治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

夏休みの宿題

2015-08-13 05:19:45 | 日記


さて、先日栗本さんと仲良し同士()でお茶しました。
栗本さんはその日、神奈川県内の就労支援施設二か所でコンディショニング。就労支援施設で指導するうちに、就業できていない人たちの身体を見ていて、主体性が育っていないことに気づいたんだそうです。
そして主体性を育てないと面接にも受からないので、最近はそういうコンディショニングをしているそうで、私の主体性に関する記事を見て偶然だけどやはり私も主体性の大事さにたどりついたんだなあと思ったそうです。

ここで書いたような違和感も、まあわりと身体面から説明してくれたかな、栗本さん。
興味深かったですよ。

それと、いつまでも当事者を当事者扱いするのがギョーカイ人だと今回もわかったわけですが

ニキさんともちゅん平とも最近になって会った栗本さんにとって、二人はとても健康で普通の人なんですよ。ニキさんの身体だってすごくまともだと栗本さんは言います。
昔と全然違うし。

でもギョーカイは違う。
発達が見えていない。
見えてないだけならいいんだけど

なんでアラフィフのおしゃれなマダムとなったニキさんを見ようともせず大昔のニキさんばかり語るのか。
栗本さんなんかから見ると、
むしろ過去が信じられないんです。瀧澤さんや私が語るのを聞いていて「へえそんな大変だったのか」と不思議に思うんですって。

これはね、南雲さんからもわりと聞いた話。ギョーカイ人は、「この人はこういう障害があってここが弱い」と決めると、ご本人がいくら変わっていようとそれを見ずに弱かった過去のことばかり覚えている。過去の話ばかりさせたがる。

発達してきたご本人からするとね、それが超違和感なんですね。
ちゅん平だってそうですよ。
12000円自力で払ってやってきたお勉強会でいきなり当事者扱いされるとびっくりしちゃうのはそれですよ。

まあ、きっと医療サイドは私たち実社会と違ってそこまで治った人の扱いになれていないんでしょうね。
でも実社会に生きる私たちは慣れなきゃね。
治った人たちとのつきあいにね。
だってこれからどんどん増えるんだから、治る人が。

栗本さんは専門家が生きづらさにばかり関心を持つその現象を「特性に興味があって人に興味がないんだろう」と説明してくれて、なるほどと思いました。
私はやはり、ニキさんやちゅん平がどんどん生きやすさを獲得していったのがうれしいよね。仕事仲間だから。それを喜んで本にしてきたんだな。

そういう読み方をしてくださる読者の方もいる。
最近の大人買い組。






そうなんですよ。
一連の流れで、成長が見られるようになっているんですよ。花風社のラインナップはね。
その読み方を専門家はしないね。神田橋先生も言ってた。専門家は粗さがしばかりする。むしろ保護者の方が「成長物語」という読み方をする。
九月になったら、ひとつそういう常識を打破することにちょっとでも寄与するキャンペーンをしようかなと計画中です。

さて。
そして私は栗本さんに
「なぜ『変光星』のあとがき押し売りが嫌だったのか」かなり明瞭に話ができました。
これは栗本さんにこそしとかなきゃいけない話だった。

私は最初、黄色本を出す前から栗本さんに私の方針を話していたからです。
「本は読者のために出すものである。著者のために出すものではない」とね。
そしてうちが出した「変光星」のあとがき押し売りは、この私が主体的に版元として保持している大原則におおいに反するものだったのです。

飲食店に例えるとわかりやすいかも。
本の著者は飲食店では食べ物やサービスを提供するお店側ですね。それに対して読者はお金を出して、著者の体験を取り込み血肉にする。
飲食店だろうが本だろうが基本的にそれが商いというものです。

そして私たち出版人にとっては
焼き鳥屋さんが焼き鳥を焼くように、お団子屋さんがお団子を作るように
本づくりは日々の営みなわけです。地道な営みね。

ところがそこに幻想を付け加える人がいる。
出版するのがえらいこと、みたいに。

それを持つなよ、という話を私は黄色本出す前にさんざん栗本さんにしました。
あくまで本は読者のために出すものなのだと。

ところがね、「変光星」で辻井杉山内山のだんご三兄弟のように、本においてはサービス提供者である森口奈緒美さんをひたすら絶賛しその彼女を苦しめてきた一般社会を糾弾するようなあとがきを載せると

お客としての読者の立場からは、相当変なのです。
なんというか、レストランに行っておいしい食事を食べたら、おなかいっぱいになって余韻を楽しみたいそのあとでシェフをたたえるうまくない芸人が三人出てきて店の自画自賛のミニ劇場に有料でつき合わされた感じ。
読者不在なんです。

あの本は森口さんのために出したんじゃない。
森口さんのつらい体験を、豊かな内面世界を伝えるために出したもの。
その世界を伝えてくれるから、その対価は私が立て替えて森口さんに払う。そして読者の皆様から料金を頂戴する。それが産業としての出版。
そこに森口さんをたたえる言説はいらないんです。しかも三つも。
内輪褒めを同じ本の中でやるのは、私の感覚では相当変です。

