治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

講演してもえらくない 三人のおっさんと沖縄の旅

2019-01-21 10:29:31 | 日記



昨晩、沖縄から帰ってきました。
山城健児氏率いる「IMUA」で三人のおっさん+私をいっぺんに呼ぶという大きなリスクをとってくださいました。また、集客も相当がんばってくださったようで、本当にたくさんの方にお越しいただき、お越しいただいた皆さんにも、支えてくださったスタッフの方々にも感謝感謝です。

先にねこ母さんがブログにまとめてくれていますが

一部ねこ母さんの観察を引用させていただきます。

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この講座には、沖縄の地域のお子さんや凸凹があってしんどい方々に治ってほしい!という主催者さんの並々ならぬ思いを感じました。そうでなければ、こんな豪華なセッティングはありません。
社会で必要とされることをリスクを承知でする方の姿に、同じく講座を主催するものとして頭が下がる思いでいっぱいでした。

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そうなのですよ。
まず主催者の郷土愛に基づく呼びたいという気持ちがあって、勇気があって、土台作りがあって、我々講師はそれに乗っかって当日仕事をするだけ。本を出してもえらくないと私は常々言ってきましたが、講演活動もえらくないのです。頑張っているのは主催者だし、当日誰よりも奉仕されるべきは私たち講師ではなくお金を払ってききにきた人たちです。

とくに発達障害の場合には、ききにくる人たちはしばしば切実な事情を抱えています。
今回のように、自傷・他害・パニックがテーマになっていたり、司法が絡んだテーマではなおのこと。
発達障害の分野で講演活動をするには、そのききにくる人たちの切実さをよく承知しておく必要があります。

その切実さを一番感じているおっさんは廣木さんです。
当たり前です。
お父さんでヘルパーなんですから。
そして「自分も他人も傷つけない」護道まで編み出したのですから。
廣木さんは1時間半の持ち時間をフルに活用してよくぞここまで、というほど密度の濃い講座をしました。皆さんも機会があれば廣木さんの講座はぜひ聴いた方がいいです。
護道のすべてがわかるわけではもちろんわかりませんが、1時間半では普通ありえないほどの情報量です。

そして栗本さんの講座も感慨深いほど上手でした。
っていうのは最初の頃のドベタな時も私たちはよく知っているから感慨深かったのです。
場数を踏むというのはすごいことだなと思いました。
やはり1時間半にすごい情報量が入っていました。

榎本さんと私の持ち時間は二人で1時間半だったのですが、私はもう何度も沖縄に行っています。
だから榎本さんにたくさん時間を渡そうと思いました。
だから最初20分だけもらい、なぜ今回おっさんABCの本を出そうと思ったかをさくさくしゃべりました。
それは事件まで遡らなくてはなりません。
ああいう事件が起きたとき解決策を持っている人たちが支援者だと私が誤解をしていたこと。
そうはならなかったこと。
だから司法に頼らざるを得なかったこと。
「ありのままを認めましょう」「問題行動は無視」というアリバイ療育がしばしば一般社会には生きていけない子を育てているということ。
福祉は無意識のうちに「一般社会」ではなく「特別支援社会」での適応を目指してしまっているから、それは福祉の現場で働く人たちの人権軽視にもつながっていること。
あとで会場で参加者の方に「ためになりました」と呼び止められ「うちの法人内でも再考すべき点を見つけた」とお声がけいただいたので、多くの方にメッセージが伝わっているといいな、と思います。
利用者男性が支援者女性にセクハラするとする。それを我慢せよという社会福祉法人があったとする。糾弾されません。特別支援社会においては我慢するのが当たり前になっている。
でも一般企業で顧客の男性が自分とこの女性社員にするセクハラを我慢せよと上が言ったら立派なブラック企業ですから。

廣木さんが発達障害への思い入れを持つのは当然として、栗本さんも私も、いつの間にか相当深く思い入れをするようになったなあと思いました。
それは治るものを治ると知らされず苦しみ続けてきた人の立ち直りをたくさんみたことも関係しているように思います。もっと社会参加する人を増やしたい、増やせる、という手応えを感じていて、でもまだリーチしていない人の多さもわかっていて、だからこそ思い入れが深くなっていると思います。

