ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫) | |
クリエーター情報なし | |
宝島社 |
「ファンダ・メンダ・マウス」大間九郎
ちょっと未来の横浜で、防衛システムヴォルグ2000と共に倉庫管理人を務めるマウス。いつもぐだぐだとだらしのない生活を送る彼のもとに、ひとりの少女・まことが現れた。かつてマウスが姉のことで一方ならぬ世話になった男・佐治道太郎の娘と名乗る彼女によると、道太郎は他界し、彼女は現在トラブルに巻き込まれている。そうと聞いては黙ってられない。ネズミにそっくりな男・マウスの戦いが始まった。
おお、まさかのハードボイルド。
まことがいきなり求婚してきたり、マウスを溺愛する姉の愛し方が激しすぎて死にそうだったり、高校時代からの親友の満ちゃんが男のくせにマウスに迫ってきたり、あげくはヴォルグ2000がマシンのくせに……となんだか全方位全種類ラブ包囲網を敷かれたりしつつも、きっかりハードボイルドしてるのがすごいと思った。ヴォルグ2000がかわいく見えたのもすごい。まじで。
まことに迫るトラブルのネタ自体はたいしたことないんだけど、でも動機や背景がこの世界観にすごく合っていて良かった。どことなくTRPGの「TOKYON◎VA」を思い出した。関係ないけど。
まあでも一番は、マウスのかっこよさ。ネズミに似ているってくらいだからあんまりハンサムではないんだけど、独特の韻を踏んだ一人称の中で荒れ狂う暴力と、時折見せる鋭い分析力、なんの駆け引きもない純粋な漢気が素晴らしかった。そんなマウスに女性(一部例外)たちが惚れるのはとても納得。昨今のハーレムラノベなんぞぶっとばす、モテへの説得力だった。
作者、これが初めての小説という話だが、それについては驚かなかった。こういう型に嵌らない勢いのある作品は、技術や常識とは乖離したところにあって、それが最高のスパイスになるものだから。
うん、面白かった。最高でした。
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