世界の気候環境
中学・高校で習う「ケッペンの気候区分」
地形と並ぶ、自然地理学の柱が「気候」です。日本では伝統的に「ケッペンの気候区分」が学校で教えられてきました。みなさんも、中学・高校の地理の授業で聞いたと思います。
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ケッペンは1846年にドイツで生まれ、1940年に94歳で亡くなりました。高名な気象学者でした。
(ケッペン)
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気候区分はケッペンの他にもいくつも発表され、1950年代に発表されたアリソフの気候区分は成因(気団)によって気候を区分する「現代的」な気候区分として欧米では流行しました。
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(アリソフ)
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「植物の様子で気候がわかる」というケッペンのアイデアは画期的だった
ケッペンの気候区分は1880年ごろに初歩的な最初の論文が発表され、1920年ごろにほぼ現在の区分が完成しました。ケッペンは、まだわずかであった世界の気象観測データから気候区分を行い、さらにその区分から特徴的な植物の様子に注目しました。当時の気候データの蓄積はまだわずかで、データのない地域がほとんどでしたが、植生を見れば気候がわかるというアイデアは画期的でした。しかも長生きをしたケッペンは、ドイツの大気象学者としての権威もあり、成因を無視しているという批判があっても、「ケッペンの気候区分」は広がり定着していきました。しかし、気候を植生によって区分する方法は、気候を総合的に把握する手法で、環境を総合的に理解することに役立っています。ケッペンは1980年代には再評価されるようになりました。
「気候」は年間の大気のようす、「気象」はその時々の大気のようす(天気)
さて、「気候」と言いますが、気候とはなんでしょう。似た言葉に「気象」という言葉がありますが、どこが違うのでしょう。気候は、1年間に表れる大気の様子のパターンのことで、日本で言えば「春夏秋冬」と言うことになります。気象とはその時々の大気の様子で、天気と言うことです。
気候要素(気温・降水量・風・日照)と
気候因子(緯度・高度・地形・海流)
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気候を構成する気温や降水量、風、日照などは気候要素と言います。
この気候要素の違いを生み出す原因を気候因子といいます。
気候を生み出す基本は緯度で、赤道に近いか極地方に近いかで違いが生じます。低緯度地域は高温で降水量も多く、高緯度地域は低温で降水量が少ない傾向がみられます。北半球なら南が高温で北が低温となります。昔は緯度で熱帯、温帯、寒帯の三区分をしていました。
同じ緯度でも、海流・高度などの影響で気候は異なる
しかし、同じ緯度でも気温や降水量が違います。大陸の西側は緯度の割りに温暖で、東側は暑くなります。ヨーロッパは日本よりずっと北に位置していますが温帯です。海洋との距離も影響します。海洋の影響を受けると穏やかな気候となり、内陸では気温の変化の大きな気候になります。降水量も海に近いところは多く、内陸では少なくなります。この他、垂直方向の変化もあります。標高が100㍍違うと約0・6℃違いますが、湿気が多いと変化は小さく、乾燥した空気はほぼ0・6℃変化します。2000㍍の高原なら約10℃低いということになります。風は地球規模で年中同じ方向に吹く恒常風と、季節によって向きが変わる季節風、局地的に吹く局地風とがあります。風が吹くと寒く感じます。風速1㍍でほぼ1℃低く感じます。強風で体温を奪われると夏でも遭難することが良くあります。よく北海道より、東京の方が寒いと聞くのは風の違いが大きいようです。
温帯では「四季」がある
熱帯雨林では季節の変化がない
極地方は長い冬と短い夏の2つの季節だけ
それぞれの地域の気候は、その土地の農業や産業、人々の暮らしや文化にも大きな影響を与えます。日本は「四季の変化が明瞭で、雨が多く、厳しく豊かな自然」と言えます。日本人は「四季」があることが当たり前のように考えますが、四季があるのは温帯の特徴です。赤道直下の熱帯雨林気候では、一年中、高温多湿な様子が続き、季節の変化はほとんどありません。極地方は長い冬と、短い夏の2つの季節に支配されます。
四季の変化が明瞭な日本でも「旬(しゅん)」がはっきりしなくなった
四季の変化が明瞭な日本では、季節の変化を楽しむ文化や、季節に応じた行事などが見られます。春の花見、秋のもみじを楽しんだり、月見や雪景色を風流と感じ、年越しの行事など「変化」を意識させる行事が続きます。今では「旬」もはっきりせず、いつでもたいていのものが食べられたりします。今盛りのイチゴも本来の旬は5月です。ボクが子どものころには、2月のはじめというと果物はみかんと秋に収穫した紅玉(りんご)ぐらいしかありませんでした。
