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岡山市「バス路線」再編案で公共交通の新時代へ! 「公設民営」とは何か? 市民の移動自由を拡大する戦略に迫る

2024年06月08日 05時50分57秒 | まち歩き
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岡山市「バス路線」再編案で公共交通の新時代へ! 「公設民営」とは何か? 市民の移動自由を拡大する戦略に迫る
Merkmal 2024年06月06日 05時41分

岡山市「バス路線」再編案で公共交通の新時代へ! 「公設民営」とは何か? 市民の移動自由を拡大する戦略に迫る
路線再編の方針と具体案
 岡山市で検討されているバス路線再編計画で、一部のバス路線で車両購入費やバス停整備費などを市が負担する「公設民営」方式の導入が検討されている。

 この方針を決めたのは、2月6日に開催されたバス会社や有識者が参加する岡山市公共交通網形成協議会だ。協議会では「岡山市地域公共交通利便増進実施計画」の第1弾として、次のような案がまとめられた。

・バス網を都心/幹線/支線にわける
・幹線では路線の重複を整理する
・支線部分のコミュニティーバス的に運用する
・鉄道との結節を改善する
・支線では小型車両を導入する
・支線の車両本体やICカードの設備などの費用全額と運行費用の最大65%を市が負担する(この部分が「公設民営」)

 計画案によれば、都心・幹線・支線は、次のように分類されている。

・都心:都心内の路線。15分に1本の運行を目標。大量輸送と速達性を確保する
・幹線:都心と拠点間の路線。15分に1本の運行を目標。大量輸送と速達性を確保する
・支線:地域生活圏と身近な拠点の路線。1時間に1本程度を運行。車両を小型化。幹線との接続を考慮する

 ここでもっとも重要なのは、支線の路線再編案だ。計画案では、支線の再編案を次のように説明している。

「1便あたりの平均利用者数が10名未満となるなど、需要が比較的小さい区間や時間帯の便については、「支線」に分割した上で、車両を小型化(ワゴンタイプ等)し、運行経費を抑制するとともに、普通2種免許での運行を可能とすることで、運転手不足の解消に対応します。また、大型車両では運行が困難であったエリアも含め、地域の生活関連施設等への路線延伸など、利便性の向上を図ります」

 具体的にはどういうことなのか。案のなかで示された岡山市北区の津高台団地周辺の路線を例に説明してみよう。

1便あたり平均利用者数(路線バス・路面電車)(画像:岡山市)
再編の背景と検討過程
 現在、このエリアには団地の南側に位置する津高営業所を通る次の4路線がある。

・路線1:津高営業所〜中央病院〜岡山駅・天満屋(岡電)
・路線2:国立病院〜岡山駅・天満屋(岡電・中鉄)
・路線3:免許センター・辛香口〜岡山駅・天満屋(岡電・中鉄)
・路線4:本村〜岡山駅・天満屋(岡電・中鉄)

うち、団地内まで運行するのは路線4のみである。この路線は津高営業所以降岡山駅・天満屋間の利用が多く、収支率は100%を超えている。しかし、団地内での利用は、オフピークには平均一便あたり9人未満と少ない。

 一方で、団地から周辺施設へのアクセスはよくない。商業施設や国立病院は、いずれも団地の北側に位置している。そのため、現在、バスでこれらの施設にアクセスする場合には、距離が近いにも拘わらず乗り継ぎが必要になる。

そこで、利便性向上のために示された再編案は次のとおりだ。

・四つの路線のうち一部をオフピークには地域内を運行する支線と、市街地に向かう幹線に分割する
・幹線のうち津高営業所以降の重複区間の便数を集約する
・支線は国立病院まで延伸し、団地から商業施設や国立病院へのアクセスを向上させ、オフピークの利用を促進する
・支線は需要を考慮し小型化し普通2種免許で対応を可能とする
・津高営業所を乗り継ぎ拠点として整備、ダイヤ設定を実施する

このように、再編案では需要にマッチした車両を用いるとともに、生活路線としての利便性を向上させ利用増が図られている。

 計画案では、このほかにも、これまで乗り入れていなかったJR駅への延伸・乗り入れを実施し鉄道との接続の利便性の向上、地域内の施設へのアクセスを目的とした環状路線の設置などが提案されている。また、一部の支線は増便を実施することで利便性を高めることも計画されている。

両備グループのウェブサイト(画像:両備グループ)
岡山の最大の特徴
 現在、全国のバス会社が減収や運転手の人手不足を理由に、減便や路線縮小を余儀なくされている。そうしたなかで、この計画案は極めて積極的に延伸や増便を行い、利便性を向上する“攻め”の姿勢をとっている。これこそが、この再編案を注目すべき理由だ。

 さらにこの計画が画期的なのは、大胆な計画にも拘わらず岡山市内で運行する各バス会社の理解を得るところまでこぎつけたことだ。これまで、岡山市と周辺地域の路線バスには、次のような特徴があった。

・市内に乗り入れするバス会社が9社
・同一路線で競合が存在
・路線は岡山駅に向かって放射状ルートで、郊外駅同士をつなぐ路線がない
・市南部などの人口増が続く地域の路線が希薄

とりわけ、多くのバス会社が競合し、

「同一路線で争う」

のは岡山の路線バスの最大の特徴である。そして、この競合は、これまでも問題となってきた。2018年には、八晃運輸がJR岡山駅と西大寺地区を結ぶ新しい路線の開設を計画。これに対して、両備グループが過度な競争を生むと激しく抗議した。

