ホンマに夢洲でやるべきだったんか?

 大阪・関西万博の会場内で蚊に似た羽虫のユスリカが大量発生し、「気持ち悪い」「不快」との声が上がっている。万博協会は雨水をためる設備や水たまりが発生しやすい植栽などに薬剤を散布し、ユスリカの繁殖を抑える対策を取り始めた。また、大阪府の吉村知事は今月21日の会見で、殺虫剤などを製造する「アース製薬」(東京)に駆除の協力を要請したことを明らかにした。

 ただ、ユスリカは突然どこかから飛んできたわけじゃない。夢洲では以前から確認されていた。大阪自然環境保全協会は「環境影響評価準備書に関する公述意見書」(2021年12月11日公聴会)で、夢洲の生物多様性に言及。「今の夢洲は虫の王国です。多くのバッタ、多くのトンボ、多くのチョウ、そして恐ろしいほどの数のユスリカがいます」と指摘していた。

■捕食者がいなくなったからか

 1977年に埋め立てが始まった夢洲は、万博の会場建設が始まるまで湿地や草地、砂れき地などの環境があり、希少種を含む多様な野生動植物の生息が確認されていた。ユスリカも魚や鳥のエサになるなど生態系を支えていたが、会場建設でこうした自然のバランスが崩れることが懸念されていたのだ。同協会の夏原由博会長が言う。

「生物多様性を保つよう意見書なども提出したが、主催者側はそこまで理解を示してくれているようには見えませんでした。結局、開発で緑地が減るなどして生物が減少し、私も会場に行ったのですが、かつてのような多くの鳥や虫はいなかった。ユスリカも鳥などの捕食者がいなくなり、大量発生のような異常が生じているのではないでしょうか」

 会場の中心にあり、1500本の樹木が植えられている「静けさの森」周辺でも、ユスリカが確認されている。ここについて万博協会は「生態系と共存し未来を共創する」と誇らしげだが、舌先三寸もいいところだ。

「生態系が損なわれ、殺虫剤がまかれるような事態になったのは非常に残念です。ユスリカによる健康被害もあるので放置はできませんが、せめて生態系に影響が及ばないような形で対応してほしい。万博は『いのち輝く』とうたいますが、頭にあるのは人の命だけではないのか。豊かな生活のためには自然が不可欠ですし、閉幕後は夢洲の自然回復に努めてほしいです」(夏原由博会長)

 人工島とはいえ、自然が残る場所に人間が乗り込み、今度は殺虫剤をばらまく。動物たちがすみかを追われる様子はさながら、ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」のようだ。

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