【大阪からの企業流出が止まらない】関西大学・宮本勝浩名誉教授が分析する関西財界の地力の低下「阪神連覇の経済効果に期待するだけではダメ」

マネーポストWEB6/17(月)7:15

【大阪からの企業流出が止まらない】関西大学・宮本勝浩名誉教授が分析する関西財界の地力の低下「阪神連覇の経済効果に期待するだけではダメ」

阪神タイガース優勝の経済効果」の算出で知られる宮本勝浩・関西大学名誉教授(写真/共同通信社)

 

 55年ぶりの万博開催まで1年を切った大阪。インバウンドの活況がある一方、“維新旋風”には陰りが見え、衰退が加速しているとするデータもある。大阪の企業や産業に深刻な課題が出てきているというのだ。阪神タイガース優勝などの経済効果の算出で知られる宮本勝浩・関西大学名誉教授が言う。

「企業が大阪から東京に本社を移す動きが止まりません。関係者に話を聞くと、やはり“東京はビジネスチャンスが多い”という理由が大きいようです。他社との情報交換もしやすいといいます」

 帝国データバンクの調査によれば、昨年、大阪府へ転入した企業は155社ある一方、転出した企業は196社。1982年以降、42年連続の転出超過だ(「大阪府・本社移転企業調査2023年」より)。大阪のイメージが強い住友財閥系の企業でさえ、合併などで本社機能を東京に移す例が目立つ。武田薬品工業のように登記上の本社は大阪のままだが、東京に「グローバル本社」を置く例もある。

「人材も東京へ出ていきます。大阪でもベンチャー育成の学会などを作って取り組んでいますが、ようやく育ってきた頃にみんな東京に行ってしまう。そんな悪循環です」

阪神連覇の経済効果に期待するだけではダメ

 1970年の大阪万博と比べて、今回は準備の遅れなどの問題が目立つことも、関西財界の地力の低下との関係が指摘されている。

「関西経済を引っ張る大企業がいなくなったのは間違いない。以前はパナソニック、シャープ、三洋電機など、家電メーカーは関西から世界に発信した。1970年の万博ではサンヨー館の人間洗濯機が話題になりましたが、そうしたリーディング産業がなくなってしまった。このままでは関西財界には電気、ガス、鉄道といったインフラ企業しか残らないと冗談半分で心配する関係者もいます」

 モノづくりの力が衰え、それに代わる産業も出てきていないのが問題だ。

「大阪が元気になるには、世界を引っ張るような新たなリーディング産業が必要。可能性があるのは医療関係でしょう。関西には山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所)がいて、大阪大も心臓医学で知られている。“この病気は大阪なら命が助かる”ということになれば、中国やインドの富裕層もやってきます。阪神タイガース連覇の経済効果に期待するだけでは、ダメだと思いますよ」

※週刊ポスト2024年6月21日企業