ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

日本Sバンタム級TM 福原力也vs酒井俊光

2006年02月11日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
前回、世界ランカーでもあった無敗の木村章司を破って王座を奪った
福原が、やや苦しみながらも8回TKOで初防衛に成功した。

福原を初めて見たが、ずいぶん動きの硬い選手だ。筋骨隆々とした
体つきが目を引くが、その筋肉がむしろ動きを硬くしているように
感じた。パンチは力まかせで、空振りも少なくなかった。
しかし確かにパンチ力はありそうだ(17勝13KO)。

対する酒井はひたすら前へ出るファイター・タイプ。しかし前に出るだけで、
いかんせんこれはというヒットがない。パンチ力にも欠けるようだ。
序盤は相手のやみくもな突進に距離を潰され空回りしていた福原だが、
足を使うなどして少しづつ距離を掴んできたようだ。酒井の入り際に、
いかにも硬そうなアッパーなどをヒット。3ラウンド辺りから、流れは
はっきりと王者に傾いた。

ハードパンチャーというと防御に甘さのある選手が多いが、福原は比較的
ディフェンスもいいようだ。早々に距離感を掴むキャリア、ディフェンス力、
そしてパンチ力。あらゆる面で福原が上であることが分かってきた。

パンチも回を追うごとにヒット率を増し、こうなると「いつ倒すか」が
焦点となってくるが、酒井は異常なまでに打たれ強かった。何度も
ぐらつきながら、ダウンすることは拒否。しかし反撃の手も減り、
かといってガードも緩いため福原に打たれっぱなしで、危険な雰囲気も
漂い始める。ただ、福原の方も序盤からよく動き、よく打っているせいか
かなり疲れが出て来て、なかなかフィニッシュに持っていけない。

そして8ラウンド。リング中央で放った右アッパー、左フックで酒井の
動きが止まり、それを見た福原が一気にスパート。疲れた体にムチを打ち、
「ここで倒し切る」という強い意志を前面に出した気迫の連打だ。
酒井も手を出すが、それはもうガードががら空きになるというマイナスの
効果しか生み出さなかった。カウンター気味にチャンピオンのパンチを
貰い続け、20秒ほど連打にさらされ、ようやくレフェリーが試合を止めた。

ちょっとストップが遅いのではとも感じたが、酒井も手を出しており、
止めるタイミングは難しかったのだろう。酒井の打たれ強さと、ピンチの
時にも手を出す気の強さが、かえって危険な状態を作ってしまった。
担架で運ばれた酒井に不安がよぎったが、大事には至らなかったようだ。
KO劇の興奮より、酒井のダメージへの心配の方が先立った試合だった。


なお、この試合のセミファイナルでは、世界ランカーのプロスパー松浦が
何と日本ランカーの河野公平にKO負けするという波乱があった。
松浦は全く調子が出ず、終始河野の突進を止め切れない展開での惨敗だった。
不調を差し引いても、松浦は線が細すぎると感じた。いい素質を持っては
いるのだが、ファイター型の選手には必ず力負けし、押し込まれてしまう。
このまま引退の可能性もあるが、もし再起するのなら、もう少し頑丈な
体作りが求められるだろう。