治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

誤訳ではなく嘘八百

2019-01-25 09:02:14 | 日記


一部誤解があるようですが、私はDSM-5が意図的に誤訳されているという主張はしていません。
米国にもコンサイス版があります。それの邦訳が出て、DSMが本棚に入っているというときはこれを持っていることが多いです。機械的に診断をつけるときには項目だけに絞り込んでおいた本がある方が便利だということでしょう。
そしてこの邦訳には予後の項がありません。から訳出されていません。
でかい方には予後が書いてある項目があります。
知的障害や自閉症や学習障害に関しては予後が書いてあります。
意外かもしれませんが私の印象では楽観的な順番で
知的障害、自閉症、学習障害です。

それを全部読むのがめんどくさい先生たちがいるのか、あるいは杉山大先生が書いてあるとおり若い医師たちが使いこなせないという親心からか(おせっかいですよね。そんなの原書読ませればいいのに)虎の巻的なものが出版されています。
「神経発達のすべて」という本では、最初にえらい先生たちの対談があり、杉山先生の概説があり、そのあとでそれぞれの項目について分担で先生たちがまとめを作っています。
最後にDSMとは関係のない強度行動障害という日本的な項目について井上大先生がともかく人材育成というしょうもないことを書いて末席を汚しています。
ABAは人材育成に熱心、っていうより余っちゃっているんでしょうね人材が。だからとにかく養成講座やりたがる。それしかムダに増やした学徒諸君を食わせる道がないのでしょう。
だから40時間とかなんとか言うんだと思っています。そんなもんに巻き込まれることないですよ。あっちの雇用対策なんだから。

まあともかく、予後について知りたいから英文も読みたいという人も中にはいます。辞書引きながらだとどうにかなるのではないかと。どうにもなりません。文法知らないで辞書引けばわかるほど語学は生やさしいもんではありません。
昨日goole先生に頼った人もいて、ある程度訳出はできたそうです。私はgoogle先生の訳を見ていないので評価は差し控えますが日本で紹介されているより予後がよさそうなことだけはわかったようです。

皆さんが原書講読したいのならそういう講座も設けますよ。ただしスパルタだと思います。自分がそうやって習ったからそれ以外やり方がわかりません。
文系で文芸方面の経験者が言葉尻や言葉のニュアンスにこだわってどう読むかを知ったらびっくりするかもしれません。

ま、ともかく、杉山監修本の「神経発達障害のすべて」()という本で、若いらしき大阪大学の先生が知的障害の予後についてこうまとめています。


予後
 知的障害と診断された児のほとんどで、知的障害をそのものを改善させることは困難である。しかし適切な環境下においては適応機能などが向上する可能性が十分にある。また早期に発見され適切な療育が施された場合には児の長期的予後は改善するとされている。

P42 神経発達障害のすべて 大阪大学若い衆訳

そして知的障害の予後について、原書の同項目半分くらいをもってきました。
これで半分です。
この前には
・兆候が現れる年齢
・ある種の知的障害に外見的な特徴があること(ダウン症等)
・だいたいの知的障害は進行性ではないが中には進行性のものもあること

などが書かれています。
そして予後はこうです。

After early childhood, the disorder is generally lifelong, although severity may change over time. The course may be influenced by underlying medical or genetic conditions and co-occuring conditions(e.g.,hearing or visual impairment, epilepsy). Early and ongoing interventions may improve adaptive functioning throughout childhood and adulthood. In some cases, these result in significant improvement of intellectual functioning, such that the diagnosis is no longer appropriate. Thus, it is common practice when assessing infants and young children to delay diagnosis of intellectual disability until after an appropriate intervention is provided. For older children and adults, the extent of support provided may allow for full participation in all activities in daily living and improved adaptive function. Diagnostic assessments must determine whether improved adaptive skills are the result of a stable, generalized new skill acquisition (in which case the diagnosis of intelectual disability is no longer appropriate) or whether the improvement is contingent on the presence of supports and ongoing interventions(in which case the diagnosis of intellectual disablity may still be appropriate).

これを大阪大学の若い先生は上記のようにまとめ
おそろしいことにだいたいの医者たちはえらい先生が監修した日本語の本しか読んでいないと思われ、それを患児の親に告げるということ。

そもそもこのinterventionを「療育」と訳すのは意図的なギョーカイ拡張運動ですし。
interventionはinterventionであり療育ではありません。
こよりさんちだったら笹舟を作って親子で遊んだのがinterventionです。
親子で遊ぶことはinterventionですが療育ではありません。

そして小さい子には知的障害の診断を遅らせると書いてあります。
大阪大学の先生は「早期診断早期療育」とまとめられていますが、これは真っ赤な嘘。DSMは「まず介入してから診断」なのです。
たしかにそっちの方がよさそうだと思いませんか?
まず診断、という日本の現行のシステムが医療の肥大化を招いているともいえます。
そして忙しい忙しいって、自分で自分の首を絞めてますね日本の先生たちは。

visual impairmentを伴っていて知的障害も治ってしまった例は私のごく近くにも2例あります。
こよりさんちといぬこさんち。
こよりさんちのご次男はまだ知的障害の範疇にいらっしゃるかもしれませんが「一生文字は書けない」と言った医者の予測を大幅に裏切り高い倍率を勝ち抜いて高等特別支援に学び障害者枠でお仕事して色々な手続き用紙を自分で書いています。
お母さんにお小遣いもくれて幼い頃の弱視も治っています。
いぬこさんちのお嬢さんは発達遅滞と弱視があって分厚いめがねをかけていましたが今は目も治り自分で志望校をお受験し合格しました。
どっちも神経の発達なんだからinterventionで両方治るのは当たり前。
私でさえ身近に2例知っているけど大阪大学では見たことなかったのでしょうか。

ともかくこうやって治る人をみたこともない医者たちが意図的な解釈で虎の巻を作り
凡医たちはそれしか読まない。
凡医の間を嘘八百がかけめぐる。
それが日本の「治せない発達障害医療」の実態です。
それだけ不勉強なくせに重々しく患児の親に告げるのです。「一生治りません」「受容しなさい」と。

そんなばからしい医療を当てにするのは、もうやめませんか?
というか
医療の呪縛に縛られるのは、やめませんか?
発達障害は治ります。
でも治すのは医者じゃないんですよ。
白い巨塔で上の顔色を見て言葉を選ぶような医師に発達障害は治せるわけがないと思います。