ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBA世界ミニマム級TM 星野敬太郎vsノエル・アランブレット

2002年07月29日 | 国内試合(世界タイトル)
星野敬太郎が、またしても微妙な判定で王座を失い、引退を表明した。
あのチャナ・ポー・パオイン戦と全く同じ状況だ。

見方によっては星野の勝ち、あるいはドローでもおかしくなかった
かもしれない。少なくとも、6ポイント差で負けはないだろう。
そう憤った人も多かったはずだ。しかし、各ラウンドごとに必ず優劣を
つけなければならないラウンドマスト制が採用されている現在の
採点基準では、挑戦者の元王者ノエル・アランブレットの手数が、
「あえて採点するなら」多くのラウンドで印象点を稼いでいても
不思議はない。勝敗はどうあれ、一つ確かなのは、星野は前回の
ガンボア小泉との再戦のような、スカッとしたファイトを見せられ
なかったということだ。

あの試合があまりに素晴らしかったために、我々はますます星野に
「鉄壁のテクニシャン」というイメージを持ってしまった。
しかし、好戦的なスタイルのガンボアは相性的に非常に星野と
噛み合う選手であり、アランブレットやチャナのような星野と同タイプの
選手、つまりテクニシャンと対すると、お互いがお互いの持ち味を
殺し合っての凡戦に終始してしまう。それも無理からぬことだ。
テクニシャン同士の対戦なら、そのテクニックで相手を上回らなければ
ならない。残念ながら星野にはそれが出来なかった。

しかし世界レベルのテクニシャンを相手にほぼ互角の勝負をしたのだから、
やはり星野が日本屈指のテクニシャンであることは間違いない。
一度は世界を諦めた選手が、ニ度も世界王座に到達することが出来た。
充分すぎるほどの実績と言っていいだろう。しかし、やはり引退は惜しい。
派手なパンチが交錯する肉弾戦ではなく、駆け引きや防御など技術で戦う
ことの面白さを、もっともっと我々に知らしめてほしかった。