クーラーが普及したのは30年ほど前
家の中は寒く、外と同じような格好でこたつに入るような暮らしで、今のように部屋全体を暖めるようになったのは50年ほど前、クーラー(今の言葉では「エアコン」)が普及したのは30年ほど前でした。また、夏の暑さもかつてとは比べられないほど上がっています。20年ほど前にエアコンもない7月中旬の教室(佐倉市)の気温を測ると「38℃」を超えるほどでした。県教委との交渉で「教室の気温は38℃超、労働安全衛生法違反だ」とエアコン設置を要求しても「予算がない」と言うばかりでした。熱中症で体調を崩したり、命を落とした生徒や教員もいたと思います。まだ「熱中症」が広く認知されていない時代でした。
(昔より気温が上がっているのも事実です)
「昔はエアコンがなくても大丈夫だったのは今より気温が低かったから」は本当か 日本気象協会に聞いた
「地球温暖化」「気候変動」「気候危機」
ボクが教員になった45年ほど前、「地球温暖化」が言われ始めました。しかし、「浮遊粉塵が増えて太陽光がさえぎられ、寒冷化が進む」という研究者もいました。しかし、その後の観測で地球の平均気温上昇が明らかになり、「地球温暖化」のメカニズムも明らかになりました。その後、国連では地球は単純に温暖化しているのでなく、極端な気象現象(高温や低温、豪雨、旱魃など)が頻繁に起こり、「気候変動」という言葉が使われるようになりました。さらに最近は「気候危機」と言われるようになり、トゥンベリさんなどの若い世代が声を上げています。
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太陽活動の変動と海洋の温暖化⇒かつて生物大絶滅をもたらした
ボクが心配しているのは太陽活動の変動と海洋の温暖化です。どちらもかつて地球生物の大絶滅のもたらした環境変動です。
太陽活動の低下⇒ミニ氷河期?
(太陽活動に異変!「ミニ氷河期」はやってくるのか?)
15年ほど前、太陽活動が急に低下し、地球に届く太陽エネルギーが減ったことがありました。これをきっかけに氷河期に突入するかと心配しましたが、氷河期にはならなかったようです。
海洋の水温上昇⇒海流停止、海流無酸素事変
海洋の水温上昇は深刻で、表面水温だけでなく500㍍ほどの深海まで水温が上昇しています。
<海流が停止>
海洋の水温上昇、特に北極海の温暖化は地球規模の海水の対流に影響を与え、このままでは海流が停止する可能性があります。
<海洋無酸素事変>
かつて、海流が停止した2億1000万年前(PT境界)の古生代末には地球生命の90%以上が絶滅(海洋無酸素事変)しました。
過去に5回の絶滅、今6回目の絶滅をむかえようとしている?
地球史では、巨大火山噴火や小惑星の衝突などで5回の大絶滅が起こっています。
- オルドビス紀末/O-S境界:約4億4,000万年前、生物種の85%前後が絶滅
- デボン紀末/F-F境界:約3億7000万年前、80~85%が絶滅
- ペルム紀末/P-T境界:約2億5,000万年前、90~95%が絶滅
- 三畳紀末/T-J境界:約2億年前、75~70%が絶滅
- 白亜紀末/K-Pg境界:約6,600万年前、約70%が絶滅
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P-T境界とK-Pg境界の大量絶滅は、それぞれ古生代と中生代、中生代と新生代を分けるものとなっています。
逆にいえば「○○代」とか「××紀」という時代区分は大量絶滅が起こって多くの生物がその形を変えたことを意味しています。
隕石の衝突で恐竜絶滅
この中で最新の大量絶滅が約6,600万年前に起きたK-Pg境界のもので、恐竜の絶滅で知られています。
原因として有力視されているのが隕石の衝突で、メキシコ・ユカタン半島の先端で発見されたチクシュルーブ・クレーターがその時の衝突痕と考えられています。
ただ、隕石が衝突して突然70%の生物種が絶滅したわけではなく、その後数十万年かかっているようです。
そのペースは諸説ありますが、一説によると1年あたり10~100種とされています。
現在の種数の減少は、年間数万種
ところが近年、現在の種数の減少はこのペースをはるかに上回っているとする生物学者が増えています。
生物多様性の権威であるふたり、ノーマン・マイヤーズは年4万種、エドワード・オズボーン・ウィルソンは年3万種弱が絶滅しつつあるとしています。
桁外れですね。
ちなみに、現存の生物種で既知のものは約200万種、未知の生物種を含めると推定約900万種と考えられています
そして、6回目の大絶滅か?
ボクたちが6回目の大絶滅を生きているのかも、ということです。(近)