ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

6・28ダブル世界戦展望

2004年06月23日 | その他
悲しいことに、最近は世界戦が決まるとまず「名古屋で放送あるのかな・・・」と
いうことが気になってしまう。今回は「幸運にも」テレビ放送があるようだ。

いよいよ今月28日のダブル世界戦が迫ってきた。WBC世界ミニマム級、そして
WBC世界スーパー・フライ級タイトルマッチが横浜で同時開催される。


ミニマム級王者イーグル共和はタイ人であるが、日本人と結婚し日本で暮らし、
日本のジムに所属するチャンピオンだ。今年1月、非常に評価の高かった
ホセ・アントニオ・アギーレを圧倒的大差の判定で下し、プロ12戦目にして
頂点に上り詰めたハイレベルなボクサーで、今回が初防衛戦となる。

その相手は、小熊坂諭。日本タイトルを3度防衛し、そのまま世界タイトルに
初アタックすることになった。パンチ力と変幻自在な攻撃が売りの俊英である。
しかしボクシングがまだ雑なところがあり、予想では完成度の高いイーグルの
優位を唱える声がほとんどだ。

真面目で練習熱心と評判のチャンピオンだけに、気が緩んで体調を崩すことも
考えにくい。また、実は熱くなりやすい性格だというイーグルだが、試合で
その欠点が現れたことはない。技術や精神力など、総合力ではやはりチャンピオンが
一枚も二枚も上のような気がする。挑戦者が上回っている点があるとすれば、
パンチ力ぐらいだろうか。しかしそれが当たるのかどうか。

正直言って、僕の興味は「イーグルが見れること」、この一点に尽きる。
偉そうに色々書いておきながら、僕は両者のボクシングを一度も見たことが
ないのだ。だから噂のイーグルがどんな選手なのか、それが見てみたい。
というわけでここで小熊坂の勝機を探るつもりもないが、挑戦者の危険な
パンチが最後まで緊張感を呼び、イーグルの技巧が一層冴えて見えるならそれほど
喜ばしい展開はないと思うので、その意味では小熊坂の健闘を期待したい。


アレクサンデル・ムニョスと小島英次の連戦に続いて、またしても金沢ジムの
「意味の分からない再戦」がやってきた。WBC世界スーパー・フライ級戦、
徳山昌守と川嶋勝重の戦いだ。

両者の初対決は昨年6月、徳山の7度目の防衛戦だった。川嶋は最初から最後まで
前に出続けたが、内容は王者の完勝だったように感じた。確かにポイントの上では
それほど差はなかったし、徳山が川嶋の突進力に戸惑ったり、いくつかパンチを
もらうようなシーンもあった。しかし川嶋の攻撃はあまりに単調すぎ、特に後半は
チャンピオンの冷静な危機回避能力の高さが目立つばかりだった。だからこそ、
この再戦を行う理由がよく分からないのだ。

しかしだからと言って、今回も川嶋にはまるで勝ち目がないとは言い切れない。
川嶋は前回の敗戦の理由として、腰を痛めていたことを挙げている。そのために
練習が不足し、後半にバテてしまったのだという。もし体調が万全なら、序盤に
見せたような怒涛の責めを12ラウンドに渡って展開できるかもしれない。
そうすれば、そのプレッシャーがいずれ徳山を押し潰すという場面が訪れるかも
しれない。ただ、前回のような単調な責めでは、試合巧者である徳山に読まれて
しまうだろう。問題はスタミナ以前に、川嶋がこの一年でどこまで攻撃の幅を
広げられたかにかかってくるのではないだろうか。

また、今回が9度目の防衛戦となる徳山に、体力や気力の面で衰えはないかどうか。
そういった要素が交錯すれば、勝敗はどう転ぶか分からない。最初にこの再戦には
興味がないようなことを書いたが、やはりスリリングな部分は確実にある。
とは言え、徳山のコンディションが取り立てて悪くなければ、無難に王座を
守りきるのではないだろうか。


というわけでこのダブル世界戦は、両王者とも判定で防衛成功と予想する。