鼠喰いのひとりごと

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ローズ・イン・タイドランド

2007-04-13 10:22:59 | 映画(ホラー)

「ローズ・イン・タイドランド」
監督:テリー・ギリアム
出演:ジョデル・フェルランド、ジェフ・ブリッジズ、ジェニファー・テイリー
公式ページ 

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いやぁー、これはーーーー……(汗)
少女の危うい魅力満載、好きなひとには堪らないだろうなぁ、とも思いますがー。
ジョデル演じるジェライザ・ローズの空想の世界の、あまりにも儚い美しさと、
現実の世界の醜さとグロテスクさの対比がなんともオソロシイ作品。
でも、この映画を見て一番最初に私が感じたのは、なんて寂しくて悲しい話だろうということでした。

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主人公はジャンキーの両親のもとで生まれ、暮らしていたジェライザ・ローズ。
不思議の国のアリスが好きな10歳の女の子。
手馴れた様子で父親の打つ麻薬の用意をし、愛していると言いながら、
自分のチョコレートを子供に分けることもない母親の足を、日々マッサージし。
ローズにとっては、それが当たり前の日常。
ある日、母親が麻薬がもとで急死したのをきっかけに、父親はローズを連れて生まれ故郷のテキサスへ向かう。

だが、そこにはすでに祖母はおらず、広い草原の中に荒れ果てた家がぽつんと建っているばかり。

家につくなり、麻薬で「短い休暇」に旅立ってしまった父親を後に、
ローズは唯一の友人たち、首だけになった人形たちとともに探検に出かける。

幽霊のような不思議な隣人デルや、電車を巨大ザメだと思い込んでいる、知能障害を持つディケンズ。
新しい出会いや発見を、父親に報告しようとするも、なかなか「休暇」から戻ってこない…

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愛しているといいながら、一方的で自分勝手な感情をぶつけるばかりのジャンキーの両親。
首だけの4体の人形だけが、話し相手にして友人。
そんなローズは無邪気でコケティッシュで誘惑的で、その行動は、もし近所にこんな子がいたら、
『絶対あそこの子と遊んじゃいけませんよ!!』と言いたくなるような問題児。

彼女が悪いわけではないだろうけど、やはり育った環境ってオソロシイな。
生まれたときから周りに麻薬が当たり前にある状態であれば、
それがマズいものだという感性は育たないでしょう。
もし、ローズに子供の友人がいたとしたら、かえって好意のつもりで
『そうだ、これ、面白いのよ? パパの大事なものだけど特別』
なんて麻薬を友達に薦めてしまうかもしれません。美味しいお菓子を薦めるのと同じ感覚でね。

でも、それで怒られても、ジェライザ・ローズには何がなんだかわからない。悲劇的だな。

どんなに虐待を受けても、大概の子供はそれでも両親を慕うのですってね。
叩かれたり、殴られたりするのも、それは自分が悪いのだと。
両親は間違っているはずがないと。そう考えてしまうものらしいです。
ローズもまた、生まれたときから与えられた環境を疑うなど思いもよらなかったでしょう。

どうしようもなく歪んだ現実の中で、幼い子供が一生懸命に幸せを空想し、
なんとか順応して生きようとした結果が「ジェライザ・ローズ」のような気がします。
ひろがる光景が幻想的であればあるほど、悼ましく感じてしまうのは、私が母親だからでしょうか。

そして、今は、彼女は問題のある家庭の被害者ですが、成長するにつれいつか、
それはそっくりそのまま「彼女の問題・彼女の責任」になってしまうのかもしれない…なんて考える。

ま、湿気た話はこれくらいにして。

そういえば、これ、原作があるらしいですヨ。
ミッチ・カリン著「タイドランド」角川書店。
レビューでチラ見したところ、隣人が父親の死体をあーしたりこーしたりする場面は、
原作のほうがよりスゴいらしいです。どんなんなのかしら。どきどき。

えー、グロ度は…けっこう高めかも。
血みどろというわけではないのですが…見ていて「うへぇ」という気分になること間違いなし。
しかし、あの、ジョデルの演技力は確かに凄いと思いますが、
サイレント・ヒルといい、この映画といい、こういう悲惨な映画のこういう役ばかりを
演じさせるのは、この子先行き大丈夫かなという気も。
ていうか、自分の出た映画見ても怖くないかキミはー ^^;