2000円払って1時間半の講演を聴きに来る人にとって、一分は22.2222・・・円。
そこで無駄な話、発達障害以外の話を5分してしまえば参加者の110円をムダにします。
補助金等関係なく、主催者が当初リスクをとって有料で行う講演会はそういう風に考えるのがビジネスパーソンです。
今回は榎本さんと私の講演が2000円でした。その後の実技も参加する人たちは7000円でした。おっさんABはそれぞれ2500円。大満足の内容だったと思います。
でも榎本さんと私の2000円については、反省点が多いです。おそらく、あとの三人が感じていたような「発達障害はききに来る人にとって実に切実な問題だ」という問題意識を榎本さんはさほど強く感じていなかったと思います。だから自己啓発みたいな、自分語りみたいな時間帯が多かったです。場所によってはこれが受けるのかもしれないし人によってはこれが受けるのかもしれません。でも切実さを抱えた人にどれくらい有益だったかはわかりません。これは私が会の性質を伝えきれていなかったなと反省です。横浜で講演してもらったときも、練馬の主催での講演を山城さんや栗本さんと一緒にききにいったときも、発達障害の話をきちんとしてくれたので安心していたところもあります。
今後榎本さんがどれくらい発達障害の世界で仕事をするかはわかりませんが、この世界で仕事をする人全員が知っておかなくてはならないのが「この問題は切実である」ということです。
それは榎本さんに話しておきました。90分2000円だとすると一分は22.2222・・・円だという構造から話しました。だからこそ、一分たりとも無駄な話はしてはいけない。公務員はなかなかしない発想、民間人だからこそする発想かもしれないと思いましたので。榎本さんにも話したし、ここにも書くのは「仕事というのはそういうものだ」とわかってほしいからです。そして、本を出しても講演してもえらくないのだと改めて言っておきました。沖縄の人たちは親切でもてなしてくれますから、カンチガイしないようにこちらが気をつけなくてはならないのです。

私は黙って榎本さんの話を聴いているつもりでしたが、途中から介入しました。参加者の方達の一分22円を無駄にしたくなかったからです。これが私の「鬼手仏心」です。

思えば栗本さんが講演上手になったのも、さんざんダメ出ししたからもしれません。問題行動は無視してはいけないのです。そしていじられキャラの栗本さんですから、ダメ出ししたのは私だけではないですね。花風社講座はカジュアルですから、つまらない方向に話が流れると、参加者の人たちからきちんとその場でブーイングが出ていましたね。そういう講座で栗本さんは育っておんもでも活躍できるようになったのです。あのときブーイングしてくれた皆さん、栗本さんはリッパに育ちましたよ。とほめるとまたしくじるのであまりほめすぎない方がいいかもしれませんが。


今回はそろい踏みでしたが、もちろんおっさんたちは「ばら売り」も可です。とにかく護道は広めないと。そして沖縄で広めるにはやはりIMUAの力が必要です。
私は関東で護道を広めたいとずっと思っていて、10月に本を出してから誰か広めてくれるんだろうな~と思っていました。今度24日に栗本さんと私が講演させていただく練馬の法人「たまみずき」さんも元々廣木さんの講座をやっていらっしゃるし。関東の護道は出版後榎本さん主導でやるのかな、と思っていたので手を出しませんでした。でも榎本さんの協力を借りつつも花風社も主導的にやった方がいいかもしれない、と今思っています。それには栗本さんの協力も必要です。とにかく護道介助法は広めなくてはなりません。最終的には使わないために。

三日目は観光でした。途中栗本さんが城跡で聖なる石を踏んでしまったので「それ踏むとお嫁さん来ないんだよ」と教えてあげました。それと、すごいスコールが降ってきました。天が怒ったのかもしれませんが、その日前々から申し込んでいた自転車の160キロレースに参加していた山城さんはきっとスコールを浴びたでしょうから、たんに山城さんの普段の行いが悪かったのかもしれません。

山城さんの代わりに私たちを案内して最後は空港まで送り届けてくれた若者から夜メッセージがきました。治せる人になりたいと書いてありました。よいですね。治すのは医者じゃないです。一緒に遊ぶ人です。そしてIMUAは一緒に遊ぶのが上手な放デイですから、スタッフが治す人になるのは不可能ではないですね。

そういうスタッフが日本中に増えるように活動していかなくてはなりません。
治せる人を増やすのも「ギョーカイを潰す」です。

これからも頑張りましょう。

沖縄の皆様
三人のおっさんたち
ありがとうございました。