世の中につまらない解説をつけた本があふれているところを見ると(とくに発達障害の分野では)
私の考え方はレアなのかもしれない。
でも花風社は私の会社なんですよ。
33歳でリスクをとって作った会社なんです。
自分が主体的に仕事をするためにね。

愛甲さんが言う通り、

=====

主体性を奪われる哀しみは人類の歴史そのものです。民主主義の時代を生きるようになった我々は、今、ようやく、主体性を奪われることに対して怒りの声をあげられるようになりました。障害者の歴史は弱者の歴史です。花風社や神田橋先生の偉業は、「障害があってもなくても、人は本来尊ばれるべき存在であり、ひとりとして100%ダメな人間はいない」といったことに加えて、資質を開花させる方向で修業を続けていくことこそが、その人の主体性を取り戻す最短の道であることを指し示してくれていることだろうと考えます。

=====

だとしたら、私は主体性を確保するために日々リスクをとっているものなのです。
だからその私にあとがきを押し売りすることは、無礼なんです。

そして私に無礼な真似をすると、著者たちに伝わるんです。
著者たちがそれをどう受け取っているかは知りません。
でも私に「だけ」無礼な真似をして、著者萌えしている姿は
「きもい」んです。
そんなの無理なんですよ。実社会でつながってるんだから。

栗本さんはわりとこの説明に納得してくれました。

そして医療の世界が、本質的に主体性を奪う原罪を抱えていること、おそらくそこで仕事をしている人たちは他人の主体性を奪うことに鈍感になっていること、それを乗り越えてきたのが神田橋先生であること、なんて話をしました。

あと私は若い世代のお医者さんたちに期待です。
やはりね、人権意識がちょっとは違うと思うから。


なんにせよ発達障害の世界は変わっていくだろう。

そこでチーム花風社が果たさなければいけない役割を説明しました。
これはまたそのうち書きますね。
これがたぶん、対談レポの最終回になります。

そんな話をしてお開き。あとになって、そういえばどうせ栗本さんは杉山先生の本も読んでないだろうなと思いつき
読んどいたほうがいいよ、とツイートしました。いくら私が悪口言おうと、杉山先生の本は読んでおいたほうがいい。発達障害をやっていくのならね。

「読みにくい日本語でもみんなが我慢して読む」のはそれだけの価値があるから。
ただ私はそういう本を出したくないだけです。

でもその前に大地の本を読めよ。
チーム花風社なんだから。
ただではあげないよ。印税相殺。芋本が増刷するのは時間の問題だからね。
いかがわしい無名のおっさんがデビュー作二冊連続増刷かかって
いい加減卑屈を返上するときがきたかもしれないね。

でもいい結果を呼んだのはね
「本は読者のために出す」って徹底して本を作ったからだと思うよ。
最初から言ったからね。
「栗本さんのために出すんじゃない。自閉っ子をラクにするために出すんだ」
「栗本さんと私が出会ったのはとても幸運なことだったけど、それは栗本さんがえらいんでもなければ私がえらいんでもない。自閉の神様が取り計らってくださったんだ」

って。

大地の本を押し売りしていたら

そうしたらちゅん平が「私の本も読んで」と。

そりゃそうだ。
発達障害者は発達する。
そのエビデンスなんだから、ちゅん平は。
神田橋先生だってそう言ってるじゃないか。
読まないと。
これから私たちは、たくさん「発達する発達障害者」を世の中に送り出すための仕事をしなきゃいけないんだから。

こうやって私は自社著者に自社本をツイッターで押し売りして満足。

栗本さんの夏休みの宿題です。

私もそろそろ海と山に行くので
早起きでお仕事です。

と思って起きたら、猿烏賊山で南雲氏炎上中。




ひやあ、すごい差別発言。
こういう認識しか持てない親に育てられる子がかわいそうだ。

実はね、この猿烏賊さん、南雲氏の講演会行って感激して本を買って「南雲すわああああん」になっていたのですよ。
前から卑屈な人だと認識していたので、この人に好かれる南雲さんはやっぱり花風社にふさわしくないかなと思っていたのは過去の話。今はお会いして、南雲氏は相当暑苦しい(ほめてます)人だとわかっているから喜んで本を出した。でも一応、ツイッターで誰に話しかけられているかくらいは過去にさかのぼってチェックしましたので、気が付いたんですけどね。


それに今回、炎上遅かったね。

以前は出版前から騒いでたのに。

今芋本と南雲さんの本がデッドヒートを繰り広げていますよ。
どっちが早く増刷するかな?
ともかくどっちも好調です。

騒げ騒げ猿烏賊。
君たちが騒ぐほど、修行系が興味をもってくれる!
君たちがけなさないような著者はね
私は興味持てないのよ。