 この路線は両備バスの“ドル箱”路線であり、その収益によって赤字路線の運行も確保されていたためだ。そこで、両備グループでは、対抗策として、赤字路線の大幅廃止を打ち出し、組合は無改札ストライキ(料金をもらわない)を実施。国内だけでなくフランスでもニュースにもなった。

 各社の激しい競合はバスターミナルの運用にも現れている。市内中心部の百貨店・天満屋にある天満屋バスターミナルには複数のバス会社が乗り入れているが、唯一、宇野バスだけは、乗り入れをせず、近隣にある自社の表町バスセンターを拠点として運行を行っている。この状況は、岡山市の路線バス特有の問題であり、おそらく、ほかの地域からみれば極めて奇妙なことだろう。

公共の交通ラクダのウェブサイト(画像:公共の交通ラクダ)
企業の戦略転換
 激しい競合のなかで、各社は自社の利益を優先し、利用者の利便性を犠牲にしてきた。

 このため2018年の西大寺路線での問題を契機に、岡山市では協議会を立ち上げ各社に路線の再編を呼びかけた。しかし、各社の意見は容易にまとまらなかった。協議会自体も一時は停滞。2023年6月に再開されるまで2年4か月も中断する事態にもなっていた。

 そうしたバス会社が、利害を超えて意見の一致をみた点で、今回の計画案は極めて画期的なのである。地方公共交通に関するシンクタンク・NPO法人公共の交通ラクダ(RACDA)の会長である岡将男氏は、その理由をこう語る。

「やはり新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きかったと思います。各社とも大幅な減収が続き、今までどおりに競争することは無理になりました。それで、ようやく話し合いをする機運が生まれたのです」

 とりわけ大きな変化は、八晃運輸が火種となっていた西大寺線からの撤退を決めたことだ。同社が撤退を決断した理由は、再編案でバス網を都心・幹線・支線にわける案が示されたことだ。同社は、西大寺線から撤退する一方で支線の運行の受け皿になる見込みだ。

 再編の実施で、公共交通の利用者が増加することへの期待は大きい。全輸送機関の輸送人数に占める各輸送機関の輸送人数の割合は「輸送分担率」と呼称される。2023年に岡山県が行った調査では岡山市内の電車バス分担率は多い順に

・北区:12.3%
・中区:8.7%
・東区:8.2%
・南区:4.5%

となっている。特に南区は主要な公共交通機関がバスであるにも拘わらず数値が低い。これは、バスが利用のニーズに合致していないことを示している。前述の岡氏は政令指定都市として

「電車バスの分担率を全域で20%ほどにすべきだ」

だと語る。再編案によって、その目標にどれだけ近づけるか、注目が高まる。

岡山駅周辺の風景(画像:写真AC)
市内のバス・電車連携強化
 しかし、岡氏は20%に達するためには「バスの再編案だけでは不十分」であるという。その実現のためには、バスと連携するJR各線と路面電車の再編も必要だからだ。

 現在、岡山市内を走る路面電車・岡山電気軌道では利便性を強化するために、岡山駅前の停留所を駅側に約100m延伸し、横断歩道などを通らずに直接乗り換えができるための工事が進んでいる。これは、再編計画のほんの一部分だ。岡氏は、バス路線再編案と同じ文脈で

・路面電車の市内環状路線化
・吉備線 次世代型路面電車(LRT)化
・赤穂線LRT的運用

の実現も検討されるべきだという。こうした計画を実現した上で、RACDAが提唱する、目指すべき交通環境は次のようなものだ。

・全市民が最寄りの停留所から300m徒歩5分
・市内のどこからでも移動は1時間以内
・市内のどこでも移動は500円以内
・ピーク時以外はすべての乗客が座れる
・始発〜終バスまで最低でも30分間隔

そのために、当面の目標を岡氏は次のように語る。

「熊本市では“車1割削減・渋滞半減・公共交通2倍”を目標として公共交通の整備を行っています。岡山市でも同様の目標を立てて事業化を進める必要があるでしょう」

なにより、こうした施策は公共交通を維持するためだけのものではない。その先に見据えているのは、地域の発展だ。

「バスのないところには高校生もお年寄りも住めません。都市交通を充実させれば移住定住を促進させ、商業集積地も拡大し都市は発展するでしょう」

路線バス(画像:写真AC)
再編の本質的意味
 公共交通の再編にあたって大切なのは、利用者の真のニーズに応えることだ。

 今回の再編案は、利便性を高めるために増便と路線整備を行う、まさに利用者目線に立った計画となっている。この取り組みが、市民の移動の自由を確保し、住みやすい街づくりに大きく貢献することは間違いない。

 これまで「公共交通の再編」という言葉は人口減や過疎化の続く地域での

「維持」

を連想させるものだった。しかし、本当の意味での再編は、地域のさらなる発展を目的としたものなのだ。

 岡山市の挑戦は、公共交通を軸とした持続可能なまちづくりのモデルケースとなるだろう。今後、この再編案が市民の日常生活をどのように変えていくのか、そしてそれが地域の発展にどのような好影響を与えるのか、大いに期待が持てる。

 この社会実験の成果をひとつの指針として、他の地域でも同様の取り組みが広がっていくのだろうか。公共交通を中心に据えた、活力に満ちた街づくりの第1歩として、岡山市の動向から目が離せない。

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