はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

春期限定いちごタルト事件

2009-08-21 12:29:04 | 小説
春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社

このアイテムの詳細を見る


「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信

 小鳩くんと小佐内さんの間には、ある協定がある。それは、目立たず波風を立てない小市民として生きるために、互いを際立たせるような現象が起きた時は盾にし合おうというもの。恋愛感情ではなく依存関係でもない、互恵関係。
 空気でいたい、と切に願う2人の前にはしかし、消えたポシェット、意味不明の二枚絵、おいしいココアの謎、テスト中に割られた瓶などなど興味深い事件が立て続く。謎解き好きな小鳩くんは、協定破りの後ろめたさや小佐内さんの冷たい目線に耐えながら、事件を解決していくのだ……。

 謎を解いたら解いたで、今度はいかに目立たずに解を示すかという思考に忙殺されなきゃならない。そもそもヒロインが褒めてくれない。ここまで控えめなミステリは見たことがない。斬新過ぎる設定がとても良かった。
 主役2人のキャラも良い。実は探偵体質で、知識をひけらかしたい衝動に葛藤する小鳩くん。甘いものに目がないミニマムヒロイン小佐内さんは、いつのまにか後ろに忍び寄っていたり、事あるごとにスイーツをおねだりしたり、と行動がいちいち可愛い反面、執念深くひとつのことで恨みをもち続ける粘着タイプで、心に狼を飼っているし。2人がどうして小市民を目指すに至ったのか、過去もあわせて大変興味深い一冊。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