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世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

2008-12-08 12:15:37 | 小説
The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day
乙一
集英社

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「The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day」乙一

 分厚い装丁の本のページを繰ると、いきなり飛び出す一枚絵がある。杜王町の名所を背景にして、東方仗助、虹村億泰、廣瀬康一、山岸由花子、岸辺露伴の5人に2体のスタンド。いわずと知れた名作、ジョジョの奇妙な冒険の第4部を舞台にしたノベライズの仕掛け人は乙一だ。「GOTH」、「平面いぬ。」などで名を馳せた次世代作家。軽妙かつ儚げな文体が、本作の主人公・蓮見琢馬にしっくりくる。
 蓮見琢馬に両親はいない。孤児院で育った。生まれもって授かったのは脅威の記憶力。彼はなんと、誕生からこれまでの記憶をすべて忘れず持っている。杜王町の人間も残らず覚ていて、必要とあらばインデックス付の辞書のように検索して思い出すことができる……だけにとどまらず、事象一つ一つに関わる感情や痛みをリアルに再現することができる。自分だけではなく、体という枠すら越えて、他人の体にも影響を及ぼすことができた。
 蓮見は、その能力を(スタンドという名だとは知らなかったが)「THE BOOK」と名付けた。能力者にしか見えぬ不可思議な本を駆使し、実際には味わっていないはずの事故の痛みや病気の苦しみを敵に与えることで攻撃する。彼のおぞましい誕生秘話に関わる敵たちを殺すため、彼は人生の全てを賭けた……。

 スタンドの能力設定がうまい。クレイジーダイヤモンドのような圧倒的なパワーを持たない本1冊で、東方仗助や虹村億泰を追い詰める蓮見が熱い。判官びいきだからというわけではない。蓮見がいいキャラすぎるのだ。誰もが納得できる明確な目的を持ち、そのためには自分の命すら顧みず、弱音の一言も吐かない。孤高のリベンジャーの戦う姿が美しくて、思わず手に汗握っていた。最近傑作の出ない乙一だけに、ファンとしては嬉しい1冊。本編の内容を忘れている方が大半だろうから、是非一度再読してからお読みいただきたい。

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