15日に放送されたNHK番組「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜」の放送内容に対し、ネット上で疑問の声が上がっている。

15日は、理化学研究所と富士通が共同で開発し、世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」を扱った。複数の技術者らの物語を取り上げて「2012年の運用開始以降『京』は1万人以上の研究者に活用された」「日本の科学と産業の発展を支え続けた」などと結んだ。

 しかし番組終了後、X(旧ツイッター)に投稿された内容が波紋を広げている。「京の開発責任者で、その後富士通と道を違えた父が一切出ず、直属の上司や部下で、今も富士通との関わりが深い人たちのみが登場する内容には、家族としては非常に複雑な気持ちである。集合写真で真ん中でガッツポーズ決めてたのに」「兄の『あ』の字も『い』の字も出てこず」などと、関係者の家族が次々と疑問を呈した。

 これらの投稿に「本当の開発責任者は井上愛一郎氏のはず」「NHKの偏向は報道だけでなくドキュメンタリーにまで?」「井上愛一郎氏を出さない(隠した??)大人の事情」「この人に取材すれば色んな話が出てきてドラマが見れるんじゃないの?」「やらせでシリーズが終わったことから何も学ばないんだな…史実を捻じ曲げるとバレるんだよね…」「番組スタッフにも地上の星は見えてないわけね」との声がネット上で相次ぐ事態となっている。

 富士通の公式サイトには12年4月、井上さんが「スーパーコンピュータ技術の開発育成」で文科省の「科学技術賞」を受賞したとプレスリリースに記載。「受賞者は入社当初からスカラ型のCPU開発に携わり、世界一を獲得したスーパーコンピュータ『京』の心臓部であるCPUにも使われている、数々の重要技術を開発しました」と記されていた。

 一方で「週刊エコノミストOnline」は20年2月に「元『京』開発責任者」として井上さんのインタビュー記事を掲載。冒頭で「スーパーコンピューター『京』世界一を主導した天才肌のエンジニア。だが目標達成が見えてきたその時、部下100人を奪われ富士通で居場所を失った」と紹介されている。

 「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」は00年から放送が始まり、中島みゆきの主題歌「地上の星」「ヘッドライト・テールライト」とともに人気を集めたドキュメンタリー番組。しかし、番組内で事実を歪曲した内容が発覚したことなどで、05年で打ち切りに。今年4月から「新」シリーズの放送が始まった。