に挑むにはまだまだ
ボクシングが粗い気もするが、逆に、その「粗さ」を持ったままで
どこまで通用するのか見てみたい、という思いもある。WBA王者の
エドウィン・バレロ(先日、小堀のジムの先輩である本望信人をTKOに
下して2度目の防衛に成功したばかり)となら、勝敗はともかく、
噛み合って面白い試合になるのではないだろうか。